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第十九話 カプレの塔

「シルバー!今日は一旦宿屋に泊まり、明日の朝出発しようぜ!」


フォークの提案で、シルバー達は宿屋へ向かいました。

そして宿屋で宿泊の手続きをしていると、片隅で占いをしていたお婆さんが、何故かフレディアをまじまじと見て、とても不思議そうな顔をしています。


宿屋の占い師の事は、シルバー達も情報を集めていた時に聞いて知っていました。

怖いほどよく当たるので、街中でも噂になっていたのです。

だけど、とにかく料金が高いらしく、シルバー達はどうしてもクルーガの居所が掴めなかった場合は、ここで占ってもらうおうと話をしていました。


その占い師のお婆さんが、どうもフレディアの事が気になって仕方がない様子で、とうとう声を掛けて来ました。


「ほほう・・・・。そこのかわいい娘さん。

これはまた、変わった相のお方じゃ・・・。どれ、ひとつ占ってしんぜよう」


「え?わたしの事?!」


フレディアはお婆さんを見て、その後すぐにシルバーを見ました。

料金が高い事を気にしているようです。


「そうじゃ、お金はいらぬぞ?!」


「キャハハ!お金がいらないのなら・・・」


フレディアは大喜びで占ってもらいました。



「不思議じゃ・・・。

一つしかないはずの人生なのに・・・。

二つの人生・・・。運命が見える」


占い師は驚いた表情で、フレディアの未来の予測を始めました。


「一つは光に満ち溢れ、われら凡人には神々しくて、うかがい知ることが出来ぬ・・・」


「じゃがもう一方は、愛と慈しみに包まれた、輝かしい未来が見える・・・。

不思議な運命じゃ!」


「あ~っ!その言葉どこかで聞いたことがあるよ!あ!神様の言った言葉だ!」


「やったー!きっとそれは女神様になれるって意味だわ!!」


フレディは大喜びで飛び跳ねています。


「うむ・・・・。女神・・・とも呼ばれるじゃろうが・・・。

意味合いとしては、むしろ女王様・・・が適切かのう? 

多くの民に慕われる姿が見える・・・」


「いや、実に不思議な運命じゃ・・・」


占い師のお婆さんは、そう言うとフレディアの顔を、もう一度まじまじと見つめました。



朝早く宿屋を出たシルバー達は、南のカプレの村へ向かいました。

クルーガが言っていた北のゲートが開いておれば、ここからブランデールの街まで三日で行けるですが、今はエルサラームへ対する防備のため、砂漠につながるすべてのゲートが閉じられています。

そのため、パジャームの街の北に位置するブランデールへ行くためには、広大なパジャーム砂漠をぐるりと一周するため、十日以上かかってしまうのです。


旅を始めて3日目、ようやく最南端にあるカプレの塔が霞んで見える所まで来ました。

ここで休憩しながら、シルバーはウオーターフォールの村から見える、もう一つの塔の事を思い出していました。

村に住むお婆さんは、この世界には大きな塔が三つあると言っていました。そしてバジルはその三つの塔を破壊したと聞いています。

一体誰が、何の目的で塔を建てたのか・・・。なぜバジルは塔を破壊したのか・・・。

カプレの村へ行くと何か分かるかも知れないと、シルバーは遠くに霞む塔を見ながら考えました。


それから二日後、ようやくカプレの村に着きました。

巨大なカプレの塔が、すぐ目の前に迫って見えます。


「すごく大きな塔だな・・・」


村の入り口に立って、シルバーは改めて塔の巨大さに驚いています。

その様子を見ていた村のおじさんは、シルバーに声を掛けて来ました。


「昔は塔を見に、多くの観光客がこの村を訪れたものだ。

私らは平和に慣れ、いつしかこの塔本来の意味を忘れてしまっていたのかもしれない」


そう話す村人を見て、シルバーは驚きました。

振り返ったシルバーの目に映ったのは、見るも無残に破壊された村でした。


「うわっ!こりゃひでえな!!」


フォークはガレキのようになった村の建物を見て、眉をひそめました。


「ひど~い!どうしてこんなひどい事を・・・・」


ソフィアは村の中で茫然と立ち尽くしている村人を見て、泣きそうな顔をしています。

フレディアも、とても悲しい顔で辺りを見回していました。



シルバー達はこの村に一週間滞在し、村の復興を手伝いました。

壊された建物のガレキの撤去や、近くの森から切り出した木材の運搬など、この村には年寄りが多く、力仕事が出来ないため、村の立て直しが全く進んでいなかったのです。

シルバーはテキパキとガレキの撤去や木材の運搬をこなします。

手先の器用なフォークは、見事な腕前で家の修理をしています。

フレディアとソフィアは、怪我をした村人の治療や、炊き出しの用意を一生懸命頑張っています。


そしてようやく村の復旧作業も一段落したため、シルバー達が旅立つ事を告げると、前日に村人たちが食べ物を持ち合い、小さな宴を開いてくれました。

そしてその席で、塔にまつわる秘密を打ち明けてくれたのです。


「カプレの民は、エルサラームを封印した偉大なる賢者の流れをくみし一族。

3000年の長き間、厳しい戒律の元、塔を守り続けてきたのじゃ・・・」


村長はそう言うと、カプレの塔の役割について話してくれました。


「カプレの塔には“聖なる石”が祭られていました。

村を襲った兵は塔を破壊し、その石を持ち去ってしまったのです。

そして塔が破壊されてからしばらくの後、エルサラームの宮殿が現れました」


村長の話では、その聖なる石を祭るために巨大な塔が建造されたと言うのです。

またその聖なる石については、お婆さんが興味深い話をしてくれました。


「どこかの神殿に、失った聖なる石と同じ石が奉納されておるそうじゃが・・・。

長老様が亡くなったいま、それがどこにあるのか知る者はおりませぬ・・・」


「神殿か・・・・」


フォークは腕を組んで考え込んでいます。


もう一人の若い娘は、これもシルバー達にとっては、とても重要な話をしてくれました。


「長い間平和が続き、私たちはいつしか戦う術を忘れてしまったのです。

塔を守るために伝えられた究極の魔法すら・・・」


「究極の魔法って・・・」


シルバーは興味津々に訊ねました。


「その魔法は、どこかの神殿に奉納されたと聞きます。しかし、それがどこなのか分かりません」


「う~~ん・・・。それもどこかの神殿かぁ・・・。神殿と言えば、プクプクの町の近くの太陽の神殿が怪しいんだけどなぁ・・・」


さらに考え込むフォークですが、今度はフレディアが喜ぶ情報が飛び出してきました。


「はるか昔“黄金の結晶石”という物があったそうですが、何者かに砕かれ、5つのカケラになったそうです」


そして、そのカケラの一つがカプレの塔に奉納されている・・・と言うのでした。


フレディアの瞳がキラキラと輝いています。

明日の旅の予定に、カプレの塔の探検が確定しました。


翌朝、シルバー達はさっそくカプレの塔へ行ってみました。

カプレの塔は、四階からなる巨大な塔です。

内部は簡単に最上階まで上がれないよう、迷路のような作りになっています。

昔は無断で侵入する者を撃退するため、トラップなんかも張り巡らせていたそうです。

それが長い平和の時代が続いたため、いつしか村の観光の目玉として利用されるようになり、トラップはすべて解除され、誰もが簡単に上まで登れるようになっていました。

それがあだとなり、いまは無残な姿へと変貌してしまったのです。


その塔を、シルバー達は慎重に登って行きます。

爆弾を使用して激しく破壊されているため、床に亀裂や穴が開き、気をつけて歩かないと床を踏み抜いて下に転落してしまう危険がありました。

それに廃墟と化してしまった塔に魔物もたくさん住み着いているので、用心して進まないと大けがをしてしまいます。


迷路になった塔を迷いながら、ようやく最上階にたどり着いたシルバー達は、そこに複雑な文字で描かれた魔法陣を目にしました。

魔法陣の中央には、村人の言う聖なる石がはめ込まれていたのでしょう。

ガレキと化した今では、その痕跡すらうかがう事が出来ません。


「これはひどいな・・・。もう元に戻すことは出来ないのかな・・・」


シルバーは破壊された魔法陣を見て、残念そうにつぶやきました。


「村長の話では、古文書を調べれば魔法陣はもう一度描けるらしいけれど、聖なる石が無ければその役目を果たせないって言っていたわ・・・」


「聖なる石を奉納した神殿って、一体どこにあるのかな?」


ソフィアの言葉に、フレディアが疑問を口にします。


「オレ、太陽の神殿が怪しいと思うんだけどな・・・。あの湖の水を何とかしねえと行けねえからなぁ・・・」


腕を組んで難しい顔をしたフォークが答えます。


「ま、それは解決策が見つかるまで保留だな。で、いまは黄金の結晶石のカケラを捜すのが先決なんだけど・・・」


シルバーが言葉を濁したのは、ここへ来るまで各階を隈なく捜し歩いたのですが見つける事が出来なかったからです。

最上階に行けば手掛かりが掴めると思っていたのですが、どうやら当てが外れたみたいです。


「聖なる石と一緒に、持って行かれたのかなぁ~」


フレディが残念そうにそうつぶやいたとき、フォークが何かを見つけたようです。

見るとフォークは、穴の開いた床を一生懸命覗き込んでいます。


「あったぜ!下の階の隅っこにあるのがそうだ!!」


見ると、周りを爆弾で吹き飛ばされ、わずかに残った床の上に、キラキラと輝く黄色い石が見えます。

フォークはロープを使って下の階に降り、黄色い結晶石のカケラを拾いました。

そして迷いの森で見つけた黄色い結晶石のカケラと、このカケラを照合してみます。

すると、二つのカケラの切断された面がピタリと合いました。


「やったぜ!これは間違いなく黄金の結晶石のカケラだぜ!!」


フォークはそう言いながら、フレディアにカケラを渡しました。


「やったー!フォークありがとう!!」


フレディアは大喜びで、カケラを大切に袋にしまいました。


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