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イケメン(?)司令官にベッドに引き込まれました

あれから毎日稽古をしているが想像以上にハードで大変すぎる。私は身体能力が高くなるという戦闘向きな魔法なのに向こうは結界という明らかに防御向けの魔法にボコボコにされていた。手加減されているのに結界で創った盾に叩きのめされてしまう。


河合くんは来也さんに原則ついていなければならないが今回の件のために離れて稽古をしてくれているのだからその時間を無駄にすることはできない。かわいい顔を触りつくしたいという欲望を抑えながらも必死に食らいついてはいるが、これがなかなかに河合くんが強い。この家の中で一番の魔力の香りがするだけあって結界がかなり硬く頑丈で強化した状態でのキックでは全く歯が立たないどころか手加減されていなかったら折れてしまっているかもしれない。


ナルさんは引きこもっていることが大半なようで部屋から出てこようとしない。むしろあれ以来会っていないのではないかというレベル。


来也さんは河合くんと一緒にいるため会う機会が多い。総長で偉い人だというのに高圧的な態度はとらないが指示をするときには特にナルさんに対して電話で強い口調で話して口論になっていることが多い。司令官とトップが別に存在していれば確かに意見が食い違うのも納得だ。せっかく同じ部屋にいるのだから会って話したらいいのに、と思うけれど目と目を合わせて話をするときよりも電話のほうが声が大きいため対面が苦手なのだろう。


「なかなか苦労してるんだな」


具たくさんのカレーを頬張りながら来也さんは他人事だという調子で言う。確かに他人事ではあるんだけど連れてきた本人は結局ナルさんにも私を選んだ理由も言わずにいるものだから火に油を注いでいて黄色の国に行ってねこかんと合流するという目標が与えられているのにもう少し気にしてくれていてもいいのではないか。今日もイケメンだからいいんだけど。


カレーはピリッと辛くておいしい。


「河合くん強くて全然勝てなくって大変」


「戦闘をほとんどしない拓斗に勝てなかったら他国に一人で乗り込むなんて遠い話だな。ねこかんもずっと黄色の国にいるわけじゃないんだからな」


「具体的にどれくらいなの」


「決まってないな。ねこかんが早くに帰ってこれば期限は短くなる」


頼むから任務をゆっくりと進めてほしい、ねこかん。


会ったこともない相手なのにお願いをするなんて不思議な感じ。これから来也さんや河合くんと、あとナルさんと一緒に住めるようにしなければならない。イケメンとの関わりなんてそうそう得られるものでもないしましてや同居なんて。


一足先に食べ終わって同じテーブルでお絵かきをしている河合くん。私よりも小食なんて可愛すぎる。対照的に来也さんは細身なのにとてもたくさん食べているから見ていて気持ちがいい。


「なんか物足りないの」


そういうためのぞいてみると、ヒヨコやウサギなどが描かれている可愛らしい絵だった。物足りないというからあまり上手ではないのかと思ったが簡単に描いているにしてはきれいで十分に感じる。かわいい子は描くものもかわいいんだな。


「ヒヨコなんて縁起の悪い生き物を描くからじゃないのか」


「総長うるさい。縁起が悪くてもいいの」


来也さんは河合くんが描く絵に対して苦渋の顔を示す。相変わらず違う色に対してはあたりも厳しいし私たちにもそれを求めてくるところは総長らしいといえばいいのかよくわからない。国のトップがこんなに他国に対して厳しいのであれば私が思う色の多様性の世界には程遠いのだろう。


「その絵、受け取ってもいいかな」


「?いいよ」


こてんと首を傾げた後に私に絵を渡してくれる。んん、かわいい。




部屋に戻ってから彼の描いた紙を広げる。


私も一応幹部として扱われているようで一つの部屋を分け与えられており、もともと一人一人の部屋が居心地が悪いと感じるほどに大きい部屋だ。こんなに大きい部屋は必要がないと伝えたがこれ以上に小さい部屋がないといわれたのと来也さんと河合くんの部屋は一緒なのだがその部屋から近いということでここになった。


一番狭い部屋はナルさんが使ってしまっているらしい。


今までずっとしまっていたカバンを開ける。通学しているときに持ってきていたカバンのまま来たため着替えなどは支給されている。下着さえついたときにはそろえてあり種類が山ほどあるためファッションには困らなさそうだ。家へは連絡してもらっているとのことだ。


「あったあった」


カバンの中側の内ポケットに入れてあった色とりどりの絵の具を取り出す。こんなペンキのようなものはとんでもない危険物になってしまうが私は、これを芸術として扱うタイプだ。少なからずこうして色を使って芸術を表現する人は存在している。とはいえ私に対して色塗りを教えてくれた人だけなのだけれど。


コンパクトな絵の具だがきれいな発色をする。他の色だから嫌悪感がないわけでもないが芸術としてのものだと考えれば平気である。


こんなところを見つかったらとんでもないことになるだろう。


「~~~♪」


うさぎは純白。白にだって色はあるのだから白い用紙にだって白色は塗る。すると白色が光ってきれいに見えることが出来るのだ。目は赤色。こぼして床などに色がつかないように気を付けて絵の具のチューブから直接絵の具を付けて他の紙で慣らしてから河合くんの絵に塗り込んでいく。


ヒヨコは黄色。そういえば私が連れてきてもらった日に来也さんに黄色く染まった葉っぱを踏まれたりいろいろと価値観の違いを感じたな。一応机の引き出しにしまってはいるがあれ以降なんだか私のこの趣味も否定されたような気持になってしまうから見ていない。


色を混ぜるという行為は、他国と混ぜるという意味だからよくないことではあるがまあ細かいことは気にしないでいこう。そもそも色を混ぜるだけで国家反逆なんてばかばかしいでしょ。


「よし、できた」


鮮やかな色をまんべんなく作った作品。何か物足りないといっていたから河合くんの作品を借りたがこんな作品見せることが出来ないな。


もしかしたら来也さんのような話をされてしまうかもしれない。イケメンに言われたことであればなんでも受け入れられると思っていたが、意外とショックを受けるものは受けるんだな。昔にこの色塗りを渡してくれた相手のことを否定されたような気持になったからかもしれない。


あの人も小さいながらきれいな顔をしていた。


この色で分けられている世界に対して疑問を持っていてみんなで仲良くする方法はどのようなものがあるのかと考えていた。そして私に絵の具を渡して、これから色が違うというだけでどんな意味があるのかと考えていってほしいと伝えられたのだ。


あの人はどんな作品を作っていたっけ。確かとても絵が上手で人物画を描くことが得意だった。最後に会ったときに私を描かせてほしいといわれたがそのときに描いてくれた絵はそっくりでキラキラしていて私がこうして見えているのだとうれしい気持ちになった。


「あの人はどうしているのかな」


「あの人って?」


「ぎゃあ!」


いつの間にか私の背後に立っていたのは河合くんだった。


見つからないようにと気を付けていただけあってかなり驚いてしまった。しかも私が描いていたのは河合くんの絵で勝手に色を付けていたのでとても気まずくなった。


「あれ、僕の絵・・・」


「あ、ご、ごめんね。勝手に色なんか付けて」


河合くんは紙を手にもってじっと見始めた。私はこの趣味に関して恥じないと決めていたのにこうして弱気になってしまう事が悲しくなってしまう。


自分の情けなさからぎゅっと手を握った。


「ううん。なんて言ったらいいかわからないけれど」


やはり微妙な顔をされてしまった。


「正直僕は他の色に対して嫌悪感とかがないわけでもないの。だから色を付けられたのは変な感じはするけどこれで完成したって感じがするよ」


「その言葉がうれしいよ」


優しくいってくれた。言葉だけの賛成なんていらなかったから正直な言葉を言ってくれてうれしかった。嫌悪感がある中でも物足りないと感じていた絵が完成したと感じてくれるのは一番の誉め言葉なのだろう。


河合くんはじっと私の絵を見つめている。


「この絵、総長には見られないようにしなくちゃいけないよ」


「やっぱりいい顔はしないよね」


「でもこの絵、ナルさんに見せてみてほしいの」


ナルさんに・・・?それこそめちゃくちゃに怒られそうな気がするんだけど。


私が加入したことについてまだ不服そうだし来也さんに対して何度も抗議していることを知っている。それに来也さんに続いて司令官は偉い人なのにそうした色への嫌悪感はもっと強いのではないか。すぐに出ていってくれって言われてしまいそうだ。


河合くんは言葉を選ぶように、ゆっくりと言葉を発した。


「大丈夫だから。ナルさんは果奈さんが思っているよりも優しい人だし、それにナルさんにとってもこの絵を見せてあげてほしいの」


「ナルさんにとっても・・・?」


「いいから行ってらっしゃいなの!」


私は押し切られるようにナルさんの部屋の前まで連れていかれた。


そういえばあれ以来会ってもいないしちょうどいいかもしれない。そういえば他の人の部屋に入るのは初めてだ。初めて入る部屋がフードを深くかぶっているイケメンではないだろう司令官か。


「ナルさん、入るよ」


河合くんはノックもせずにドアノブを開けて部屋に私を押し入って去っていった。


「拓斗・・・?」


資料など本棚が大量にあるためかある程度は広いはずなのに狭く見える部屋。パソコンがたくさんあって一つだけついているところでは森の中を進んでいる映像がある。不思議な動画でも見ているのだろうか。それにしてもなんだか映像の質が悪くないのか白いもやがかかっている気がする。


そちらに目が行っていたが、奥のほうでベッドがもぞもぞと動いている。


ゆっくりと歩いていくとおそらくナルさんのものであろう手がベッドからはみ出てしまっている。あまり寝癖がいいほうではないのだろうか。顔は毛布をかぶっているから見ることが出来ない。


「拓斗、なにしにきたん?ほんまに甘えたやな」


最初に呼びかけたのが河合くんだから勘違いしているんだ。ていうかやっぱり河合くんに対してだけはかなり優しい口調で呼びかけるんだな。なんだかおもしろいし貴重な気がするからこのまま聞いておこう。


というよりもいくら暑いとはいえ肩まで露出するくらいの服装でいるってタンクトップででも寝ているのだろうか。


って、上半身裸じゃんこの人!さすがに下は履いているみたいだが下着姿だ。引きこもっているからか真っ白な肌。普段から厳しい人がこんな風に下着姿で寝るなんて意外だな。


「こっちき」


「きゃあ!?」



ちょ、ちょっと!?


いきなり腕を強く引っ張り込まれて目を開けると彼の胸元だった。


さすがにイケメンじゃない人でもここまでの至近距離だと驚かざるをえないし緊張もしてしまう。だってベッドの中に入れられたんだよ。


「な、ナルさん、私・・・」


顔を上げると、そこには目を引くような美少年がいた。


切れ長だがそれでも優しそうな光を放っている目。すっと通った鼻筋はこのアジトの中で一番大人っぽく見える。色っぽい感じを醸しているのにそれ以上に寝起きということでかなりフェロモンがでているような美しさ。


正直に言って、今まで見てきた中でも最高に整っているイケメンだ。


十人が十人振り向くなんてレベルじゃない。たとえ遠くにいたとしても美しさが分かるくらいに精巧に作られた神様が誠心誠意丹精を込めてつくった一つの芸術品に魂がこめられたとしか考えられない美。この一人を生み出すために何人の顔立ちが犠牲になってしまったのだろうか。



「え・・・!?お前!」


一足遅れて私だと気づいたらしく、力いっぱいベッドから落とされた。





























超美少年のナルさんが登場しました!いいですね、イケメンは国宝です。やっと恋愛要素を書くことが出来ました!こういう王道イベントがなんだかんだ一番好きです

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