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第二話 村は大騒ぎ

大あわてで村の中を駆け回るフレディア。

そして宿屋の裏の牧場で、ようやく牛を発見する事ができました。


「あ~っ!ウシさん発見!!」


フレディアは牛の正面に立つと、弓矢を構えました。


「ドキ、ドキ・・・・。 お、落ち着くのよ、フレディア。

あなたなら、きっとうまく行くわ!!」


「よーく狙って・・・」


「それっ!」


パシュッ!


勢いよく矢を放ったフレディアでしたが、牛に集中しすぎていたため、元気よくこちらに向かって駆けて来る馬には気づいていませんでした。


キラリン!


「ヒヒ~ン!」


馬の身体から淡いピンク色の光が溢れ出ます。


「あわわわ・・・・」


硬直するフレディア。



一度失敗したフレディアは、緊張と焦りからか、もう何をやってもうまく行かなくなってしまいました。


「よ、ようし、今度こそ・・・・」


パシュッ!


「メェ~ッ」


「ああ!!」


パシュッ!


「コケコッコー!」


「きゃー!」


パシュッ!


「モ~!」


「ひえぇ~!」



*それから一時間が経ちました。



気が付けば、村の中が大騒ぎになっていました。


牧場では、馬を牛が全速力で追いかけています。

さらにその牛を、羊がせっせと追いかけて行きます。


村の入り口付近では、おばちゃんがニワトリに追いかけ回されていました。


「な、なによこのニワトリ!

悩ましい声で鳴くんじゃないわよ!

しっ!しっ!」


池の周りでは、羊に追いかけ回されているおじさんがいました。


「ひゃー!た、助けてくれー!!」


そして道具屋の前にいたメイド服の女の子は、牛から逃げ回っています。


「キャー!な、なんなのよー!

このウシ~!!」


あまりに外が騒がしいので、店の外へ出た道具屋のおじさんとおかみさんは、その様子を見てビックリです。


「な、なんなの一体・・・。

あの娘、牛に何かしたのかしら?」


そして二階の男の子は、その様子を見て思わずため息をつきました。


「あぁ・・・。

彼女、あんなに楽しそうに牛と戯れて。

僕も仲間に入りたいなー」


そしてフレディアが最後に立ち寄った宿屋の二階では・・・。


*あぁ~。この村はいつものどかだな~。たまには刺激があってもいいよな~。

何か面白いこと起きないかな・・・。


と、つぶやいていた店のおじさんが、近所のお婆ちゃんに言い寄られ、ものすごく焦っていました。


「わたしゃ、あんたに惚れたんだよ!

お願いだから、私にもう一花、咲かさせておくれよ~」


「ひや~!ちょ、ちょっとお婆ちゃん・・・。

じょ、冗談はやめてくれよ・・・。ひぃ~~~!!」



「あわわわ・・・・。そ、そろそろ帰ろうかな・・・」


逃げる様に村の外へ出たフレディアは、くるりと村を振り返ると。


「キャハハ・・・・。

もう、何がなんだかわかんな~い!!」


そう言うと、いそいそと神様の所へ戻って行きました。



***



「た、ただいま帰りました・・・」


「ばっかもーん!!」


「ひや~っ! ご、ごめんなさーい!!」


「ばかもん!!

謝ってすむ問題ではないわ!!」


フレディアが村でやらかした失敗は、すべて神様にバレていたのです。


「まぁ、まぁ、そんなに怒らんでも。

フレディアもわざとやった訳ではあるまいし・・・」


責任を感じた恋を取り持つ神様が、何とか技術と創作の神をなだめようとしたのですが、そう簡単には行かないようです。


「いや!こやつには、人と人とが愛し合い、そして結ばれるという、大切な意味が分かっておらんのだ!」


「そんな事では立派な女神などになれる訳がない!!」


「しゅん・・・・」


フレディアは、小さくなって落ち込んでいます。


「今回の一件を見ても分かるように、フレディア!

お前が一人前の女神となるには、まだまだ修行が必要じゃ!!」


「美の女神ヴィーナスしかり、大地の女神デメーテルしかり!

一人前の女神たらんとする者は、愛と(いつく)しみを持って人間に恵みを与えねばならん!」


「は、はい・・・」


「フレディアよ、そのためにはもっともっと人間を知らなければならぬ!!

わかるの?」


「は、はい・・・」


「よし! ではフレディアよ!

しばらく地上に降りて、人の子として修業を積むがよい!!」


「ええー?!そ、そんなー!!」


「ではフレディアよ、しっかり修行に励むのじゃぞ!!」


「ちょ、ちょっと神様。まだ、心の準備が・・・・」


フレディアは慌ててそう言いましたが、神様はもう聞く耳を持ちません。


「それっ!」


「きゃーーーーっ!」


神様の一声で、フレディアの立っていた床が消え去り、そのまま地上へと落ちて行きました。




「ちょっとやり過ぎではないかの?」


恋を取り持つ神様は、穴の開いた床をのぞき込み、心配そうにしています。


「あの子には素晴らしい素質がある。

これくらいせねば、本人のためにはならんじゃろうて」


技術と創作の神様は、どうやらフレディアの地上での修行の事を、少し前から考えていたようでした。


「うむ、わしもそれは感じておった。

しかし気になるのは、最近地上に何やら邪悪な気配が漂い始めておる事じゃ・・」


恋を取り持つ神様も、フレディアの素質を見抜いていたようですが、今は少し時期が悪いと考えているようです。


「幻の宮殿エルサラームじゃな・・・」


技術と創作の神は、難しい顔で何やらブツブツとつぶやき始めました。


「天と地が一つに交わり、七つ目の太陽が沈むとき、いにしえの闇の扉は開かれん・・・。

世界が闇につつまれし時、虹駆ける銀嶺(ぎんれい)の覇者現れ、この闇をはらわん・・・」


「これは少々面倒なことになるやも知れんのぉ・・・」


「ま、しかし何とかなるじゃろう!」


難しい顔で唸っていた技術と創作の神でしたが、最後はかなり適当な感じがするのは気のせいでしょうか?


「そうじゃのぉ・・・。ま、何とかなるじゃろぅ!

それよりどうじゃな?久しぶりに将棋でも・・・」


「お!ええの~。それでは一局お相手願えますかな?」


気のせいではなく、神様たちの性格は、間違いなくかなり適当なのでした・・・。



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