第十六話 エリーゼの手紙
シルバーは我に戻ると、お頭に説明しました。
「じ、実は・・・。困った事が出来たら、クルーガって人に渡すよう、母ちゃんから手紙を預かったんだけど・・・・」
「何かの間違いだったようだ・・・」
「何だと? この俺に手紙だー?!ちょっと見せてみろ!!」
シルバーはたぶん人違いだろうと言いながら、母からの手紙を渡しました。
「どれ、どれ・・・。む、む・・・・」
「わ、わ、わ!! こ、これは・・・」
「お、おい、どうしたんだ?お頭があんな驚いた顔をするのを今まで見た事ないぞ・・・」
手紙を読んでいるお頭の様子に、四天王たちも驚いています。
そして手紙を読み終わると、クルーガはシルバーの顔をマジマジと見て言いました。
「お、おめえ・・・。エリーゼちゃんの息子かよ?!」
「えーーーーっ!!?」
ミスター・プー、セイバー、コノハの四天王たちは、一斉に飛び上がってシルバーを見ました。
「えっ、えっ? なんだ、なんだ!どうしたんだ、みんな?!!」
フォークは泣く子も黙るサンドフォックスのお頭と、最強の四天王の面々が飛び上がって驚いている様を見て、逆にびっくり仰天です。
「エリーゼお姉ちゃんの・・・」
「息子さん・・・だったのか!?」
「こ、こりゃ、たまげた!!」
コノハ、セイバー、プーさんの三人も、口々に驚きの言葉を漏らしています。
「え?え?え? な、何でみんなオレの母ちゃんを知っているんだ?
ま、まさか・・・・。 オ、オレの母ちゃん、むかし盗賊をやっていたのか?!」
シルバーはもう、意味が分からず動揺しまくっています。
そんなシルバーに、クルーガがさらに驚くことを告げました。
「するってーと・・・。シルバー!おめえは、この国の王子の息子ってわけだ!!」
「え~~~っ?!」
「シルバーが・・・」
「この国の王子の息子?!」
「キャハハ!!」
ソフィア、フォーク、フレディアもビックリです。
「え?え?え? み、みんな何いってんだ??」
シルバーの頭は完全にパニックになっています。
「おめえ・・・。な~んにも知らねえみたいだな・・・。お気楽なヤローだぜ」
「おめえの親父・・・。つまりクレストさんは、この国の王様になる人なんだよ!!」
クルーガは、ハッキリとシルバーに言いました。
「えーっ?! そ、そんな・・・。 父ちゃんが・・・」
「そして俺たちは、その人を助けるために、こうして集まっているんだ!!」
「な、何だって!?
父ちゃんを助ける?! す、すると父ちゃんはいま!!」
「エルサラーム宮殿の中だ!バジルのクソ野郎に捕まってな!!」
クルーガが吐き捨てるようにそう言った時、突然一人の美しい女性がクルーガの前に音もなく現れました。
「お頭! 陽炎、ただいま帰りました」
「おう!ごくろうだった!!
で、エルサラームの様子はどうだった?」
「はい! やはり捕らえられた者たちは、宮殿の地下一階に閉じ込められているようです」
「わ、わ、わ・・・。いったいどこから現れたんだ? あの人?!」
「サンドフォックス四天王の一人、陽炎のアネゴだよ。
忍びの達人で、あの人に忍び込めねえ所はねえんだぜ!」
驚くシルバー達に、フォークが説明します。
そして陽炎の報告を受けたお頭は、この会議の本題を話し始めました。
「四天王も全員そろったようだな。
それでは今から、エルサラームに忍び込む方法を説明する・・」
「みんなも知っているように、エルサラーム宮殿の扉は、あの日以来堅く閉ざされちまった。あの扉は、内側からでないとか開けられねえ仕組みになっている。
フォーク、おめえならどうやってあの宮殿に忍び込む?」
「そりゃ、扉が開かねえんじゃ、宮殿の壁をよじ登って・・・」
「あの宮殿の壁の高さは20メートル以上もあるのよ?
そんな事をしていたら、あっと言う間に敵に見つかってしまうわ」
「いくらオレ達でも、無防備の状態を襲われたんじゃ、勝ち目はねえ!」
コノハとセイバーがフォークの意見を指摘します。
「じゃあ、どうやって・・・」
「セイバーたちの言う通り、外から忍び込むのは無理だ!
だから、俺たちは地下から忍び込む」
「え?ち、地下から?」
「そうだ! おめえ達は、エルサラーム宮殿の北にある、セント・ワイヤーの遺跡を知っているな?あの遺跡の地下二階は、南に向かって伸びている」
「なるほど・・・。
だが、幻の宮殿までたどり着くには、まだ相当距離があるのでは?」
プーさんがお頭に質問しました。
「一年前、俺はあの遺跡に入り、隠された扉を発見した!緑の結晶石の扉だ!!」
「俺の勘じゃ、その扉の向こうにある部屋は、幻の宮殿の近くまで通じているに違いねえ」
「あ!それでオレに緑の結晶石を・・・」
フォークは、初めて自分の任務の目的を知りました。
「エルサラーム宮殿の壁にぶち当たるまで、足りねえ距離は手下50人を使って掘り進む!!そして、エルサラームの地下一階の壁にぶち当たった時は、爆弾で壁を破壊し、一気に攻め込むぜ!!」
クルーガは作戦のすべてを説明しました。
「なんか、すごい事になってきたな・・・」
シルバーも作戦を聞いて驚いています。
「お兄ちゃん、ワクワクするね!」
フレディアは、さっきからワクワクしっぱなしです。
「なんだか、ここの人たちってすごい・・・」
ソフィアはさっきから驚きの連続でした。
「それでは、俺と一緒にセント・ワイヤーへ潜るメンバーを発表する!」
クルーガは、声を上げて読み上げます。
「四天王の一人、戦闘隊長 セイバー」
「四天王の一人、双剣の舞姫 コノハ」
「同じく四天王の一人、幻術使いのプー」
「以上三名だ!明日の朝、早速仕事に取り掛かるぜ!!」
「はっ!!」
全員が一斉に返事をします。
だけど、名前を呼ばれていないフォークはどうしていいのか分からず、お頭に訊ねました。
「あ、あの~、お頭・・・。オレは一体何をすればいいんでしょうか?」
「フォーク!てめえは今回二つの結晶石を持ち帰った。こりやあ大手柄だぜ!!」
「その褒美と言っちゃ何だか・・・。おめえには、エルサラームの宮殿へ忍び込む時の一番手をやってもらう!」
「もちろん、おめえの仲間たちとな!!」
「うわ!やったぜ!!」
一番槍の名誉をもらい、しかもシルバー達と一緒という事で、フォークは大喜びです。
「準備が整うまでには、まだ少し時間がかかる。おめえはそれまで待機していろ!」
「それからシルバー!おめえは一度ブランデールの城に行ってみてはどうだ?」
「今回の仕事は、かなりきつい!国王に協力しろとは言わねえが、邪魔されると面倒だ。
何しろ俺たちは嫌われ者だからな・・・」
「おめえには、俺たちと国との仲を取り持ってもらいてえ。無理にとは言わねえがな・・・」
クルーガは、シルバーにそう提案しました。
「分かった!父ちゃん達を助けるためなら、オレは何でもするよ!」
「よし! それでは、ブランデールとパジャーム砂漠を繋ぐ。北のゲートを開放するよう交渉してくれ。あのルートが使えねえと、何かと不便なんでな・・・」
「オレも一緒に行くぜ!」
フォークはまたシルバー達と旅が出来るので、大はりきりです。
「陽炎! クレスト王子の息子が今から城に向かうと、大臣に連絡してくれ!」
「はっ!承知しました!」
お頭の命令を受け、陽炎が消えました・・・。
その様子をみて、今度はシルバーが遠慮がちにクルーガへ声を掛けます。
「あの~・・・。一つ聞いてもいいかな・・・」
シルバーはどうしても気になる事があるようです。
「何だ!言ってみろ!!」
「盗賊のあんた達が、どうしてオレの父ちゃんを助けるんだい?
これって、すごく危険な仕事だろ?下手をすると、自分の命が危ない・・・・」
「ガッ、ハッ、ハッ、ハッ・・・・・。
俺は自分の命が惜しいなどとは思っちゃいねえ」
「一度は落とした命だからな・・・。
だが、その命を拾ってくれたのが、お前の父親のクレストさんだ!」
クルーガは豪快に笑いながら、そう答えました。
「お頭だけじゃないわ・・・。
あなたの母親のエリーゼさんは、私とセイバーの命の恩人でもあるのよ!?」
コノハはシルバーに向かって、笑顔で答えます。
「え?! 母ちゃんが?」
とまどうシルバーに、クルーガ達はその訳を話してくれました。
そう・・・。
あれはもう、20年も前の事・・・・。




