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第二十三話 ソフィアの思い

クランツ博士の手紙を持ったシルバーたちは、急いでブランデール城へ帰りました。

そして玉座の間へ進むと、そこには王様と話しをしているエリーゼの姿がありました。


「あ!!お母ちゃんだ!!」


「きゃーーー!! お母ちゃ~~~ん!!」


フレディアは大声で叫ぶと、エリーゼの元へ飛んで行きました。

あまりにも嬉しかったので、フレディアはエリーゼの周りをグルグルと5週も駆け回り、そしてエリーゼの胸に飛び込みます。


「まぁ、フレディアちゃん! 相変わらず元気そうね!」


エリーゼは満面の笑みで、そんなフレディアを抱きしめてあげました。


「母ちゃん、いつ着いたんだい?!


シルバー達もエリーゼの元へ駆け寄ります。

そしてエリーゼに向かい、矢継ぎ早にしゃべり出しました。


「母ちゃん、いまこの国は大変な事になっているんだよ!

あ、それから母ちゃんは何でオレに父ちゃんや、母ちゃんの事を話してくれなかったんだよ!」


「それから母ちゃん!父ちゃんは、まだ・・・・」


「これ、これ、シルバー。

エリーゼさんは、さっきブランデール城に着いたばかりじゃ。

そう急かさずとも、後でゆっくり話をすればよかろう」


王様は堰を切ったように話すシルバーを、少し落ち着くようにたしなめました。


「あ、そうだね・・・。 何かオレ、ここ数日間に色んな事がありすぎて、つい・・・」


そう言うシルバーの話を聞いていたエリーゼは、横にいるソフィアの様子がいつもと違う事に気づきました。


「あら?ソフィアちゃん、どうしたの?

何だか顔色が良くないわ・・・」


「・・・・・・・」


エリーゼが心配してソフィアに声を掛けたとたん、ソフィアはエリーゼの胸に飛び込み、大声で泣き出しました。


「うっ・・・。パパが・・・。パパが・・・」


「うえ~~~~ん・・・・」


「ソフィアちゃん・・・・」


エリーゼはソフィアを優しく抱きしめると、彼女が落ち着くまで背中をトントンと叩いて慰めてあげました。




「う~む・・・。 そうか、クランツ博士はエルサラームの謎を、すべて解き明かしておったのじゃな・・・」


「そしてバジルが究極の秘宝“命のクリスタル”を狙い、博士から宮殿の謎を聞き出し、そして実行した・・・。あぁ、何と言う事だ・・・」


王様はガックリと肩を落とし、うなだれてしまいました。


「王様、嘆いてばかりはおられませんぞ!」


大臣はそんな王様を何とか励まそうとします。


「おぉ、そうじゃ! 一刻も早くエルサラーム宮殿を封印しなくてはならぬ!!」


「シルバーよ! 帰ったばかりで疲れておるじゃろうが、三日後にサンドフォックスも呼び、緊急会議を開くとしよう!」


「よし!じゃあオレは今からお頭に知らせてくるよ!!」

そう言うとフォークは走り去りました。



周囲が落ち着いたのを見計らい、王様は改めてエリーゼに向き直りました。


「エリーゼさん・・・。

シルバーは良い若者に育ったのう・・・」


「これもすべて、あなただからこそ!

ワシは改めて自分の犯した間違いを悔いておる・・・」


「どうか、ワシを許してくれ・・・」


そう言うと、王様はエリーゼに深々と頭を下げました。


「お父様・・・」


「シルバー!フレディア!」


「お前たちは、良い母親を持ったの!!大切にするのじゃぞ!!」


王様はそう二人に言い聞かせました。



*その夜・・・。



「シルバー。しばらく会わないうちに、ずいぶん逞しくなったわね。

聞いたわよ!あなた達ずいぶん頑張っているんだって?」


「でも、まだ父ちゃんの消息がつかめないんだ・・・。

ソフィアだって、今まで頑張って来たのに、あんな事になってしまって・・・」


「何を気弱になっているの?

あなたがそんな事ですどうするのよ!ソフィアちゃん、ますます落ち込んじゃうわ・・・」


「シルバー。あなたがソフィアちゃんをしっかり守ってあげないと・・・」


エリーゼはシルバーに言って聞かせます。


「うん・・・。でも、オレ何て言葉をかけていいのか分かんないよ・・・」


「あなたはどう思っているの?」


「え?」


「クレスト・・・。お父さんの事よ」


「そんなの決まっているだろ!父ちゃんは絶対大丈夫に決まっているよ!

オレここへ来てさ、いろんな人から父ちゃんの話を聞いて、すごく感動したんだ!」


「父ちゃんは、オレや母ちゃんと居るときはやさしい普通の父ちゃんだけど、でも本当はすごい人なんだって・・・。

オレ父ちゃんの事、すごく誇りに思っているんだ!!」


「あのサンドフォックスのクルーガだって、父ちゃんには一目置いているんだぜ!!

絶対に父ちゃんは生きている!!」


「そう・・・。じゃあ母さん安心していいのね?」


「よかった・・・・」


そうつぶやくと、エリーゼはホッと胸を撫で下ろしました。

その母の様子を見たシルバーは、ふと気づきます。


(そうか・・・・。母ちゃんも本当はソフィアと同じで、不安でいっぱいなんだ・・・)


(気丈にふるまっているけど、誰かに励ましてもらわないと、本当は崩れてしまいそうなんだ・・・・)


(あ、そうか! ソフィアもオレ達に気を使って・・・。

本当は一人では立っていられないほど、身も心も疲れ切っているはずなのに・・・)


「母ちゃん。オレちょっとソフィアを見て来るよ!」


そう言って部屋を出ようとしたシルバーですが、ふと立ち止まって振り返りました。


「あ! あ、あのさ・・・。

オレさっき父ちゃんの事、すごく誇りに思っているって言ったけど・・・。

オレ、母ちゃんの事も・・・・」


「なぁに?」


「は、は・・・。ちょっと行ってくるね」


シルバーは、会議室を挟んだ隣のソフィアとフレディアのいる部屋へ向かいました。

そして部屋の前に立ち、ドアをノックします。


「ソフィア・・・。まだ起きてる?」


「あ、シルバー?!」


ソフィアはシルバーの声に気づき、すぐにドアを開けてくれました。


「あ、あの・・・。ちょっと、いいかな・・・・」


「どうしたの?こんな夜遅くに・・・」


「いや、昼間の事でさ、キミの事が気になったもんだからさ・・・」


「まぁ!ごめんねシルバー。

わたし、おばさまの顔を見たとたん、今まで胸の中に押し込んでいたモノが、ドッとあふれ出てしまって・・・」


「そしたら、もう、どうしょうもなく悲しくなって・・・」


「いや、オレ達の方こそ。

ちっともソフィアの気持ちを考えないで、先へ先へと進んでしまって・・・。

ごめんね!」


「ううん、いいのよ・・・。

だって、わたしパパのこと、すごく怒っていたし・・・。

あなたにも一杯パパの愚痴を聞かせていたから・・・」


「でも・・・」


「分かるよ、ソフィアの気持ち」


「シルバー・・・。

わたし、パパの事すごく怒っていたのに・・・・。

ママが死んだ時、本当にパパの事をすごく憎んでいたのに・・・」


「でも・・・。パパのこと考えていると、いつの間にか楽しかった時の事ばかり想い出すの。

わたしって、きっとバカなのね・・・。パパとの楽しい想いでなんて、ほんの数えるほどしかないのに・・・・」


「そんな事ないよ、ソフィア!

オレもそうさ。オレもキミと一緒で、苦しい事や、辛い事はすぐに忘れてしまうんだ」


「そのくせ、ほんのわずかな楽しい出来事は、いつまでも覚えているんだよな・・・。

たぶん、人間ってそんなふうに出来ているんじゃないかな?

だって生きている時、楽しい事なんかより、嫌なこと、苦しい事、悲しい事の方がはるかに多いだろ?だから・・・。きっと悲しい事なんかすぐに忘れてしまうよう、神様がうまく作ったんだよ」


「シルバー・・・。パパは生きているかな?」


「大丈夫!ソフィアのパパも、オレの父ちゃんもきっと無事さ!

そう信じようよ。でなきゃ、これからオレ達なにも出来なくなってしまうよ」


「オレ・・・。ソフィアの悲しむ顔も、母ちゃんの悲しむ顔も見たくない。

だから、オレは絶対みんなを助け出して、エルサラーム宮殿を封印してやるんだ!!」


「シルバー・・・」


「ソフィア・・・・」




ガチャ!!


「キャッ!!」


ドテッ!!



「うわっ!フ、フレディア?!」

「フレディアちゃん?!」



「・・・・・・・・・」



*ドアを隔て、奥の部屋で眠っていたフレディアからの目線です。



ソフィア・・・。まだ起きてる?


あ、シルバー?!


あ、あの・・・。ちょっと、いいかな・・・・。


どうしたの?こんな夜遅くに・・・。


いや、昼間の事でさ、キミの事が気になったもんだからさ・・・。


まぁ・・・。ごめんねシルバー。

わたし、おばさまの顔を見たとたん、今まで胸の中に押し込んでいたモノが、ドッとあふれ出てしまって・・・。


そしたら、もう、どうしょうもなく悲しくなって・・・。


いや、オレ達の方こそ・・・。

ちっともソフィアの気持ちを考えないで、先へ先へと進んでしまって・・・。

ごめんね。


ううん・・・。いいのよ・・・。

だって、わたしパパのこと、すごく怒っていたし・・・。

あなたにも一杯パパの愚痴を聞かせていたから。


「あれ?ソフィア、誰かと話しているの?」


でも・・・。


分かるよ、ソフィアの気持ち・・・。


「あ!お兄ちゃんだ!!何を話しているのかな?」

「よし、ドアまで行って・・・・」


シルバー・・・。

わたし、パパの事すごく怒っていたのに・・・・。

ママが死んだ時、本当にパパの事をすごく憎んでいたのに・・・。


でも・・・。パパのこと考えていると、いつの間にか楽しかった時の事ばかり想い出すの。

わたしって、きっとバカなのね・・・。パパとの楽しい想いでなんて、ほんの数えるほどしかないのに・・・・。


そんな事ないよ、ソフィア。

オレもそうさ。オレもキミと一緒で、苦しい事や、辛い事はすぐに忘れてしまうんだ。


そのくせ、ほんのわずかな楽しい出来事は、いつまでも覚えているんだよな・・・。

たぶん、人間ってそんなふうに出来ているんじゃないかな?

だって生きている時、楽しい事なんかより、嫌なこと、苦しい事、悲しい事の方がはるかに多いだろ?だから・・・。きっと悲しい事なんかすぐに忘れてしまうよう、神様がうまく作ったんだよ。


「大変!きっと愛の告白をしているんだわ!!

よ~し!いざと言うときは、わたしがキューピットの弓矢で・・・って、あれ、弓矢は?

あっ!弓矢はベッドの下に・・・・」


シルバー・・・。パパは生きているかな?


大丈夫!ソフィアのパパも、オレの父ちゃんもきっと無事さ!

そう信じようよ。でなきゃ、これからオレ達なにも出来なくなってしまうよ。


「急ぐのよフレディア!今度こそ天使としてのお仕事を・・・。

あった!キューピットの弓矢!!」


オレ・・・。ソフィアの悲しむ顔も、母ちゃんの悲しむ顔も見たくない。

だから、オレは絶対みんなを助け出して、エルサラーム宮殿を封印してやるんだ!!


シルバー・・・。


ソフィア・・・・。


「あわわわ・・・。いまどうなっているの?

そうだ!ドアのカギ穴から・・・・あっ!!」


ガチャ!!


「キャッ!!」


ドテッ!!


「うわっ!フ、フレディア?!」

「フレディアちゃん?!」


「・・・・・・・・・」


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