表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/39

第十三話 パジャームへ向けて出発!

翌朝、シルバー達は旅の支度を整えると、宿屋を出ました。

橋が直ってパジャームへ行ける様になったのです。

でもその前に、シルバー達にはやり残している事があるようです。


「シルバー!ツルピンの野郎を、ギャフンと言わせてやろうぜ!!」


フォークは指をパキパキと鳴らして、ひと暴れする準備をしています。


「もう!絶対に許さないんだから!!」


ソフィアも、タルコスの遺跡でひどい目に遭ったことを怒っています。


「結晶石も、まだもらっていないしね!」


なぜか結晶石にこだわるフレディア。


「よし、ちょっと挨拶しに行くか!」


もちろん、シルバーもはなからそのつもりです。

文句を言って、青い結晶石を返してもらうつもりでいました。

ところが店に着くと、テント小屋の中はもぬけの殻で、誰も居ません。


「ちっ!ツルピンの野郎、トンズラしやがったか!?」


フォークは悔しそうに、テーブルを叩いています。

だけどおかしなことに、テーブルの上には売り物のガラクタが置かれたままで、逃げ出した形跡がありません。

不審に思ったシルバーは、テント小屋のすぐ近くに住む、あの二人の幼い姉弟に話を聞きました。


「ねえ、あの小屋の人たち、どこに行ったか知らないかい?」


「あの小屋のおじちゃんたち、どこにも行っていないよ。

ず~っとあの小屋の中にいるよ」


弟の男の子が言いました。

お姉ちゃんの方も、うんうんと頷いています。


「あの小屋の人たち、朝からあの中に入ったまま・・・。

何をしているのかちら?」


それを聞いたシルバーとフォークは顔を見合わせるとニヤッと笑い、もう一度小屋の中に入って行きました。そして、そこら中に点火した爆弾をバラ巻きます。


ドカーン!!

ドカーン!!

ドカーン!!


爆風で大きなテーブルも、地面の土も吹き飛びました。

そしてテーブルの下に穴を掘って隠れていたツルピンたちも吹き飛ばされて、シルバー達の前に姿を現します。


「う~~ん・・・・。こ、小屋の中で爆弾使うか?ふつう・・・」


「あたたた・・・。ま、参りました・・・」


「いでででで・・・・。 ご、ごめんなさい。結晶石をお返しします・・・」


チョボ、ガド、ツルピンの三人は、ひっくり返って目を回しています。


観念したツルピンは、もう二度と悪い事はしないと約束し、青い結晶石を差し出したので、フォークは彼らを許してやる事にしました。


テント小屋から出ると、幼い姉弟が慌ててこちらへ走り寄って来ました。

そしてお姉ちゃんがシルバーに訊ねています。


「いま、あの小屋からしゅごい大きな音がしたけど・・・」


そう訊ねられたシルバーは、ついうっかり口を滑らせ、いらぬ事を聞いてしまいました。


「えっ?今度は大丈夫かって?ま!レディに対して失礼ね!!」


女の子は顔を真っ赤にしてプリプリ怒っています。


それを聞いた弟が、またこっそりフレディアに何か言おうとしましたが、それをお姉ちゃんに見つかったため、慌てて逃げ出しました。そしてそれを追いかけるお姉ちゃん。

この姉弟の追いかけっこは、しばらく続きそうです。



***



タルコスの遺跡を過ぎて南に進むと、地震で壊れた橋へたどり着きます。

まだ石畳のあちこちにヒビが残っていますが、強度的には問題はないようです。

その橋を越えて三日ほど歩くと、やがて道は深い森へと入って行きました。


この森は“迷いの森”と言われる旅の難所で、うっかり道を反れて迷ってしまうと、元来た道へは戻れなくなってしまうという、恐ろしい森でした。

噂では静まり返った夜に木々が動き出し、道が変わってしまうからだと言われていますが、まだ木々が動いている姿を見た人はいません。

そもそも森は魔物たちの格好の隠れ家でもあるため、そういった噂が流れるのかもしれません。ともかく、森は恐ろしい危険な場所の一つでした。


いまシルバーたちは、二日前からその広大な森を進んでいます。そしてもう少しで森を抜けるという所まで進んだ時でした。

一羽の美しい小鳥が空から舞い降り、フレディアの頭にチョンと止まります。そして彼女の耳元でしばらく美しい声でさえずると、またパタパタとどこかへ飛び去って行きました。

傍から見ると、のどかで微笑ましい光景ですが、そう思うのは第三者達だけで、当のフレディアはそれどころではないようです。その小鳥を見送ると・・・。


「わたし、ちょっと用事が出来たから行ってきま~す!」


そう言って急いで駈け出そうとしたため、慌ててシルバーが声をかけました。


「ちょっと、ちょっと、フレディア!慌ててどこへ行くんだよ?!」


「そうだよフレディアちゃん、一人で行くと迷子になっちゃうぜ!!」


「よ、用事ってなに?」


あまりに突然なので、三人が口をそろえてフレディアを止めました。


「あのね、さっきの小鳥がこの先にピカピカ光るきれいな石があるって、教えてくれたの!

だからちょっと行ってくるね!」


そう言うと、一目散に駈けて行きました。


「え~~~っ!!」


フレディアの姿はあっと言う間に深い森の中へ消えて行きます。

一瞬どうするか迷いましたが、ヘタに追いかけると全員が迷子になってしまいそうなので、しばらく様子を見ることにしました。


するとフレディアはすぐに戻ってきて、嬉しそうに見つけた石を見せてくれました。

それは結晶石より少し小さな黄色い石で、ピカピカと光り輝いています。


「見て、見て、フォーク!これってなんの石かなぁ・・・」


フレディアの手から石を受け取ったフォークは、いろいろと向きを変えながら、マジマジと眺めています。

そしてちょっと驚いた様子でフレディアに答えました。


「これ・・・。たぶん結晶石のカケラだと思う!

黄色い結晶石なんて見た事も聞いた事もないから、きっとすごくレアな結晶石だぜ!

フレディアちゃん、これ大切に取っておきなよ!!」


「わーーい!やったーー!!」


フレディアは大喜びで、大切に袋の中へしまいました。


森を抜け、大きな湖を回り込むように南東へ進むと、目的地のパジャームの街はもうすぐです。

目印となる分岐点の道しるべには、ここから東・・・パジャームの街。

ここから南・・・カプレの村と書かれています。

シルバー達は意気揚々と東の道を進みました。



*砂漠の街パジャーム



「やぁ!やっとパジャームに到着したぜ!

短い間だったけど、いろいろ世話になったな!」


「お前たちのおかげで、緑の結晶石も、青い結晶石も手に入れる事ができた。

礼を言うよ、ありがとう!!」


パジャームの街の入り口に立ち、フォークが嬉しそうに言いました。


「いや、礼を言うのはオレ達の方さ。

ここまで来られたのは、フォーク、キミのおかげだよ!」


シルバーがフォークと握手し、満面の笑みで答えます。


「ありがとう、フォーク。

でも、これでお別れだなんて、何だか寂しいわ・・・」


ソフィアが残念そうな顔で答えます。


「あぁ、オレもお前たちと別れるのはちょっと寂しいけどよ・・・。

オレは盗賊、お前たちとは住む世界が違うしな・・・」


フォークがそう返事をすると、フレディアが寂しそうな顔で言いました。


「フォーク、ここでお別れなの?つまんないな・・・。

せっかくお友達になれたのに・・・」


「でも、また一緒に遊ぼうね!!」


最後は笑顔でフレディアらしくお別れを言いました。


「友達? 仲間じゃなくて友達か・・・。は、は、は・・・。なんかいい響きだな~。

オレには縁のない言葉だと思っていたよ。なんか嬉しいぜ!」


「シルバー! 早く父ちゃんが見つかるといいな!」


「あぁ、きっと見つけてみせるさ!!」


「ソフィア! 親子の事は、親のいねえオレには分からねえけどよ。

ケンカなんてせずに、仲良くした方がいいと思うぜ」


「フォーク・・・。 ありがとうフォーク!」


「フレディアちゃん。

は、は、は・・・。また一緒に旅が出来たらいいな!」


「行こう、行こう! また一緒に旅をしょうよ!!」


「じゃあ!みんな達者でな! あばよ!!」


そう言うと、フォークは走り去って行きました。


「フォーク行っちゃったね・・・」


フレディアがポッンとつぶやきます・・・。


「にぎやかなアイツがいなくなると、チョット寂しいな・・・。

さてと、じゃあ・・・。 ソフィアのパパを捜さなくちゃな!」


「うん・・・」


シルバー達は旅の目的の一つを果たすため、パジャームの街へ入りました。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ