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⑨+αのパラレルワールド  作者: 藍夏&しれたこ
第一章 魔法+悪魔のパラレルワールド
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第二話 黒い生物

「何か、予想以上に遠くないか?」


 体力に自信は一切ないが、俺は頑張って走りにくいあぜ道をかけていた。


 しばらく走り、例の黒い物体との距離は10m程度までに縮まった。


 俺はとりあえず、今の道より低い段になっている畑の中に身を隠し、観察を始める。


 何かもぞもぞ動いているし、もしかしたら、イノシシだったりするのかもしれない。


 まあ、こんな考えが出てくるのも田舎だからなんだがな。


 相変わらずそれは紅く、似たような畑の景色が続いていた。


「うーむ……なんなんだアレは? やっぱりもぞもぞ動いてるし、生物だよな。かと言って、人間と言うわけでもなさそうだな」


 やっぱり、イノシシとかの野生生物説が濃厚かと思い始めていると、何かそのシルエットに動物とは思えないようなものがあった。


「む? 何かよくよく見たら、鍬みたいなの持ってないか?」


 遠くからだということや、周りに対照するものがないせいで、黒い物体の大きさを測ることはできなかったが、明らかに鍬のようなものを持っていることは確認できた。


「ということは、人間……なのか? それにしては、しゃがんでもないとあんなシルエットにはならなさそうやけど」


 仮に人間だとしても、あぜ道の真ん中で鍬を持った状態でしゃがんでて、もぞもぞしてるとか、完全に話しかけない方がいいオーラがプンプンしている。


「何かホラゲーみたいになってきた……」


 こういう時、極度の優柔不断な自分にムカついてくる。


 さっさとどうするか決めないと、何も始まらないというのに……。


「くっそぉ……話しかけるにしても、ハードル高すぎるやろ」


 見知らぬ場所で、見知らぬ人間(仮)に話しかけるのは、いくらなんでも俺の性格上難しいところはある。


「こんな時真琴なら、何も考えずに話しかけに行けるんだろうな……」


『真琴』というのは、先程も出てきたムイトズのメンバーの一人である。


 思いついたことはすぐ行動に移すし、とりあえず当たって砕けろな精神の持ち主だ。


 ……因みに、ヤツは腐っても女子だ。


「くぅ、みんなに会いてえな……」


 早くも、弱気になる星島創。


 俺が立ってしゃがんでを繰り返している当たりだった。


「……ん?何かよくよく見れば、鍬みたいなシルエット三つくらいないか……?」


 ――俺が明らかな違和感に気づき始めたのは。


 何かの見間違いかとも思い立ち、再び目を凝視させて見つめ直すが、


「いや、絶対そうだわ。完全に鍬みたいなシルエット三つあるわ」


 疑惑が確信に変わった頃、俺はもう一つ重要なことに気がついてしまう。


「あれ、完全に人間ではないやろ」


 そう、鍬が三つあるとなれば、鍬を縦に三つ持ったまま、道の真ん中でしゃがんでいる人……という認識になってしまうのだ。


「じゃあ人間では無いとすれば、アレは一体……?」


 その事実に気がついた途端、背中に一筋の汗が駆け巡る。


「明らかに関わらない方がいいよな……。見なかったことにして、さっさと逃げた方が身のためな気がしてきた……」


 ここでは流石の好奇心も、恐怖心に勝ることは無かったらしく、俺はそそくさと反対に振り返って静かに前進して行く。


 だが、どうやら俺の人生はどれも一筋縄では行かない様子だった。


「何コイツら!? キモイんですけど!?」


 そんな全力の叫びが、真後ろから聞こえてきたのだ。


 俺はその叫び声を聞いて、心臓が飛び出るかと思う程驚く。


 その声の発信源である真後ろに、首を素早く回して確認すると、先程の黒い物体……いや、生物らしきものが、三つのシルエットに別れて離れていた。


 そして、シルエットが囲むように移動した真ん中には、声を発した張本人であると思われる人物が、地面に腰をつけて、上半身だけが起き上がっている状態にいた。


「絶対行った方がいいよな……それにしても、今の声って――」


 明らかに女声だったが、少し音程が低くめで、歯切れがよく、単刀直入過ぎるあの言動は、何処かで聞き覚えがあった。


「というか、考えるのは後やな。怖すぎるけど、突撃しなければ……!」


 俺は畑から道への段を、華麗に飛び越して道に出ると、そのまま声の主の場所へ足を動かす。


 途中まで走って距離を縮めたあと、音を立てないように、忍び足で黒い生物の元へ近づいていく。


 黒い生物は、道の真ん中と両端に、三匹こちらに背中を向けて立っていた。


 どうやら、何かを見つめている様子だ。


 俺の身長が170cmちょいなのに対して、黒い生物達は俺の腰くらいの高さしかなく、とても小さいことが見て取れる。


 真ん中の黒い生物は、右手に持った鍬を地面に立てており、両端は、鍬を前に突き出して前後に小さく揺らしていた。


 その姿は、まるで子供が、棒で虫を突っついているかのようだった。


 もしかして、先程の声の主に対して鍬をツンツンしてるのか?


 丁度真ん中のヤツが、先程見えた人間に被っていて、向こうも自分に気がついているかは分からなくなっている。


 ……よし、とりあえず、人間だったとしてもそうでなくても、一度話しかけてみないと何も変わらないよな。


 俺は勇気をだして、声をかけてみることにした。


「あ、あのー……道を伺いたいのですが……」


 俺が声を発して空気を震わせた途端、目の前の三匹の生物は音も立てずに、顔と思われる部分をこちらに向ける。


「――――!?」


 俺はその生物を視認して、あまりの驚きと恐怖に言葉が詰まってしまった。


 その見た目を簡単に言い表すなら、それは『オオカミ』だった。


 だが、明らかにオオカミとは言えない点があった。


 ボサボサとした黒色の毛で覆われた体。


 二本の短い足で立っており、手も人のように道具などを持ちやすい形だ。


 更には、異常に長いしっぽ。


 オオカミのように、尖った口。


 そこから垂れだしている、長くて灰色の舌。


 何より決定的に違ったのは、その生物は単眼だったことだ。


 真ん中に、吸い込まれてしまいそうな程大きな瞳がひとつあり、そこには反射した俺がしっかりと映り込んでいた。


 まるでそれは、俺がもう逃げられないことを案じているかのようだった。


 とりあえず、オオカミなのかなんなのかよくわからないから、オオカミ(仮)としておこう。


 すると、オオカミ(仮)達は、お互いに見合って口を何かモゴモゴと動かし始めていた。


 それは、会話をしているかのようだった。


 俺が焦って頭が真っ白になっていると、オオカミ(仮)達の会話が終わったらしく、再び俺のことを見つめてきていた。


「あー、えーっと……一旦落ち着きましょ? ね……?」


 俺が警告のようなものを言った時には、既に遅かったようだ。


 ――オオカミ(仮)達は、俺に向かって鍬を振り下ろしてきていた。

創「今回もやります、次回予告!」


創「……ってか、なんなんあの……えーっと、その……アレやよ、アレ……。あっ、そうそう、未確認生命体のUMAみたいなの!?」


創「……と、とりあえず次回予告っすね」


創「えー、次回予告! この世に存在する生物なのかも怪しい、謎のオオカミのような生物三匹に声をかけてみる俺。だが、そんな努力も虚しく、相手はこちらとコンタクトをとるつもりは甚だない様子であった」


創「そして唐突に振り下ろされる鍬! 俺こと星島創は、目の前の攻撃的生命体をどうにかして、声の主を救えるのか……!?」


創「次回第三話、『我は真琴』!」


創「よーわからんが、ブックマーク、評価ポイントに、評価ボタン……と、感想? とかとか、いっぱいやると良いことがあるらしいっす! 知らんけど!」


創「駆け足気味だったけど、そーゆーことで次回もお楽しみに! ……タイトル通り、やっと自称美少女も出てくるかも?」

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