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イケメン(?)猫耳との出会い

「すごい、女の子があんな人数の緑の国と戦っている」


「気を付けて」


「無理しないでね」


背後からそんな声がする。黄色の国の人は遠くから私たちのことを見守っているようだ。それは遠くから見ているだけだとも言えることではあるがこの人数の人たちの前に立ちはだかるなんてことをすることはかなり勇気がいることだし相手は他国のペンキを大量に持っている。何より他の人が一緒に戦ってくれたとしても私はまだ未熟だから巻き込んでしまいそうだからかえって良かった。


というよりも私はのんきなことが考えていられないくらいの状態だ。


細かい動きをすることはできないから殴ったりけったりを繰り返しているという脳筋状態になってしまっている。戦うということになれていないうえに実践が初めてであることからどうしても相手の魔法などに惑わされてしまう。


ジジっと耳からインカムの音が乱れる音。


『次は目の前の髪の長い男。遠距離攻撃タイプの魔法だと考えられるから回り込んでからの膝蹴り。頭のほうを狙って』


「了解」


その指示を聞いてから、足に力を入れる。すると魔法の力で足のほうに意識が集中していき、魔力がみなぎっていくような感覚。


そして、跳躍。


対象の人は状況についていけないようで、のんびりと前を向いたまま私に背を向けている。まあ私は身体能力強化魔法だから仕方ないことだともいえることだとは思うのだけれど。慣性を耐えて足を踏ん張り、跳んでから頭に向かって足を振り上げる。


「うぎゃっ!」


後頭部を蹴り上げると他の人たちを巻き込みながらも遠くのほうへ吹っ飛んでいった。


『普通の戦闘初心者って人の頭とか顔は躊躇するもんやけどな』


「フツメンだから」


『相変わらずやな』


そんなのんきな会話をしていた頃もあったが今となっては会話をすることもきつい状況だ。


息も荒くなってきた。一体何回こうして倒して倒して


すると、急に世界がぐにゃりと変形した。襲ってきている人たちの緑と応援してくれている人たちの黄色が混ざったような感覚になっていく。次第に自分の身体の感覚がなくなったかと思えば少しすると目を開けると地面が目の前にあった。


意識が戻ってくると急にうるさい音がしてくる。


『果奈、果奈』


ナルさんが必死に呼んでいる声だった。魔力がなくなって意識がなくなった私に焦って心配してくれていたのだろう。


だからといって私がこのまま引き下がるわけにはいかない。


「思っていたよりもやるやつだったから焦ったけど人数の差ってどうしようもないよな」


「よく見るといい女じゃねえか」


ぼんやりとした意識の中で起き上がろうとすると上に乗っかられてからどんどんと胸元がスース―するような感覚がして下を向くとボタンが三個ほどあけられていた。こんな状況だというのに私は頭が重くて起き上がることが出来ない。


理由はわかっていた。



魔力不足である。何十人もの緑の国の人たちを倒していくうちに私は消耗してしまっていたようだ。それもそうだろう、これまでの戦闘で一時間は使いっぱなしでいるのだからガス欠になってしまうのはわかりきっていた話なのだがアドレナリンが出ていたためか全然平気のつもりだったが体が本格的に悲鳴を上げてしまうレベルには限界だったようだ。


抵抗することもできないまま私はこの男たちにいいようにされてしまうのだろう。


そうして目を閉じようとした時だった。


「やめろ!」


その声に目を思わずあけると、黄色の国の人たちが私に覆いかぶさっていた緑の国の人にタックルをしていた。特別な魔力があるわけでもない、平凡な体格の普通の人でしかない。それなのに魔力の強い屈強な背格好の他国人に対して立ち向かってくれたのだ。


どうして、そんな危ないことを。


どうにかして動こうとするが体が重力に勝てずに地面に這いつくばった情けない状態から移動することが出来ない。


「よくもやってくれたな」


助けに来てくれたことにお礼を言おうと振り返るとその人たちの後ろに控えていた緑の国の人が、緑色のペンキをもって近づいていた。他の色に染められることはなによりも人権を損害されるとんでもない人権損害の象徴ともいえることだ。


黄色の人はそれに気が付いたがとった行動は、



私に覆いかぶさってペンキから守るということだった。



緑色がぽたぽたと私のすぐ横の床についていく。その人の背中には大量の緑がついていて純潔の黄色の髪がどんどんと染まっていく。


悲鳴。悲鳴。悲鳴。


黄色の国の人の悲鳴が聞こえてくる。


その声がどんどんと小さくなっていくような感じがした。それにそう反して頭の中が澄み渡っていくような感覚。


『果奈』


「・・・うん。もう大丈夫」


ゆっくりと地面を強く踏みしめてから立ち上がる。


黄色の国の人は私を心配そうに見つめてくれる。その髪は緑色に染まってきてしまっているというのに私のことを案じてくれていることに胸が痛んでしまうが今まで顔を隠していたフードつきパーカを渡して緑色をぬぐった。


緑色もきれいだけれど、この人には黄色が似合う。


周りが騒がしくなる。当然だろう、今まで守ってくれていると思っていた人は実は他国の人だったのだ。それも相手国でもなく全く関係のない国のおそらく他国でも有名であろうねこかんでもない全く名も知れ渡っていない人。


私を守ってくれている人は他国の人だと知っていたらどんな思いをするのだろうか。


「ありがとうございました」


私は、その人に微笑んでから緑の国と対峙した。



その人は、先ほどとは打って変わって嫌悪感を抱いた表情をしていた。



「わかってたけれど結構応えるな」


『当たり前や、果奈みたいな考え方をする奴のほうが少ないんやからな。今はそんなことよりも目の前の相手に集中し』


思いっきり殴りかかる。


先ほどまでよりも強く、しなるようなイメージで。


数人が遠くまで吹き飛んで壁に当たってから動かなくなった。それを真横で見ていた緑の国が動揺をし始める。反応があまりにも遅すぎる。


「ガス欠したんじゃなかったのか!」


自分の身体も引きちぎれてしまいそうなほどねじってから鉄のように強化した足を振りかぶってから顔を直撃するように跳躍した状態ですべての力をぶつける。


ガス欠なんてとっくの前にしている。どんな顔をされたとしても私は黄色の国の人に温かい言葉をかけてもらって助けてもらったのだ。


何度も何度も敵を倒すことだけに集中していく。そのたびに感覚が研ぎ澄まされていく。


どんどん無意識のような状態になっていく。


無意識下で敵を倒していく。



「倒す、倒す、倒す、倒す倒す倒す倒す倒す倒す倒す」



ゴンという音が鳴るたびに快感を感じる。


血が飛んでいく感覚がたまらない。


「あははははははは、緑の国でも流れているのは赤い血なんだね」


笑いがこみあげてくる。緑色に染めてやるなんてことを言っておいて中身は赤いなんてこんなに面白い言なんてないだろうに、どうしてみんな笑っていないんだろう。そんなに怖い顔をしていないで笑ってくれればいいのに、どんどん遠ざかっていく。


そんなに逃げられると追いかけたくなってしまうんだけれど。


「なんだこの女、おかしいぞ!」


『・・・』


どんどんと倒れていく。


的が少なくなってきたな。


「あれ?なんだ、もういないじゃない」


私の目の前には誰もいなくなっていた。緑色が邪魔だったのに、赤色しかなくなってしまっていてつまらない。まあ赤色もきれいだから問題ないか。


後ろを振り返える。


ああ、なんだ。


「まだ緑色がいるじゃない」


なぜか黄色の群れから外れて、緑色を背中と頭にこびりつけているような的がまだいた。どうしてこいつだけ黄色の服を着ているのかはどうでもいい。


驚いた表情をしているそれに対してこぶしを振り上げる。



『ねこかん!』



耳元で大きな音がした。


その瞬間、鼻にとんでもない激痛が走りまたしても床に這いつくばった。


魔力という魔力をふんだんに入れた後に、凝縮したようなにおい。下手をするとここにいる人たちの魔力を全員まとめたとしても足りないくらいの恵まれた才能がそこにはあった。圧倒的な実力差と存在感に皆が絶望してしまいそうになる。私以外の人はどれくらいの魔力を持っているかなんてわからないだろう。しかし彼には圧倒的に人を惹きつける能力があった。


きゃあ、という声が聞こえる。他国の人であるのに上がったのは悲鳴ではなく感嘆の声。


白国の象徴である白髪に大きな瞳。そして、彼のトレードマークともいえる猫耳にしっぽが歩くごとにゆらゆらと揺れている。彼の周りは真っ白で氷に包まれており歩くたびに氷へと変化していく。一歩歩くごとになぜか目を奪われる感覚になり誰もが今彼以外のものを見つめている人はいなかっただろう。


正直に言って目を引かれるような容姿でもないのにどうして皆はこんなに集中しているのだろう。


「これは派手にやりましたね」


「え、でも私は緑の国の人たちを倒せって言われたから」


「それは構いません。僕の仕事をしてくれたのでありがたいと思っています」


くるりと彼が持っている杖を回転させる。


すると、あたり一帯が氷に囲まれてしまった。緑の国の人と私の足を強く氷で固定される。


「でも、黄色の国の人たちに手をかけていいとは言われていないですよね」


『その通りや。黄色の国の奴らに対して手をかけたとしたら大問題やからな』


「えっと、一応聞くけど・・・あんたって」


彼は、こちらを向いて猫耳を動かしながら微笑んだ。



「白国戦闘幹部のねこかんです。直接会うのは初めてですね」














































猫耳が大好きです

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