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第二十一話 ミトロ遺跡

「しかし王様・・・。エルサラームに捕らわれた者たちの救出は勿論ですが、宮殿そのものを何とかしなくてはなりませんな」


大臣が王様に進言しました。


「うむ・・・。解かれた封印を元に戻さねば、世界はやがて闇と化してしまうであろう」


「ソフィア、そなたの父クランツ博士から何かエルサラームの宮殿について、聞いておらぬか?」


「いえ・・・。父のクランツとは、もう一年以上会っておりませんので・・・」


王様の問いに、ソフィアは申し訳なさそうに答えます。

そのソフィアに代わり、シルバーが王様に答えました。


「おじいちゃん。実はここへ来る途中にカプレの村に寄ったんだけど、そこで気になる話を聞いたんだ・・・」


「カプレの村・・・。 あぁ!バジル王子に襲われた、塔のそびえる村ですな!」


ランドル将軍が確認を取ります。


「あの村の人たちは、3000年前にエルサラームの宮殿を封印した賢者の末裔で、塔を守っていたんだって」


「塔とな? む、そう言えばバジルは村の塔を破壊したと言っておったな。

しかしなぜ塔などを・・・」


「あのね!その塔には“聖なる石”と言うのが祭られていてね、宮殿が現れたのは、その塔が壊されてしばらくしてからなんだって!」


フレディアが王様に教えてあげました。


「そうか・・・。では、エルサラームの宮殿と、その塔とは何か密接な関係があるのやも知れぬのう・・・」


「王様。そう言えば、バジル王子が襲った他の村にも、高い塔がそびえ建っていたそうです」


ランドル将軍は、思い出したように王様に進言しました。


「そうか!するとバジルの奴め、何らかの方法で宮殿の封印を解く方法を知ったのだな」


王様はそれに気がついたようで、眉間に深いしわを寄せて考え込んでいます。

そんな王様に、今度は大臣が進言します。


「王様、かねてよりクランツ博士がミトロ遺跡で発見された緑の結晶石の扉の部屋で、エルサラーム宮殿の封印について調査をされておりましたが・・・」


ミトロ遺跡の話が出たので、ソフィアがシルバーに小声でささやきました。


「シルバー。そこへ行けば、パパが私に渡した紫の結晶石の秘密も分かるかも知れないわ・・・」


「そうだな・・・。セント・ワイヤーの作業も時間がかかると言っていたし、そこへ行ってみようか!」


そう決断したシルバーは、王様に向かって話し掛けました。


「おじいちゃん。オレ達そのミトロ遺跡へ行ってみたいんだけど・・・」


「うむ・・・。そうじゃのぉ・・・。ソフィアも父の事が気になるであろうし、自分の父の研究を知るのも良い事じゃ」


「よろしい!遺跡を守る兵士には連絡しておこう。気をつけて行くのじゃぞ!!」


王様は立ち入り禁止にしていたミトロ遺跡を開放し、シルバー達に調査を許可しました。




*そのころ天界の神様たちは・・・。



「おかしいの~。どこへやったんじゃろ?

はて、困ったものじゃ・・・」


技術と創作の神様は、さっきから一生懸命探し物をしていました。

フレディアが居た時は、すぐに彼女が見つけ出してくれたのですが、今回はそう言う訳には行きません。朝から部屋中を探し回っています。

そんな所へ、恋を取り持つ神様が飄々(ひょうひょう)とやって来ました。


「おっ?えらい散らかしておるが、何をやっておるのじゃ?」


「おぉ!これは恋を取り持つ神ではないか。

いや、実はのぉ・・・。フレディアが地上で頑張っておるのでな、何か役に立つ物を創ってやろうと思っておるのじゃが・・・」


「トンカチがどこかへ行ってしもうてのぉ~。いま探しておるところじゃ・・・。

確かにさっきまでここにあったのじゃが・・・」


技術と創作の神様はそう言っていますが、トンカチはずっと前から部屋の壁のど真ん中に掛けられています。


「トンカチは勝手に歩いて行かんじゃろ?さては!おぬし少し痴呆が入ってきたのではあるまいの?」


恋を取り持つ神様は、疑いの目で技術と創作の神様を見ています。


「バ、バカを申すでない!! わしはまだしっかりしておるわい!!」


「ほう!それでは聞くが・・・。今日の晩飯は何を食ったか覚えておるか?」


「な、な、晩飯じゃと?」


「そうじゃ、晩飯じゃ! ボケが始まるとの、さっき食べたご飯のおかずを忘れてしまうそじゃぞ!」


「な、何じゃ、晩飯のおかずぐらい、ちゃんと覚えておるわい!

わ、わしの今日の晩飯のおかずはのぉ・・・・。

お、おかずはのぉ・・・」


(??? ややっ!な、なんじゃった?)


(今日の晩飯は・・・・)


「まさか、思い出せんのではあるまいな?」


恋を取り持つ神様は、ますます疑いの目で技術と創作の神様を見ています。


「ぶわっ、はっ、はっ・・・・。

ま、まさか、神ともあろう者が、さっき食べたおかずを思い出せん訳が・・・」


技術と創作の神様の背中は、冷や汗でびっしょりです。


「ふぁっ、ふぁっ、ふぁっ・・・・。それも、そうじゃの!

技術と創作の神ともあろう者が、ボケておっては大ごとじゃ!!」


「ちなみに、わしの今日の晩御飯のおかずは、肉じゃがと、ほうれん草のおひたし、それにみそ汁じゃ!どうじゃ、完璧じゃろう!!」


恋を取り持つ神様は、胸をそらして自慢気に答えます。


「おぉ!さすがは恋を取り持つ神じゃ!まだまだしっかりしたものじゃわい!!

ぶわっ、はっ、はっ、はっ・・・・」


技術と創作の神様も、豪快に笑って答えます。


「そうじゃろ、そうじゃろ!

さて!そろそろ帰るとするかの、仕事の邪魔をしては悪いでの~」


そう言うと、恋を取り持つ神様は帰って行きました。



「・・・・・・・・・・・・・」


技術と創作の神様は、恋を取り持つ神様を見送った後、真剣に考え込んでいます。


「は、はて・・・・。こ、これはえらい事になったぞ・・・」


「わしの今日食った晩御飯のおかずは・・・・・」


「う~む・・・・。お、思い出せん・・・・」


「う~~~ん・・・・・・・・・」


「???!!」


「ありゃ?!今はまだお昼ではないか!!?」


「今日の晩飯など、まだ食う訳がなかろう!!」


「あやつ・・・・。やばいの・・・・」




***




砂漠の最南端にあるミトロ遺跡には、危険な魔物がたくさん潜んでいるため、国が立ち入り禁止の処置を施していました。

王様の許可をもらったシルバー達は、今そのミトロ遺跡の中に潜り込んでいます。

パジャームにある調査隊本部で、お世話をしてくれていたメイドさんが話してくれた、クランツ博士の“大事な話”の手掛かりを探すのが目的です。


「パパはわたしに何を話したかったのかしら・・・」


「分からないけど、クランツ博士はソフィアが訪ねて来たら、“ミトロ遺跡の発掘現場”へ連れて来てほしいって、みんなに言っていたそうだから、きっと何か手掛かりを残していると思うよ」


ソフィアの問いに、シルバーが答えています。


「おっ!どうやらここが遺跡調査隊の詰所みたいだぜ!」


フォークがシルバーに声を掛けました。


遺跡一階の奥に、調査隊のために特別に作られた一室がありました。

その部屋の中には机や本棚、ベッドなどが設えられています。

シルバー達はその部屋の中を、一つ一つ念入りに調べて行きました。

そしてソフィアが本棚を調べていると、本の間から小さなカギがポトンと下に落ちて来たのです。


「これって・・・。ひょっとして調査隊本部のパパの部屋のカギなんじゃ・・・」


ソフィアが拾ったカギを見て、そうつぶやいています。


「きっとそうだよ!」


シルバーはカギを見て頷きました。


「よし、ここではもう新しい物は見つからないようだから、遺跡の中を探索しようぜ!」


そう言うと、フォークは張り切って遺跡の奥深くへ進んで行きました。

そして、さすがにお宝探しのプロだけあって、遺跡調査隊が見逃した隠された部屋や、巧妙に仕組まれた罠を見つけて解除し、二つの貴重なお宝を発見しました。

ライトウイップとライトクロスボウです。

どちらも店では手に入らない貴重な武器で、町で売っている武器とは比べ物にならない攻撃力を秘めています。

おかげでムチを使うソフィアと、弓矢を使うフレディアの物理的攻撃力が大幅にアップしました。そしてそれを得た事を一つの区切りとし、シルバーが声を上げます。


「よし!パジャームの街へ行こう!!」


シルバーの号令でミトロ遺跡の探索は打ち切り、一行は調査隊本部へと向かいました。


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