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「はぁっ、はぁっ」

 小銃を握る一人の男が深夜の路地裏を息も絶え絶えに走る。男の顔には恐怖の色が浮かんでいた。

「クソっ!ついてねぇ!よりによって”狐のヘルメット野郎”に追われるんて!割りにあわねぇ」

 そう吐き捨てながら男は走る。しかし、男は袋小路に入ってしまい逃げ道がなくなる。複雑な大都市の裏路地だ。遅かれ早かれ行き止まりに当たるのはわかっていた。

 男の背後から足音がゆっくりと近づいてくる。

「クソが!」

 男が振り向く。男の視線の先にはフルフェイスのバイクヘルメットを被った黒いライダースーツの男がいた。

 男が手に持っていた小銃をライダースーツの男に向けて出鱈目に撃つ。銃声が連続して静かな路地裏に響いた。

 しかし、手が恐怖で震えてしまっている男の銃弾がライダースーツの男に当たるはずもなく、男の持っていた小銃からはやがて銃声ではなくカチカチと言う空虚な音だけが発せられた。

 ゆっくりと近づいてくるライダースーツの男を前に対抗手段の全てを失った男はその場で腰を抜かした。

「わかった!俺の持ってる情報を全て吐く。だから無傷のまま警察に連れて行ってくれ!」

 ライダースーツの男は懇願する男の目の前まで来て歩みを止めた。


 綺麗な月の下で、男の絶叫が響き渡る。遠くからは警察車両のサイレンの音が聞こえていた。

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