表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/39

第十八話 クレストとエリーゼ

*それから数週間後


「お頭!大変です!! この前のヤツが来ました!!」


外を見張っていた仲間が、慌ててアジトへ報告しに来ました。


「何だと! やはり攻めてきやがったか!?それで、敵は何人で攻めてきたんだ!!」


「え?! そ、それが・・・。あの・・・一人で・・・」


「なに?! たった一人で?」


「あ!き、きやしたよ、お頭!!」


クレストはたった一人で、ズカズカとアジトに入って来ます。


「久しぶりだな、クルーガ!」


(こ、こいつ、いったい何を考えているんだ・・・。自分の身分を分かっているのか?)


「今日はお前に相談があって来た」


「なに?俺に相談?!あんた・・・。俺が何者か知っているんだろうな?」


「勿論だ! これはお前にしか出来ない相談だ」


「・・・・・・・・・・・・」


驚くクルーガを無視して、クレストは話を進めます。


「クルーガ、この国を支えている財源は何だか知っているか?」


「知らねえな。 俺は政治には興味がないんでね・・・」


「それは、遺跡から出土する財宝やレアメタルだ。お前も知っているように、この国は遺跡の宝庫だ。穴を掘れば、遺跡に当たるとさえ言われている」


「そして、この国から出土した金、銀、財宝はすべて国が管理し、それら財宝の売買には国の許可と税金がかかるようになっている」


「いったい、何が言いてえんだ?」


「ところが、実際に国を通して売買される財宝は、出土した財宝の一割にも満たない・・・。

それは何故だ?」


「そんなのは当たり前だ!危険な目をして手に入れたお宝だぜ!

誰だって高く売りてえに決まっているぜ」


「なるほど、それで国を通さず闇で取り引きしているんだな?」


「そうだ!よく知っているじゃねえか。それで、一体俺に何を相談してえんだ?」


「うん、お前にこの国の盗賊どもをまとめて欲しいんだ!」


「な、なに?! この俺に盗賊どもをまとめろだと?」


「そうだ! そして、遺跡から盗み出した財宝を、正規のルートを通して売買するようにして欲しいんだ」


「俺に盗賊どもを統一させ、闇の組織を潰して財宝の流出を防ごうってんだな・・・」


「そうだ!」


「断る! 俺は国の犬になんかならねえ!!」


「なんだ・・・。 クルーガっていう奴は、度胸のすわった豪傑だと聞いていたのに・・・。

案外弱虫なんだな」


「な、なに!!どうして俺が弱虫なんだ!!」


「盗賊どもを一つにまとめ上げる自信がないんだろ?」


「人をまとめるのは、力だけじゃ無理だ!この祠で暮らす人々を助けているお前なら、何とかしてくれると思ったのだが・・・」


「ふん!俺には関係ないね!!」


「お前はこの祠で暮らす人々を助けたいんじゃなかったのか?

もし、お前が縛り首にでもなってみろ。ここの人たちはどうなるんだ?」


「ぐっ!そ、そりゃそうだが・・・。だが、俺が盗賊をまとめるのと何の関係があるんだ?」


「お前が盗賊をまとめあげ、闇のルートを潰せば国がうるおう。

今の状況で国を動かすのは難しいけど、税金が増えれば、そこから一部を削る事は可能だ!」


「そうすれば、この街に病院や、親のいない子供たちのための施設を建設する事も出来るんだ」


「本当にそんな事が出来るんだろうな!?

おめえら貴族は、いつも自分たちの事しか考えていねえ!信用ならねえ!!」


「クルーガ、私を信じろ!同じ人間でありながら、貧しいがゆえに苦しめられている人たちを、このままにしていてよいのか?」


「同じ人間・・・。あんた、本気でそう思っているのか?」


「・・・・・・・」


考え込んでいるクルーガに、プーさんが話しかけました。


「お頭。この人を信じてみてもいいんじゃ・・・。

でなけりゃ、あの時オレ達はとっくに縛り首になっていたはずだ」


「・・・・・・・・・・・・・」


長い時間沈黙を守っていたクルーガが、ついに決心しました。


「ちっ!どうせ一度は捨てた命だ・・・。あんたに預けるぜ、俺の命」


「そうか!やってくれるんだな!ありがとう、クルーガ!これであの人たちを助けることが出来る!!」


「それじゃ、また来るよ」


そう言い残し、クレストはアジトを出て行きました。


「ふっ、ふっ、ふっ・・・。変わった人だぜ・・・。この俺に盗賊をまとめ上げろ・・・か・・・」


「聞いたか!おめえら!!これから俺は世界一の大どろぼうになる!!文句はねえな!!」


「おおーーーーーーーっ!!!」


アジトにいた仲間たちは、大声で歓声を上げました。



一方アジトを出て禁断の祠を歩くクレストは、キョロキョロと辺りを見回し、何故か落ち着きがありません。どうやら何かを捜しているようです。

そして中ごろまで来た時に、一人の美しい娘に目が止まりました。


「あっ!キ、キミはあの時の・・・」


「あっ、あなた様はあの時の・・・」


クレストが捜していたのは、エリーゼでした。


「えっと・・・。たしかエリーゼさん・・・だったね?」


「はい・・・」


「あーっ!また来たなー!! 今度は何しに来たんだ!!」


そう言いながら、急いでこちらへ駆けて来る男の子がいました。


「やあ!キミはエリーゼさんのナイト君。

は、は、は・・・。相変わらずキミは怖いな・・・」


「セイバー、このお方は、この国の王子様なのよ。

失礼な事をしてはいけません」


「私の名はクレスト。エリーゼさんと少し話をしたいんだが・・・ダメかな?」


クレストは満面の笑みでセイバーにお願いしています。


「・・・・・・。少しだけなら・・・いいや!」


「コノハ!遊びに行くぞ!!」


「あ!お兄ちゃん、待ってよ~!」


そう言うと、セイバーは妹のコノハと走り去って行きました。


「あの・・・。この前はありがとうございました」


「あ! い、いや・・・。私の方こそ、驚かせてしまったね」


「あの・・・。今日は・・・」


「あぁ、今日はクルーガにちょっと話があってね」


「あの・・・。クルーガさんや、ここの人たちはどうなるのでしょうか?」


エリーゼは不安そうな目でクレストに訊ねました。

そんなエリーゼに、クレストは笑顔で答えます。


「心配しなくてもいいよ。

みんなが安心して暮らせるように、何とか努力してみるよ」


「まぁ!それは本当ですか?」


「本当だとも! キミは優しいんだね」


「え? あ! も、申し訳ありません。

王子様に対してわたし・・・。余計な事をお聞きしたりして・・・」


「いや、そんなこと気にしなくてもいいよ。

それより、私はこれから時々ここへ来ることになる」


「あの・・・。その時、できたらキミに色々と相談に乗って欲しいんだけど・・・。

ダメかな?」


「まぁ、わたしに?」



***




「つまり・・・。俺たちが今こうしていられるのも、おめえの親父さんと、お袋さんのおかげって訳だ」


「よし! ではこれで会議を終わる!各自それぞれの役目に付け!!」


解散となりアジトを出て行く際、セイバーとコノハがシルバーに声を掛けました。


「キミを助ける事が出来て良かったよ!

もしあの時キミを死なせていたら、エリーゼお姉ちゃんに会わせる顔がないからな・・・」


「ねえ、エリーゼお姉ちゃん元気にしてる?もう一度会いたいな~」


コノハは懐かしそうにそう言うと、アジトを出て行きました。


「セント・ワイヤーの作業が終われば連絡する。北のゲートは頼んだぜ」


最後にアジトを出たクルーガは、そう言ってシルバーの肩を叩きました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ