イケメン(?)猫耳は化け物級です
「ほんまに最悪や」
服を着てまたフードを深くかぶってベッドに腰かけているナルさん。折角のきれいな顔を隠してしまうのはもったいないよううな気がする。魔法の関連なら仕方がない気もするけど。確か目を見ると相手に言うことを聞かせてしまうというチート能力だったよね。
「もう一回見せて、ナルさん!」
「あーもう!鬱陶しいな、俺の顔見たとたんにべたべたすんな。今まで俺のことこわがって電話で会話すらしようとせんかったくせに」
「だってあんなにイケメンだと思わなかったもん!どうしてそんなに顔を隠すの」
すると、ナルさんはぴたりと動きを止めた。
フードの奥の表情は読み取れない。
「もしかして、見てないん?」
「ナルさんの顔がイケメンだったってことは見たよ」
すると途端にナルさんがほっとしたように肩をなでおろした。何か見てはならないものでもあったのだろうか。ナルさんが嫌がることをしていなくてよかったけれど気になる。
私はまだ信頼されていない。仕方ないよね。
でもナルさんの容姿にはやっぱり惹かれるものがあるな。そういえばナルさんと初めて会ったときに来也さんがイケメンなのに容姿が見えていないナルさんのほうが気になっていた気がする。さすが私はイケメンを見抜く能力があるんだな。だって想像ではあるけれど年齢も多分私とそこまで変わらないはずなのに、下品ではない大人の余裕のような色気を醸しているとか本当に半端じゃないよね。
「ナルさんは年いくつ?」
「少なくともお前よりは上やで。来也はもうちょっと上」
「河合くんは?」
「拓斗はお前より下。それでねこかんは一番年下」
まさかの新事実。河合くん絶対年下だと思っていたのに私よりも年上なんだ。確かに私よりも身長が高いけれど発育がいいんだなとしか思っていなかった。
「じゃあ来也さん、ナルさん、河合くん、私、ねこかんってこと?」
ナルさんが頷く。
「結局ねこかんってどんな人なの」
「そういえばねこかんについていかなきゃあかんのやもんな」
あなたのせいでね。
そういえばねこかんって世界最強といわれているのに最年少ってことは、高校生以下ってことだよね。高校生以下で世界最強なんてどれだけの負担を抱えながら生きているのだろうか。勉強もしていないはずだし同世代の友人なんてこのアジトの人しかいないんだろうな。
私にそういってからナルさんは先ほど一台だけついていたパソコンを指さした。
「あれ、ねこかんの視点」
「どおりで黄色いんだね」
「あいつは無駄に目立つんや。多分行ったときにはぱっと見で分かると思うわ」
画面の中では黄色い建物がある中で歩いているのであろう画面が上下に動いている映像が映っている。さすがに私たちの国とは全然わけが違う。それにしても全然誰もいない街。
「今は黄色の国は他国と戦っとるから」
「それならどうして向かっているの?」
他の国と戦っているならねこかんがわざわざ向かう必要なんてないだろう。てっきりこちら側に攻めてくる予定だからこそ偵察か何かで向かってきているのだと思っていた。なぜわざわざ戦争の最中に入り込むようなことをするのだろうか。
「そこらへんは行ったらわかるわ」
そういってナルさんはパソコンの目の前に座った。
慣れた手つきでキーボードを打っているのを見ると本当に働いている人なんだと思った。いや、当たり前なんだけど部屋に入ってしかこうして仕事をしていないみたいだったから実際に働いているのを見ると変な感じがする。さっきまでパンツ一丁で寝ていた人とは思えない。
マイク付きのヘッドフォンを付けているがフード越しにちゃんと聞こえているのだろうか。
そして私にも同じものを手渡してきた。もらったのでとりあえずつける。
「ねこかん」
『あ、ナルさん。何かありましたか?』
視界を映しているカメラがぐるっと動いてどうやら路地裏に入ったようで狭い道と壁が映っているなんとも質素な画面になった。
どうやらねこかんが対応しているらしい。
世界最強というからもっと怖い人を想像していたが思っていたよりもなんだかふわふわしたしゃべり方をしている。声も年相応に若い感じがする。
「新しくきたやつがいて課題を設定したって言うとったやろ。その新しいやつ」
「初めまして、花宮果奈です」
『ねこかんです。お話できてうれしいです』
こうして話してなにをすればいいのだろうか。まだ相手のことなんて名前しか知らないのに。
見えていないのに礼をしているようで視点カメラが上下に揺れる。礼儀正しい人のようだけれど少しだけおバカな人なのかもと思うと面白いなとくすりと笑える。その時に頭を下げたことにより黄色の服装が見えている。黄色の国の服を着ているため黄色の国の人からは目と髪が見えない限り黄色の国の住人になることができる。
「どれくらいで帰ってこれそうなんや」
『硬直状態なので一週間くらいはかかりそうなのですが、かなり黄色の国が押されている状態なので僕がいてもどうしようもないかもしれません』
「それは仕方ないな」
なんだか黄色の国が負けていることが都合が悪いといった口調だ。他国が負けていようと関係がないはずなのに。
「なら六日後にこいつを送り込むから。気に食わんかったら追い返してもええで」
『そんなことはしませんが、まさか色が変わる瞬間を花宮さんに見せるつもりですか!?まだ早いと思うのですが』
「ええねん、先にみとるほうがあきらめつくやろ」
気に食わなかったら追い返してもいいなんて言ったらもしかしてのことがあるんだから勘弁してほしいのだけれど。
色が変わる瞬間って言っても私は色への固定概念はかなり少ないほうだからあんまり気にしないためきっと黄色の国の髪の色が他の国の色に変わるところを見たところでそこまで気にしないため大丈夫であろう。気にしすぎなんだよ。
『そうですか。それで今回はどういう用件で僕に連絡をされたんですか』
「ねこかんの魔法を見せてくれてやってくれ」
ねこかんの魔法。世界最強の魔法使いのことはさすがに少しくらいは知ってはいる。氷の魔法を使っている戦闘幹部であり、猫族の愛くるしい見た目からすると真逆の冷たくて残虐非道な存在だといわれている国民からも恐れられる人物だ。昔から子供に言うことを聞かせるために「静かにしていないとねこかんがくるよ」という親もいるくらいである。
どうやら私にどれくらいの魔法を持っているのかというものを見せつけて力の差を示したいみたいだ。
ナルさんは相変わらず私の幹部参加に反対のようだし。
『ええ、ここで魔法を発動するんですか?ばれちゃったらややこしいことになるんじゃないですか』
「じゃあ魔法ってわかりにくいもんにし」
『わかりました』
そういってから、彼の手が映る。健康的な青年の手は幼さを残しつつ男の子の手をしていて大きそうだ。そうしているうちに粒子が集まってきて、幻想的に光っていく。きらきらとした光に包まれて出てきたのは冷気を漂わせている氷のステッキ。
シンプルながらも細かい造形がなされているステッキは、画面越しでも見入ってしまうほど美しい。とても軽そうには見えないそれをバトンのように軽々と振り回して遊んでいる様子が画面に映る。
聞いたことがある。ねこかんはあのステッキを持つことによってもともと魔力が高い状態であるのに何倍も膨れあげることが出来るらしい。
『えっと、降れ~』
なんとも緩い声でステッキを振る。
しかし、何も起こらない。こんな世界最強と呼ばれている人にも魔法で失敗することもあるんだ。そういうこともあるんだろうな。
すると
画面の端のほうにはらりと白いものが映っていた。
『こんな感じでいいんですか』
画面の向こうでは、大量の雪が降っていた。
「ちょ、お前何やっとんねん!この時期に雪降らすなんかお前くらいしかおらんやろ!」
「天気を操ることって時間を操る魔法の次に難しいって言われているはずじゃなかったっけ」
『そうなんですか?僕は時間は操ることはできないのでまだまだですね』
なんとも軽いことのように言っているがとんでもないことをしているというのはナルさんの怒り具合からわかるだろう。
その証拠に今まで静かだったカメラの向こうがとんでもなくざわつきだした。それもそうだろう、ただの魔法の力というわけでもなく夏であるというのに雪を降らせたという状態に衝撃を受けているのだ。もちろん魔法がかかっているからといって冬に雪を降らせるよりも夏に降らせるほうがとんでもなく大変になってしまう。
『すみません、僕ちょっと逃げますね』
そういってからカメラが上に上がって、先ほどの街並みが一気に小さくなっていき木々すらかなり飛び越えて移動していく。足元には氷の結晶のようなものがあり、それで移動をしているようだ。
とんでもない存在だな。
本当に強い存在ってこうして簡単に強い魔法をしてしまうんだな。
「とりあえずこんな感じや。あんなとんでも人間と一緒に戦っていかなあかんねん。あいつが強いから任せとけばいいんやなくて逆にお前が邪魔になるから邪魔にならん程度にはつよならな足引っ張るねん」
「はい・・・」
痛感した。
私はナルさんに叱られたためあしょうがなくそちらを向いて説教を受けようとすると、カーテンが開いている状態だったことに気付いた。
窓に飛びつく。
逃げたくなったわけでもなく、外の景色が突然見たくなったわけでもない。いや違う意味では見たくなったのかもしれない。
「ちょ、ちょっと、うそでしょ。黄色の国からどれだけ離れてると思ってんの!?」
外には、雪が降り積もっていた。
「やから言ったやろ、あいつは正真正銘の化け物的存在なんや」
ねこかんが登場しました。果奈は彼のもとに行くことが出来るのかというところですが楽しみにしたいところですね。
イケメンと過ごす日々をかみしめながら、果奈には頑張ってほしいところです。
ありがとうございました。