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第一話 天使のお仕事

この小説は、2002年1月のRPGツクールコンテストパークで銀賞を頂いた、「Legend of Royal -幻の宮殿-」を小説にしたものです。

現在ゲームは公開されておらず、ゲームソフト「RPGツクール2000VALUE!」のサンプルゲームとして収録されています。



はるか空の彼方・・・。

大きな雲の上にそびえる、美しい神殿の数々・・・。

ここは神様たちの住む天空の世界です。


そして、ここはわたしのお仕えする技術と創作の神、スクラップ様のお家なの。

あ、わたし?わたしの名前はフレディア。

神様にお仕えする天使よ!


「フレディアお茶!」


「は~~い!ただいま!」


「フレディア新聞!」


「は~~い!ただいま!」


金色の少しカールした美しい長い髪をなびかせ、髪の色と同じ色の大きな目をクリクリさせながら、毎日忙しく働く健気な天使のフレディア。

人間の世界で言うと、まだ幼さない少女に見えるかな?

でも頭にはピカピカ光る天使のリングと、背中には立派な美しい純白の翼があるのよ!


そして技術と創作の神様は、人間の年齢で言うと・・・。

頭もはげて、立派な白いひげを伸ばしているので、80歳を超えたおじいちゃんかな?

でも神様なので、本当の年齢は分かりません。


毎日、毎日、神様の身の回りのお世話ばかりで大変なの。

でもね、こうして真面目に修行を積んでいると、やがて立派な女神になれるのよ!

私の夢はね、もちろん!美の女神”ヴィーナス”のような女神になることなの!!



・・・ところが、そんなある日。

わたしの平穏な生活を覆す(くつがえ)、とんでもない事件が起こってしまったの・・・。



*事件を引き起こすきっかけを作った張本人”恋をとりもつ神様”登場。



「おーい!技術と創作の神はおるかの~」


「おぉ!これは恋をとりもつ神ではないか」


「あ!これは恋をとりもつ神様。いらっしゃいませ」


恋を取り持つ神様は、技術と創作の神様のお友達で、見た目の年齢も姿もよく似ていて、まるで双子の兄弟のように見えます。


「おぉ!フレディア。そこにおったのか?! 実はのぉ、今日はお前さんに用があって来たのじゃよ」


恋を取り持つ神様は、フレディアの姿を見つけると、嬉しそうにそう話しかけてきました。


「何じゃ、わしに用ではなくフレディアに用があるとな?」


ちょっと驚く技術と創作の神様。


「おぉ!実はのぉ・・・・。

わしの所におる天使のオリビアが翼を痛めての、しばらくの間動けんようになってしもうたのじゃ!」


「ほぉ!それは困ったことじゃのぉ・・・」


「そこでお前さんとこのフレディアに、愛のキューピットの仕事を頼みに来たのじゃよ!! どうじゃ、しばらくフレディアを貸してくれんかの?」


恋を取り持つ神様は、フレディアと技術と創作の神様を交互に見ながら、そう言うのでした。


「何と、この子にキューピットの役を?!

う~~~む・・・。あの仕事は難しいでのぉ・・・・」


技術と創作の神様は、フレディアを見ながらどうするか悩んでいたのですが、当のフレディアは、もうすっかりやる気になっているようです。


「神様!わたしやります!ぜひやらせてください!!」


「おぉ!引き受けてくれるか!頼んだぞ、フレディア!!」


そんな技術と創作の神様の悩みなどそっちのけで、二人はあっと言う間に話を決めてしまいました。さすがにこれでは技術と創作の神様に口をはさむ余地などありません。

フレディアは恋をとりもつ神様から、キューピットの道具を一式受け取ると、そそくさと地上へ降りて行きました。



***



フレディアが降り立ったのは、のどかな田舎の村でした。

だけどよく見ると、村の入り口に立って、ちょっと悩んでいる様子です。



「あんな調子のいいこと言っちゃったけど、一体どうしたらいいのかなぁ~。

本当は、ちょっと下界に降りてみたかっただけなのよね・・・」


勢いよく降りて来たものの、キューピットの仕事なんてやった事がありません。

下界に降りられる事にウキウキしていたフレディアは、恋をとりもつ神様の説明もそこそこに飛び出して来たのでした。


しばらく悩んでいたフレディアは、とりあえず近くにいたおばちゃんに話しかけてみました。


「あら?誰か話しかけた?」


おばちゃんはキョロキョロと辺りを見渡し、「風の音かね?」と、つぶやいています。

天使のフレディアの姿は、人間には見る事が出来ません。

それにどうやら既婚の女性や、恋をしていない女性の心の声は、キューピットの天使には聞こえないようです。


今度は村の入り口に立っていた、村の案内をする看板娘に話しかけてみました。

すると不思議なことに、娘の心の声が聞こえてきたのです。


「あ~ぁ!退屈だな~。 どこかにいい男はいないかしら。

私って、こんなにかわいいのに、だ~れも声をかけてくれないんだから・・・・」


「あー!いきなりチャーンス!!どこかにくっつける男の子がいないかな?」


この心の声を聞いたフレディアは大喜びで、さっそく相手を捜すことにしました。

そして村の入り口の近くにある、小さな池の横にいた男の子に近づくと・・・。


「あぁ・・・。村の入り口にいる女の子・・・。かわいいな~。

でも、なんて声を掛ければいいんだろう・・・。誰かこの気持ち、彼女に伝えてくれないかな・・・」


「あ、ラッキー!! さっそく村の入り口にいる女の子のところへ行ってみようっと!」


男の子の心の声を受け取ったフレディアは、もう一度入り口の女の子の所へ向かいます。


「最近よく池の近くで見かける男の子。

なんか熱い視線を感じちゃうのよね~。私に気があるのかしら?

でも、そんな事聞けないし・・・」


「やった~!よ~し、この女の子と、あの池の男の子をくっつけちゃおう!!」


フレディアは女の子から5メートルほど離れた場所へまで行くと、キューピットの弓矢を取り出し、女の子に狙いを定めました。


「よーく狙って・・・。 それっ!」


パシュッ!


キラリン!


女の子に矢が命中した瞬間、淡いピンク色の光が女の子の身体から溢れ出ました。


「あ、あら? な、なにかしら・・・・。このトキメキは・・・」


「やったー!成功!! 今度は男の子!!」


フレディアは池の男の子から5メートルほど離れた場所に立つと・・・。


「よーく狙って・・・。 それっ!」


パシュッ!


キラリン!


淡いピンク色の光が男の子の身体から溢れ出ました。


「あぁ!な、なんだろう!!この胸の高鳴りは?

もう我慢できない! か、彼女に僕の気持ちを打ち明けよう!!」


そう言うと、一目散に彼女の所へ駆け出しました。


「やったー!」


ジャンプして大喜びのフレディア。


「大成功!!なーんだ、思ったより簡単じゃないの~。

わたしのノルマは三人だから、後二人ね!」


次の相手を捜すために村を駆けまわるフレディアは、暇そうにしている宿屋のおじさんに声を掛けてみました。


「あぁ~。この村はいつものどかだな~。たまには刺激があってもいいよな~。

何か面白いこと起きないかな・・・」


そんな心の声が聞こえます。

どうやらこのおじさんは、今は恋とは関係ないようです。


次にフレディアは、道具屋の前のお花畑にいた、メイド服姿の女の子に声を掛けてみました。


「あー、退屈だな~。誰か話し相手になってくれる人はいないかな~。

私もそろそろ年頃だし・・・。 素敵な彼氏でも現れないかな・・・」


「あ~っ、恋の片割れ発見!!」


フレディアはキョロキョロと周りを見回し、近くの道具屋のおじさんの話を聞くことにしました。


「なぁ、母さん。うちの息子もそろそろ年頃だが。

誰か好きな娘でもいるのかね?」


道具屋のおじさんは、横に座っている奥さんに話しかけました。


「うちの息子も嫁さんをもらってくれりゃー、もうちょっとシャキッとするんだろうけどね~。今日も朝から二階の部屋でボ~ッとしているよ」


奥さんはため息をつきながら、そう答えています。

その話を聞いたフレディアは、道具屋の二階の部屋に行ってみる事にしました。


二階の部屋では年頃の男の子が、ボ~ッと窓から外を眺めています。


「はぁ~。家の前のお花畑で散歩している女の子・・・。ステキだな・・・。

あぁ、僕に告白する勇気があれば・・・」


「な~んだ!ボ~ッとしていたのは恋の悩みだったのね!

う~ん、まかせて、まかせて~! このフレディアちゃんにまかせて~!!」


「家の前の女の子の所へレッツゴー!!」


フレディアは急いでお花畑にいた女の子に話しかけてみました。


「道具屋の家に住んでいる男の子・・・。わりと感じがいいんだけどな~。

話し相手になってくれないかな~」


「よ~し!この子と二階にいる男の子をくっつけちゃおう!!」


フレディアは大喜びで、女の子から5メートルほど離れた正面に立ち、弓矢を構えました。


「うふふ・・・。 それじゃ、行くわよ!!」


「それっ!」


パシュッ!


キューピットの矢は、女の子めがけてまっしぐら。


ところが、四葉のクローバーを見つけた女の子が、それを摘もうと急にしゃがみ込んだため、放たれた矢は女の子の後ろにいた牛に命中してしまいました。


キラリン!


牛の身体から淡いピンク色の光が溢れ出ました。


「モォ~~ッ!!」


「きゃー!! ど、ど、ど、どうしょうー!!

ウシさんに当たっちゃったー」


激しく動揺するフレディア。


「お、落ち着くのよ、フレディア!」


「だいじょうぶ、もう一本の矢を、べ、別のウシさんに射ればいいのよね!」


そう言うと、慌てて村の中を駆けて行くのでした。





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