第三十三話 作戦開始
ブランデール城へ着いたシルバー達は、報告のため真っ直ぐに王様のいる玉座の間へと向かいます。
ちょうど玉座の間では、エリーゼが王様と話をしていているところでした。
それを見たフレディアは、大喜びで飛び跳ねます。
「あ!お母ちゃんだ!! きゃーーーーっ!! お・・・」
「お姉ちゃん!!!」
フレディアがお母ちゃんと叫ぼうとした途端、何者かが後ろから大声で叫びました。
「ギョ!!」
驚いたフレディアが後ろを振り返ると、そこにはサンドフォックスの四天王の一人、双剣の舞姫コノハが立っていました。
そしてフレディアをすり抜け、一目散にエリーゼの元へ駆けて行きます。
「!!?」
「まぁ!コノハ?コノハなの?」
エリーゼは駆けて来る彼女を見て、驚きの声を上げています。
「お姉ちゃん!! 会いたかったわ!!」
そう言うと、コノハはエリーゼに抱きつきました。
「まぁ~! 大きくなったわね~コノハ・・・。びっくりしたわ!」
「どう?セイバーも元気にしてる?」
エリーゼはコノハの髪を優しくなでながら、懐かしそうに訊ねています。
コノハはエリーゼに抱かれ、まるで子供のような仕草で甘えていますが、それを見たフォークはビックリ仰天です。
「ゲッ!双剣の舞姫と恐れられるコノハのアネゴを、まるで子供扱いかよ・・・。
シルバーのお袋さん、やっぱりただ者じゃねえな・・・」
驚くフォークの横では、さっきから拗ねている子が一人います・・・。
「ぷーーーーっ!!」
エリーゼに甘えているコノハを見たフレディアは、顔を真っ赤にしてふくれています。
大好きなエリーゼを、コノハに横取りされたのが悔しかったのでしょう。
「お、おい、フレディア。何をむくれているんだよ?」
その事に気づいたシルバーがフレディアをなだめますが、そう簡単には機嫌が直りそうもありません。楽しそうに話すエリーゼとコノハを、ふくれっ面でジッと見つめています。
天使ともあろう者が、こんな事でよいのでしょうか?
仕方なくシルバーはフレディアをそのままにして、王様へ報告をする事にしました。
「何と!?パンドラの箱を手に入れたじゃと?!
よくやった!! さすがはワシの孫じゃ!!」
王様は大喜びでシルバー達の手柄を褒めちぎります。
「あ!それと、聖なる石も見つけたよ!」
「そ、それは誠ですか!!?」
シルバーの報告に驚いたのは、王様の横にいたランドル将軍です。
「ああ!ほら、これ・・・」
フォークは聖なる石をランドル将軍に手渡しました。
「おぉ!まさしくこれは聖なる石! かたじけない!!」
「おい!誰かこれを、塔に待機している兵士長達に渡してこい!!」
聖なる石の探索と塔の再建はランドル将軍の任務でしたが、聖なる石はどうしても見つける事が出来ずにいたのでした。
塔の再建は完了しているので、そこに兵士長を待機させている状態だったのです。
「王様!これですべての準備が整いました!!」
「うむ!後はクルーガの作業を残すだけとなった!」
王様のこの言葉を聞いたフォークは、コノハに状況を確認しました。
「コノハのアネゴ!お頭の作業はどうなってんだ?」
「え?何か言った、フォーク?」
エリーゼとの話しに夢中になっているコノハは、嬉しさのあまりすっかり舞い上がってしまっているようです。
「セント・ワイヤーの作業だよ!! どこまで進んでいるかって・・・」
「たいへん!すっかり忘れてた!!」
ここへ来た任務を思い出したコノハは、慌てて王様へ報告します。
「申し上げます!セント・ワイヤーの作業はすべて完了しました!!
後は・・・えっと・・・。あれ?何だっけ・・・」
「コノハさん、オレ達の方の準備はすべて整ったよ」
シルバーがまごまごしているコノハへ報告します。
「ええ!! そ、それじゃ・・・」
「たいへんだ!こうしてはいられないわ!!
フォーク!作戦会議を開くから、すぐアジトへ戻りなさい!!」
「お姉ちゃん、また後でね!」
そう言うと、コノハは急いで退出して行きました。
すべての準備が整ったのを確認した王様は、全員に指示を出します。
「よし!これですべての準備が整った!!
後は作戦を実行に移すだけじゃ!!」
「シルバーよ!作戦はすでにクルーガと打ち合わせ済みじゃ。
お前たちはこれよりクルーガの元へ行き、作戦を遂行するように!!」
「よいか、無理をして母親を悲しませるような事だけは決してないようにの・・・。
ワシはお前たちを信頼しておるぞ!!」
王様の言葉に、シルバーは力強く答えます。
「大丈夫さ!! オレ達は必ずエルサラーム宮殿を封印し、捕らわれている人たちを救出してみせる!!」
それを聞いたエリーゼは、シルバー達に言葉を掛けました。
「みんな、気をつけてね。 シルバー、無理をしてはダメよ。ソフィアちゃんと妹をしっかり守ってあげるのよ」
「フォークさん、みんなをお願いします」
「おばさん!オレがいるから大丈夫だよ!何たってオレは盗みのプロだからな!
必ず奪われた人たちを奪い返してみせるぜ!!」
「おばさま、心配しないで!シルバーが一緒だもの。私たちはきっと無事に戻って来るわ!!」
ソフィアも力強くエリーゼに答えます。
「お母ちゃん、行ってきま~す!」
「母ちゃん!必ず父ちゃんを連れて帰るからね!!」
玉座の間を退出するフレディアとシルバーは、最後に振り返ってエリーゼに手を振りました。
それを見届けた王様は、二人の将軍に厳命を下します。
「ランドル将軍、カール副将軍!!」
「はっ!」
「その方達!!シルバーたちを必ず守り抜け!!よいな!!」
「ははっ!!」
***
サンドフォックスのアジトでは、クルーガが大きな声で吠えています。
「よし!これで全員役者がそろったな!それでは、今から作戦の打ち合わせを行う!!」
「俺と四天王は、先にセント・ワイヤーの遺跡に入り、いつでもエルサラームの宮殿へ突入できるよう準備をしておく」
「シルバー!おめえ達は準備が出来次第、遺跡に来てくれ。全員揃ったところで作戦を実行する」
「集合場所は、遺跡の地下三階だ!今回の作戦は半端じゃねえ!しっかり装備を整えてから挑むんだぜ!!」
「よし!わかった!!」
シルバーは気合を込めてクルーガに答えました。
「うむ!それでは作戦を開始する!!」
クルーガの号令で、アジトにいた者たちは一斉に行動を開始しました。
真っ先に席を立ったミスター・プーは、シルバー達に忠告します。
「セント・ワイヤーの遺跡は、今までキミたちが経験してきたどのダンジョンよりも、はるかに手強い所です。気をつけてくださいよ」
「頼んだわよ、シルバー!!」
コノハはシルバーの肩を叩き、片目をつむって合図をしました。
「シルバー!期待しているぞ!!じゃ、セント・ワイヤーで会おう!!」
セイバーもシルバーの肩を叩いてエールを送ります。
「・・・・・」
陽炎は何もしゃべりませんが、きっと心の中で応援してくれているはずです。
そして最後に席を立ったクルーガは・・・。
「シルバー!いよいよだな!!」
そう言ってアジトを出て行きました。
「よし!オレ達も行くか!!」
シルバー達は、誰も居なくなったアジトを後にしました。




