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第十話 紫の結晶石

「よぉ!やっと来たか!!」


宿屋では、すでにフォークがシルバー達を待っていました。


「やぁ、すまない!待たせたみたいだな」


「とにかく、ここで立ち話もなんだ・・・。

ここのオヤジから二階の部屋を借りたからよ、そこで話そうぜ」


そう言うと、フォークはさっさと二階へ向かいます。

部屋に落ち着くと、シルバーがさっそく偵察の内容を尋ねました。


「それでフォーク!何か分かったのかい?」


「それがよ・・・。 この地震で橋が壊れちまって、先へ進めなくなってしまったんだ・・・。

橋の修理が済むまでには、まだしばらくかかりそうだぜ」


「この町で気になる話を聞いたんだけど、先へ進めないんじゃ仕方がないわね・・・」


ソフィアはシルバーを見て、残念そうに呟きます。


「あ、そうだ! フォーク、実はキミに見てもらいたい物があるんだ」


「オレに見せたい物?」


「うん、これなんだけど・・・」


そう言うと、シルバーは袋の中から結晶石を取り出しました。


「うわっ!す、すげー!! 紫の結晶石かよ?!

どうしたんだ?こんな物どこで手に入れたんだよ?」


「お店で買ったんだけど・・・。

それが本物かどうか、フォークに鑑定してもらいたいの。

出来るかしら?」


ソフィアがそう言うと、すかさずフレディアが補足します。


「それ、本当は10万ゴールドもするのよ!」


「マジかよ・・・。よし、どれどれ・・・」


「む、む・・・・」


フォークは石を見る角度を何度も変えながら、慎重に鑑定しています。

そして出した答えは・・・。


「すげえ!!間違いなく、こりゃ本物だぜ!!」


「本当かい? あ~よかった・・・。

これでソフィアに怒られずに済んだよ!は、は、は・・・」


シルバーは嬉しそうにソフィア向かってそう言いましたが・・・。


「え、あれ? それ・・・私の結晶石だわ!

お店で買った物は少しだけ色が濃いもの・・・」


いままで二回もどろぼうに入られたので、ソフィアはシルバーに紫の結晶石を預けていたのでした。

しかしソフィアの言葉に驚いたのはフォークです。


「な、なに?! もう一つあるのかよ!!どうなってんだ一体」


驚くフォークに、フレディアが説明してあげました。


「それ、ソフィアがパパにもらったんだって、だからタダよ、タダ!!

で、こっちが10万ゴールドの本物の方なの!

見て、見て、フォーク!!」


「いや、フレディア・・・。 それちょっとおかしいよ?

ソフィアの方は、間違いなく本物なんだってば」


(ア~お兄ちゃん!ソフィアにはやさしいんだ・・・)


「よし!じゃあこっちの結晶石も見てみるとするか・・・」


「う~む・・・・」


「こりゃすごく精巧に出来ているけど、偽物だな!!」


「え!に、偽物なのか?!」


少しだけ期待していたシルバーはがっかりです。


「ああ、うまく出来ているが、こいつに光を当てるとほんの僅かだが光束が乱れている。 これじゃ、扉は開かねえ」


「素人はだませても、このオレの目はごまかせねえぜ!!」


フォークは自信たっぷりにそう答えました。


「はぁ~・・・。オレ大変な事しちまったな~。

みんな、ごめん・・・」


謝るシルバーに、ソフィアがあわてて声を掛けました。


「シルバー、そんなに気にしなくてもいいわよ。

私たちも一緒にお店にいたんだから、あなただけの責任じゃないわ」


(あ~っ!ソフィア、お兄ちゃんにやさしい!!)

(あ!そうか!! やっぱりお兄ちゃんとソフィアは・・・)

(よーし!これはいよいよ天使のわたしの出番だわ・・・。がんばらなくっちゃ!)


フレディアは再び愛のキューピットの使命感に燃えています。でもそんなに張り切って、大丈夫でしょうか・・・。


「ところで、その結晶石、一体どこで手に入れたんだ?

これだけ精巧に偽物を作れるヤツなど、そうざらにいるもんじゃねえ」


「ちょっと心当たりのヤツがいるんだが・・・。

シルバー、悪いがそこへ連れて行ってくれねえか?!」


フォークは何やら思い当たる節があるようです。


「あぁ、いいよ! オレもあいつらに文句を言ってやる!」


「ねえ、ねえ・・・。こっちの結晶石、わたし欲しいな・・・」


フレディアが偽物の結晶石を手に持って、すごく欲しそうにしています。


「ダメだよフレディア。

それと引き換えにお金を返してもらうんだから」


「な~に、かまうもんか! そんなサギ野郎に気を使う必要ねえさ!

金はきっちり返してもらうから、フレディアちゃん、それもらっときなよ!」


「あ~! フォークってやさしいのね!!

わたしフォークの事大好き!!」


ガ~~~ン!!


フォークはフレディアの言葉を聞いて、すっかり舞い上がってしまいました。

真っ赤な顔をして部屋の隅っこにはまり込み、壁に向かってなにやらブツブツと独り言を言い始めています・・・。


「そ、そんな、ハッキリと・・・。ス、スキだなんて・・・。

は、は、は、・・・。ま、ま、まいったな~」


(ドキ、ドキ、ドキ・・・・・・)


(ど、どうしょう・・。こ、この際だから、オレの本当の気持ちを伝えちまうか・・・)

(あぁ・・・・。だけど、ヒザがガクガクするし・・・。の、のどだってカラカラに・・・)

(よ、よーし・・・オレも男だ!度胸を決めて、こ、告白しちゃおう!!)


フォークはどうも恋愛経験は皆無の様で、フレディアがいつもの調子で言った言葉を真に受けているようです。

もちろんシルバーもソフィアも、フレディアの言葉をサラッと聞き流し、言った張本人と一緒にもう部屋を出て行きました。


そうとも知らず、フォークは一代決心をして振り返ります。


「フ、フレディアちゃん!! じ、実はオレも、初めてキミと会った時から・・・って?!」


「お、おい!そりゃねえぜ!! ちょっと待ってくれよ~」



***



「お!な、何だ! さっきの兄ちゃんじゃないか。

何か用かい?」


顔にラインをつけた男は、シルバーを見てちょっと嫌な顔をしましたが、白々しく話を切り出しました。


でもシルバーが答えるより早く、フレディアが横から口を挟みます。


「おじちゃん、ウソついたでしょ!

あの結晶石偽物なんでしょ?お金返してよね!」


「あ!で、でも、でも、この結晶石はわたしの物だからね!!」


フレディアは偽物の結晶石を両手でしっかり握りしめています。


「あ、あの、フレディアちゃん。 ここは二人に任せた方が・・・。

話がややこしくなっちゃうから・・・ね!」


ソフィアは慌ててフレディアを後ろに下がらせました。


「その子の言った通り、あの結晶石は偽物なんだろ!?

だからお金を返してもらいに来たのさ!!」


「な、なんだとう!!やい!この俺様を詐欺師呼ばわりするつもりか!!

て、てめえ、いい度胸してるじゃねえか!」


「ちょーっと、痛い目に合わなきゃ分かんねえようだな? 世の中の仕組みがよ!!」


そう言うと、男はシルバーに殴りかかりました。


「とうりゃー!!!」


しかしシルバーは男の攻撃をサツと避けると、男の腕を取って後ろに回り込み、そのまま腕をねじ伏せました。


「い、いででで・・・・。 う、腕が折れちゃう!たちけてくで~!!」


男が大げさに騒ぐので、シルバーは男の腕を離してやりました。


「く、くそー!! お、おーい!! みんな来てくれ!!」


「おい!どうしたんだ!?」 外にいたしょうちゃん帽の男が入って来ました。

そしてもう一人、スキンヘッドの厳つい男がテントの裏からゆっくりと入って来ると、顔にラインをつけた男は、その男に向かって状況を説明しました。


「あ!親分!!こいつ、意外と強いんですよ!!」


そしてシルバー達に向かって、恫喝を始めるのでした。


「お、おい! 聞いて驚くなよ!!

うちの親分はな~、 な、なんと!泣く子も黙る砂漠の盗賊団“サンドフォックス”の幹部なんだぜ!!」


「このお方を怒らせると、お前らどうなるか分かっているんだろうな?」


「それでは親分、どうぞ・・・」


促されたスキンヘッドの男は、ズカズカとシルバーの前まで進むと・・・。


「おう、おう! 兄ちゃん!! このオレ様が・・・・。

え~、ただいまご紹介にあずかりました、サンドフォックスの幹部・・・」


「ツルピンのだんなかい?」


「へ? あ、あんたオレのこと知ってるの?」


驚くスキンヘッドの前に、シルバーの後ろに隠れていたフォークが現れました。


「久しぶりだな、ツルピン!!」


「わ!わ!わ! て、てめえはフォーク!!」


そう叫ぶと同時にくるりと向きを変え、顔にラインをつけた男に向き直りました。


「あ! 悪いけどボク、急な用事を思い出しました!!

ガド君、それにチョボ君、それではボクはこれで失礼します・・・」


ボカッ!!


「あだー!!」


フォークに殴られ、頭を抱えて座り込むツルピン。


「てめえ!ふざけるな!!

仲間裏切ってトンズラしときながら、まだサンドフォックスの名をかたってやがるのか!!」


「あわわ・・・。 わ、悪かった!

金は全部返すよ、だ、だからこの事はお頭に黙っていてくれ~。

頼むよフォーク!」


「エルサラームで手に入れた“青い結晶石”も出しな!」


「い、いや、あれはいま、手元にねえんだ。 ほ、本当だよ!

この町の西にある遺跡に隠してあるんだ。 嘘じゃねえよ!!」


「ほ、ほら!これが入り口のカギ。

おめえに渡すから、もう勘弁してくれよ。な!な!」


そう言うと、ツルピンはフォークに遺跡のカギを渡しました。


「よし!西の遺跡の中にあるんだな!?」


「今日は一旦宿屋に泊まって、明日の朝さっそく遺跡に行ってみようぜ!!」


フォークはシルバーにそう言うと、ツルピンから受け取ったカギとお金を手渡しました。


フレディアは欲しかった偽物の紫の結晶石を手に入れて、ご機嫌でツルピンの手下に話しかけています。


「おみそれいたしました。 あんた達がサンドフォックスの方だとは知りませんでした・・・」


顔にラインをつけた男ガドは、フレディアにペコペコと頭を下げています。

もう一人のしょうちゃん帽をかぶった男チョボも・・・。


「あんた達、すごいんだな~。見た感じ、ぜんぜん強そうに見えないのに・・・」


と謝っています。

もちろん、フレディアはサンドフォックスなんて、何のことかまったく分かっていません。







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