表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
⑨+αのパラレルワールド  作者: 藍夏&しれたこ
第一章 魔法+悪魔のパラレルワールド
4/253

第四話 迫り来る軍団

「出会い頭で、お前は何言うとんねん」


 いきなりの爆弾発言から始まる、久しぶりの人間との会話。


 それにしても、まさかのあの強い人が真琴だったとは……。


 ――納得だわ。


「その面白味のない顔は島しかいないはず。更には、その髪の毛の無駄なサラサラ具合もそうだね」


「お前はさっきから基準がおかしいんだよ」


 相変わらず一癖も二癖もありすぎるのは、真琴クオリティと言ったところか。


 先程も言ったが、真琴は、俺が小学生の頃から仲の良い男女九人のグループ――


 通称ムイトズのメンバーの一人だ。


 本名は『蘭真琴(あららぎまこと)』。


 俺と同じく十五歳で、武闘派な女子だ。


「あ、やっぱりその細い目も……」


「もうそのノリはええわ! それにしても、何で真琴がここに?」


「いや、それはこっちのセリフだわ」


「……た、確かに」


 真琴に思わぬ正論を吐かれて、少し動揺した俺だったが、どうやらここにいる理由が分からないのは、真琴も同じようだ。


「もしかして、道の真ん中で寝てるところから目が覚めた?」


「うん」


「もしかして、紅い空を見てびっくりした?」


「もちろん」


「もしかして、ベットだと思い込んで倒れて、そのまま頭を地面で打ったりした?」


「それは無い」


「で、ですよねぇ……」


 キッパリと切り捨てられて、またもや動揺する俺だった。


 それにしても、ほとんど同じ境遇のようだ。


 ということは、やはり、ムイトズで遊んでいる時に何かがあったのだろう。


 もしかしたら、他の七人も、案外周りに転がっているかもしれない。


「というかここは何処で、なんなの?」


「俺が聞きたいくらいだけど、周りの感じからして、間違いなくどっかの田舎ではある。まあ、紅い空に関してはなんとも言えないけど……」


「使えないなぁ」


「酷いな!?」


 安定の罵倒を浴びせられ、この世の理不尽さを理解し始めた俺であった。


 にしても、この紅い空はとても不気味だが、なぜかどこか懐かしさを感じ取れていた。


 俺が少しの間紅い空を見つめていると、真琴が「あ、そだ」と、突如呟いた。


「どうした?」


 俺が真琴に視線を移して、何気なく話しかける。


「島はさ、我らがここで目を覚ます前のことって、何か覚えてる?」


「それって、さっき俺が質問した内容と同じじゃね?」


 先程、『それにしても、何で真琴がここに?』と聞いた時に、一瞬にして返されてしまい、それで質問が終わってしまったのだが、今の真琴の質問の内容は、ほとんど一緒だと思う。


 そう思い、俺は質問に質問で返す。


 というか、相変わらず独特すぎる一人称だな。


 自分のことを『我』と呼んでいる女子なんて、そうそういないはずだ。


「いや、何でかは分からないんだけど、頭にモヤがかかってるみたいにさ、直前の記憶が思い出せないんだよね……」


「え、それ完全に俺も一緒だわ」


「やっぱり! 良かった、我だけじゃなくて。コレで道連れにできる」


「安心……じゃねえよ。何しれっとヤバいこと言っとんねん」


 真琴との合流から、明らかに騒がしくなった。


 しかも、俺が一方的なボケにツッコミをするという、謎の構図。


「というか、こういうツッコミの担当は(あおい)だろ?」


「そんな人もいましたな」


「故人にされとるやんけ」


 (あおい)というのは、これもまたムイトズのメンバーの一人である。


 ムイトズ中では数少ない常識人なのだが、なぜかいじられキャラになってしまっている可哀想な人だ。


「結局情報交換したけど、収穫はなし……だな」


「だねぇー。まあ、気軽に行くしかないんじゃない?」


「適当だな……というか、さっきのオオカミみたいなヤツは何だったの?」


 俺は思い出したかのように、謎の生命体について、真琴に尋ねてみる。


 ……まあ、結果はわかっているが。


「あー、さっきのヤツ? 我の蹴りで一発だったね」


「お前って、そんな運動神経いいキャラだったっけ?確か、50m走二桁とかじゃ……」


 そこまで言いかけて、俺は隣から明らかな殺意を感じとり、口笛で誤魔化すことにした。


 実際のところ、真琴は極端な運動音痴である。


 正直、跳び箱を飛べている所を見たことがない。


 だが、先程の洗礼された蹴りを見ると、全く運動音痴には見えなかった。


 まさか、蹴りとかパンチとかは別腹みたいな感じか?


 ……怒らせないようにしておこう。


「んー、目が一個しかなくてキモかったから蹴ったりしたけど、何か蹴った時の感触が変だった気がする」


「蹴った理由ヤバいな。その感触が変だったというのは?」


 真琴の短気さに少し引きながらも、 蹴った時の感触について深く聞いてみる。


「何かね……」


 真琴が言いかけたその時だ。


「ちょっと待って、何かもの凄い地響きしてないか?」


 地震かと思うほどの大きな揺れと、ドタバタという大きな音が聞こえ始めた。


 揺れはかなり強く、普通に立っているのが少し厳しい程だ。


 あの真琴ですらも、手をブンブン回して倒れないようにバランスを保っている。


「ねぇ、地震にしては長くない?」


 真琴が扇風機を通じて話しているかのような声になりながら、聞いてくる。


 あまり地震は体験したことがないが、一向に揺れが収まる気配もなく、むしろ強くなってきている気すらしてくる。


「流石におかしいな……」


 俺が疑問に思いながらふと後方を振り返ってみると、そこには絶望が待ち受けていた。


 ――道の奥の方から、オオカミ(仮)の数百とも思われる軍団が、こちらに向かって突撃してきていたのだった。





「うおおおおぉ!? 走れ走れ走れぇ!!」


 俺らは今、砂利や大きな石で走りにくい道を、全力で走っていた。


「ちょ、腕ちぎれるって!?」


 もちろん、途中で脱落しそうな真琴の腕を持った状態で全力で駆けている。


 というか、何か真琴が重い気がする。


 体感、50m走は今なら、6秒台取れる気がする位の速さだ。


 それにしても、まさかあの地響きと大きな音の正体がオオカミ(仮)の軍団だったとは。


 通りで弱くなるどころか、近づいてきているから強くなっていったわけだ。


 恐らく、先程逃げていった三匹のヤツらが、仲間を大量に率いて、復讐するために戻って来たのだろう。


 捕まれば命はない。


「真琴ぉ! 絶対に転ぶなよ? もし転んだら詰みだからな!」


「そんぐらい分かってるっての! というか、結構距離縮んできてるんですけど!」


「ふぁ!? 具体的に、あとどんぐらい?」


「多分、サッカーコート二個分くらい!」


「何で例えがサッカーコートなんだよ! えーっと、なら200mくらいなのか。……それって、近いのか?遠いのか?」


「我に聞くなし! 自分で考えろ!」


 俺らは全力で走りながら、大声で会話をしていた。


 喉が枯れてしまいそうだった。


 だが、200m程離れているのであれば、体力が持つ間は大丈夫だろう。


 ……体力が持つ間は。


 これは、体力弱者の俺と、更に重症な真琴には、無理難題と言える。


 どうにか隠れるなりなんなりしなければ、いずれかは追いつかれてしまうだろう。


 とは言ったものの、こんな周りに畑しかない場所で、隠れられるような建物があるとは考え難いし、あったとしても、入れば逆に袋のネズミだろう。


 ……もしかして、これって既に詰んでるのか?


「真琴さぁん! 何かいいモノ持ってたりしないの!?」


「そんなんあったら、とっく使ってるわ!」


「ですよねぇ!」


 もしかしたら……と思ったが、流石に甘くはないようだ。


「ってか、我そろそろ限界なんだけど!」


「奇遇だね、俺もそう思ってたわ!」


「変なところで被んじゃねえよ! 島も体力尽きたら終わりじゃん! どーすんの!?」


「こっちが聞きたいわ!」


 いい加減お互いが解決策が無さすぎて、喧嘩腰になってきていた。


 そんな時だった。


「……なあ、あれって建物じゃね?」


 俺らに希望の光が、一筋差し込んできたのだった。


お読みいただきありがとうございました!


もし、「面白い!」「続きが気になる!」と、感じでいただけたなら、

【ブックマーク】と、広告下の【☆☆☆☆☆】を、【★★★★★】にしていただけると幸いです!


良ければ、【評価ボタン】も執筆のモチベーション向上に繋がるので、ポチッと押してもらえると嬉しいです!


(元々↑のような形式で後書きをやっており、それを後からこれまでの次回予告形式にしていたため……この話から、しばらく後の話まで、こんな感じの後書きになっちゃってます。時間があれば段々と次回予告形式にしてこーかなー。って感じです)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ