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第十二話 タルコスの遺跡

朝食を済ませると、シルバー達は西にある“タルコスの遺跡”へ向かいました。

シルバーの住むウオーターフォールと、プクプクの町の間を縦断する大きな山脈を右手に見ながら西へ進むと、目的の遺跡にたどり着くのですが、実はそこへ行くまでの間に、とても気になる神殿がありました。

山の麓に見える“太陽の神殿”と呼ばれる美しい神殿ですが、その前にある湖に阻まれ、そこへは行く事は出来ません。何故ならその湖には呪いがかけられ、泳いで渡る事も船を浮かべる事も出来ないからです。

きっと中には貴重なお宝があるに違いないのですが、残念ながら今は指をくわえて見ているしかありません。


そしてようやく目的のタルコスの遺跡へ到着したのですが、まさかあんな恐ろしい出来事が起こるとは、この時シルバー達は夢にも思いませんでした・・・・。



***



薄暗い宮殿の中で、大きく開かれた扉から稲光の様な青白い光が漏れ出ています。

その扉の両脇には、合わせると一つの巨大な魔人の姿になる像が真っ二つに分断されて立っていました。闇の扉を封印していた魔人像です。

その扉の前で、灰色のローブを纏った魔人が、一人の人間を見据えていました。


「グッ、フッ、フッ・・・・。

では、貴様がこの宮殿の封印を解いたと言うのか」


「そ、そうだ! だからこのオレに感謝するがいい!!」


声高にそう叫ぶ男は、青みがかった銀色の髪の男で、貴族の身なりをしています。

細面の美男子ですが、何故かとても冷たい目をしていました。


「目的はなんだ!いや、聞かずとも分かっておるぞ!」


「この宮殿の宝・・・・。

“命のクリスタル”を狙って来たのであろう!!」


「い、いや、違う!オレが欲しいのは、この国の王位だ!!

この宮殿にはそれを叶える力があると聞いて復活させたのだ!」


「では、この宮殿から紫の結晶石を盗み出したのは、貴様ではないと言うのだな?」


「そうだ!」


「まぁよい。 理由は何であれ、我らはこうして再び復活できたのだ・・・」


「我らはまもなく、この世界を支配するであろう。

封印から解き放った恩賞として、貴様にはこの国を与えてやろう」


そう言うと、魔人は両脇に控えていた二体の魔物に命令を下します。


「おい!この宮殿から青と紫の結晶石を盗み出した者を捜すのだ!!」


命令を受けた魔物の一体は、“闇の扉の番人”と呼ばれる魔物で、恐ろしい野獣の顔に、大きな角を二本生やした大柄な魔物で、背中にはコウモリの様な黒い翼を生やしています。


もう一体は“死の道化師”と呼ばれる魔物で、不気味な笑い顔の仮面を被った恐ろしい魔物で、黒いローブを纏い、手には巨大なカマを持っています。


その二体の魔物がいま、謎の魔人の命令を受けて姿を消しました・・・。

そしてその恐ろしい光景を見ていた男は、何やら難しい顔で考え込んでいます。


「命のクリスタルだと? それは一体何なんだ?!

奴はそれが目的でオレに近づいたのか?」


「クソ!あの野郎・・・・。一体何を企んでいやがったんだ・・・」



***



タルコスの遺跡に入ったシルバー達は、ツルピンから奪ったカギを使い、宝箱のある部屋に入っていました。


「おっ!あった、あった・・・。この宝箱だな・・・」


フォークは小さな部屋の真ん中に置かれた宝箱を開けました。

ところが宝箱の中身は空っぽです。いや、よく見ると小さな紙切れが入っていました。


「なんだ、こりゃ?」


見ると紙切れには、「や~い、フォークのバーカ!」と書かれています。


「あ、あの野郎!!」


フォークがそう叫んだ瞬間、立っていた地面がガラガラと音を立てて崩れ落ち、シルバー達は遺跡の地下へ落っこちてしまいました。



「あたたた・・・」


「くそっ!ツルピンの野郎!! だましやがったな~!!もう許さねえ!!」


フォークは起き上がると、紙切れを地面に叩きつけて激怒しています。


「どうやら合鍵を使って、昨日のうちに罠を仕掛けたみたいだな・・・」


打ち付けた腰をさすりながら、シルバーは上に空いた大きな穴を見上げました。


このタルコスの遺跡は、地下四階まである深い遺跡で、どうやらツルピンはその構造を熟知した上で罠を仕掛けたようです。

結晶石の巧妙な偽造といい、ツルピンと言う男はなかなか器用な男のようですね。


そういう訳で、シルバー達は出口を探すため、暗い遺跡の中を丸一日さまよい歩く事になります。そしてようやく出口にたどり着いた時には、もうみんなフラフラの状態になっていました。


そんな時に、あの恐ろしい出来事が起こったのです・・・。


何者かが遺跡の入り口から入って来ました。

外の明るい光でシルエットとなった姿ですが、明らかに異形であり、一目でそれが人間ではない事が分かります。

その正体は闇の扉の番人と呼ばれる、あの恐ろしい魔物でした。

シルバー達に戦慄が走ります。


闇の扉の番人は、シルバー達が身構える間もなく襲ってきました。

恐ろしい強さで、シルバーたちの持つ貧弱な武器や防具では全く歯が立ちません。

フォークでさえも、魔物に傷一つ負わすことが出来ずに倒されてしまいました。

ソフィアが倒れ、そしてシルバーも・・・。

唯一残ったフレディアは、倒れた仲間たちの回復を行いながら戦うため、なかなか攻撃に転ずる事が出来ずにいます。

このまま時間が経てば全滅すると思われたその時、一人の男が現れました。


「待て、化け物!! オレが相手になってやる!!」


その男は鉄の爪を装備した武闘家で、素早い動きで魔物に襲い掛かります。

壮絶な戦いが始まりました。フレディアも仲間の回復を維持しながら、アークという攻撃魔法を使って加勢します。


そしてついに決着のつかないまま、その魔物は。


「グフフ・・・・。イズレ、マタアオウ・・・」


そう言うと消え去って行きました。



***



*宿屋の二階


「う~ん・・・」


「あれ?ここは・・・」


ベッドに寝かされていたシルバーが、意識を取り戻しました。


「あ!気がついたのねシルバー! だいじょうぶ?」


ソフィアが心配そうに、シルバーの顔を覗き込んでいます。


「あれ、他のみんなは?」


「みんな大丈夫よ。助けてくれた人と、下の部屋でお話ししているわ」


「あの人、フォークの仲間なんだって!」


「そ、そうか・・・。 みんな無事だったんだな・・・。よかった・・・」


そう言うと、シルバーはソフィアに背を向けて布団を被ってしまいました。


「どうかしたの、シルバー。まだ体の具合が悪いの?」


「い、いや・・・・」


「は、は・・・・。でも、最悪だよな・・・」


「え?何が最悪なの?」


ソフィアは驚いた顔でシルバーに訊ねました。


「だって・・・。

キミを守ってやる!って、カッコいい事言っておきながら、オレ、どうする事も出来なかったよ・・・」


「あの人が来てくれなかったら、今ごろオレ達は・・・」


「あ、で、でも仕方がないわ!

あの人も言っていたけど、地震の日以来、見た事もない恐ろしい魔物が、あちこちに出没しているんだって!」


「・・・・・・・・」


「オレにもっと力があれば、みんなを助ける事が出来たのに・・・」


ソフィアはシルバーを元気づけようとしますが、シルバーは彼女を助けられなかった事が、よほどショックだったようです。


「シルバー・・・。あなたは一生懸命がんばっているわ!

わたしシルバーに感謝しているのよ!」


「それに・・・。もしあなたと知り合えなかったら、わたしきっとここまで一人で来れなかったと思う・・・」


「シルバー!わたし・・・。あなたと知り合えてすごく良かったと思っているの」


「えっ?!」


シルバーはベッドから起き出すと、ソフィアの顔を見ました。


「だって、パパの仕事の関係で、世界各地を転々としていたから、今まで友達が出来なかったの・・・」


「いつも一人で遊んでいたし、ママが病気であまり心配かけるといけないから・・・。

悩みや、悲しい思いはいつも心の中にしまっていたわ・・・。

だから・・・。自分の悩みや思いを人に打ち明ける事もなかったし、誰からも打ち明けられる事も無かった」


「みんなそうだと思っていたの」


「辛い事や、悲しい事は口に出してはいけないんだと・・・。

でも、シルバーは、わたしに何でも話してくれるわ!わたしに心の中を見せてくれる。

だから、すごく嬉しいの」


「ソフィア・・・・」


「わ、わたし・・・・。

だから、わたし・・・・。シルバーのこと・・・・」


「ソフィア・・・・」


「シルバー・・・」




ダダダダダダ・・・バタン!!


「ただいまーーーー!!!」



あぁ!なんという事でしょう!?

せっかくのムードがぶち壊しです・・・・。


慌てて離れて、お互い背を向けるシルバーとソフィア・・・。


でもそれを見て一番ショックを受けたのは、元気よく部屋に突入して来たフレディアでした。


「えっ?えっ?えっ?」


「あわわわ・・・・。 し、しまった・・・・」







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