イケメン結界張りと危険すぎる目標
出てきたのは、なんとも可愛らしい風貌をした少年だった。ふわふわとした柔らかそうな白い髪、瞳孔の色は純白でないものの少しグレーがかった白。そして大きくてくりくりした目にふさふさとした長いまつげがついていて本当にお人形さんのような顔立ち。
その子がナルさんに飛びつこうとしている間に反射的に入り込む。
すると、なんと私の胸元に勢いがついている美少年が止まりきれずに飛び込んできた。というよりも胸元に入るくらいの身長かと思っていたら思っていたよりも身長があったから私が彼の胸元に入ったような形になったのだけれど。こんな童顔イケメンで高身長なんてギャップ萌えすぎる。
私、イケメンに抱きつかれている!
心臓がバクバクと血液を運んでいる音が全身からしているのだろうかと感じるくらいに大きく聞こえてきてやむことがない。
「なんかナルさん柔らかくなった?」
「いや、俺そんなチビやないし」
私の後ろに立っているナルさんを見て不審に思ったのか美少年は私を引きはがしてじっくりと見る。見れば見るほどきれいな顔をしている。
しかも肌も白いからはかない印象を感じる。
「女の子・・・?」
「さっき言うたやろ、この子を中に入れてほしいねん」
「ナルさんが帰ってきたのがうれしくて聞いてなかったの」
なんだかふわふわした感じの子だなあ。
ナルさんはまんざらでもないのかその言葉を聞いて肩をすくめていた。来也さんへの態度と比べるとこの二人は特に仲がいいのだろうか。
「君は誰?」
彼の瞳に私が映った瞬間、イケメンに多少強引にハグされたという衝撃から飛んで行ってしまっていた意識が戻ってきた。するとおとなしくしていた自我の中で彼の存在をもっと身近に感じたいという欲求が湧いてくる。イケメンは見るだけでもいいけれど触れると幸福になれるのだ。
「私は幹部に新しくなった花宮果奈!めちゃくちゃイケメン過ぎて最高すぎるからもう一回ハグしないかな!?」
私は鼻息を荒くして手をもみながら美少年にじりじりと近寄っていくと対照的に逃げていってしまう。つまりあれかな、照れ屋さんなのかな。
ナルさんの後ろに避難した彼は私を遠巻きに見ながら怯えている。そんな表情さえかわいいなんてイケメンはやっぱり国宝だな。
「ナルさん、この人なんか変なの」
「そうやけど来也が勝手に幹部に指定したらしいからほんまに仲間やで。一応自己紹介し」
そういわれた少年はナルさんの背中に隠れていたが出てきて、礼儀正しくお辞儀をした。ぎこちないながらも丁寧に。
「僕は護衛幹部の河合拓斗。総長の近くにいることが一番の仕事で、アジトの周りに結界を張ることがお仕事です。よろしくお願いいたします」
「うん、よくできたな」
ナルさんは河合くんの頭を優しくなでて河合くんは顔をほころばせて受け入れていて、なんだこの美しい光景はという感情と先ほどこの子が作っている結界で私に対して危害を与えようとしていたナルさんはどこに行ったのだろうかという疑問がわいた。
別に河合くんさえ仲良くしてくれればいいんだけどさ。
さすがにこんなに差をつけられると悲しい気持ちになる。
「じゃあ果奈さんのことを結界に入る登録をしといたほうがいいの?」
結界って意外とそんな会員制みたいな制度で臨機応変にその人それぞれ入ることが出来るなんて知らなかった。河合くん独自の魔力なのかもしれないけれど。正直に言うと、来也さんよりも強力な魔力のにおいがしていて鼻がねじ曲がりそうなぐらいだ。
ナルさんは全くにおいがしないけれど来也さんなんて東城家の長男であるのにそれ以上に魔力が強いなんてとんでもない人だ。それくらいの実力者なら自分のルールで魔法を使いこなすのもたやすいのかもしれないな。
「いや、せんでええ」
「「えっ」」
二人の声が重なった。
「来也がその子を指定しただけで俺は認められへんからな。指定については口出しせんけどこれからのことは司令官の俺が決定する」
「でも結界出られなかったら不便だと思うの。外でお散歩しているときにぶつかってしまったときにもしものことがあったら大変だし」
「勝手に動かれるのも危険やから。毎回拓斗に連絡せなあかんから迷惑かけるから申し訳ないんやけどな」
その優しさを私に分けてほしいんですけど。
「それはいいよ」
河合くんは出会ったばかりの私のことを仲間としてみてくれているのだろうか。ナルさんに交渉までしてくれている。なんて優しい子なのだろうか。
私のことを信用しきることが出来ないという意見には正直納得せざるを得ないところがある。悲しい意見ではあるが、司令官という立場として自分が関与していないときに勝手に決められてしまうのは計画もくるってしまうし大事な総長と同じ家に暮らしてもらったりすることはリスクが高いのだからこうして一応仲間として扱われているだけでありがたいと思わなければならない。
河合くんが結界があるのだろう場所に手をかざす。
「結界一応今だけ果奈さんを通してもいいようにしたの」
見た感じとか匂った感じは何も起こっていないように見える。一時的に外すときでも私限定で外す設定にしているからそこの魔力は置いたままにしているのだろう。
器用だなあ。
「入った瞬間腕が吹き飛ぶとかない?」
「認証しているから大丈夫だよ~」
認証していなかったらどうなるのかというのはきになるけれどこの状況で聞く勇気がなかった。だって本当に変わっているかもわからない状態で入るなんて怖すぎる。
恐る恐るドアノブをひねると、普通のドアのように開いた。
どうやら結界の効果が果たされていないようだ。心底ほっとする。
中は、最初に思いつく感想が真っ白だということだった。見渡す限り白で美しい状態を保っている。広い部屋に豪華な家具が置いているが、花瓶や花瓶など壊れやすいものはアジトのような襲撃される場所であるためかおかれていないようだ。
玄関だけで一つの部屋が作れそうなくらい大きい。こうした豪華で美しい場所でも、端においてある傘立てにある傘が生活感を漂わせており本当に住んでいるのだと考えてしまう。だって本当に生活感がないほどにきれいな場所だから。
「ずいぶんきれいに掃除しているんだね」
「ゴミがたまったとしても特殊な魔法がかけられているからこの家は真っ白であることができるの。さすがにペンキとかで濃くつけられると色がついちゃうんだけど掃除をすれば元に戻るんだ」
なるほど。だから異様に真っ白なんだ。正直白色は過ごしているだけでくすんでしまうから私たちは持ち物を頻繁に交換しないと他の色に変色してしまったものは縁起が悪いとして捨てなければならなくなってしまうのだ。
私と河合くんが話している後ろからナルさんがついてくるような形になっている。
やがてリビングのようなひときわ大きい部屋につれてきてもらい、とんでもなくふかふかするソファに座ることが出来た。なんだかんだ疲れてしまっていたからありがたい。
「ちなみにここに住んでいるのは僕とナルさん、来也さんとあと一人いるの」
「もう一人・・・」
「聞いたことあるやろ、ねこかん」
今まで我関せずといった状態で椅子の上で体育すわりをしていたナルさんが急に会話に入ってくる。それに驚いていると、
「ナルさんは本当にねこかんくんがお気に入りなの」
「そんなことないわ。あいつも嫌いや」
この人来也さんのことも嫌いって言ってたよね。一緒に過ごしている人の中で半分が嫌いって結構重要問題じゃないの。
ねこかんというのは、世界最強といわれている魔法使いのことである。白国の戦闘幹部で猫族の生き残り。その可愛らしい耳やしっぽを持ちつつとんでもない魔力を持っているため、適う人は誰もいないといわれており白国の中でおそらく来也さんの次にねこかんが重要人物であろう。
私ですら知っている存在。もちろん聞いたことがある。
その人とも会うことが出来るのか。いろいろ聞いているとその姿を見た人はみんなくぎ付けになってしまうと話題になっておりおっかけすらいるらしいがなにぶん相手は世界最強のためどこにいるのかもわからずすぐにまかれてしまうため苦労をしているらしい。おっかけが存在しているのはきっとイケメンってことだよね。来也さんも河合くんもイケメンだし顔面偏差値高すぎない?
「黄色の国から最近挑発されているから注意するためにねこかんくんが出かけているの」
「それってかなり危険なんじゃないの」
「ねこかんの服につけとるカメラでちゃんと監視自体はしとるから大丈夫や」
カメラを付けていたとしても助ける人がいなかったら危険だと思うのだけれど、指示などをすることでどうにかなるくらい強いという事なのだろう。普通の人であれば他国の人がいればすぐに倒されるような世界なのに一人で向かうというのは非常に危険だ。他国の人というのは髪や瞳の色で判別をすることができるためフードをかぶることが多いが、あやしいため見つかることが大半だという話を聞いたことがある。
フードを付けているといえばナルさんだけど彼は目を見たら言うことを聞かせる魔法を持っているからあの格好らしいけれど。
「とりあえずあんたにはねこかんと合流してもらう事を当面の目標にしとくわ。それで帰ってこれたら幹部として認めたる」
「合流って黄色の国でなの?すごく危険だと思うの」
ナルさんは頷いた。
黄色の国での合流ってつまりはしばらくの間私は他国で一人動き回らなければならないという事だろうか。本気の戦闘なんてしたことがないのに一人で危険な場所に行くなんてあまりにもハードルが高すぎる。目標だということはそこまで早くに行くという事ではないのかもしれないけれど。
「拓斗がこいつに稽古とかつけてやってくれ。来也のことは脱走しいひんように俺が見ておくから」
「はーい」
「生きて帰ってこれるように頑張り」
生きて帰ってこれるようにって怖いことを言わないでほしい。
まあ河合くんに稽古をつけてもらえるのなら喜んでさせてもらいたいところなんだけれど。だって稽古で汗水流しているところも見れるしハプニングでまた抱きつかれたりされるようなこともあるかもしれないじゃない。
「頑張ろうね、果奈さん」
「もちろん、手取り足取りいろいろ教えこんでね!」
「ナルさん、やっぱりこの人ちょっと気持ち悪い」
よし、いっぱい頑張って認めてもらえるようにしよう。そう意気込んだ。
名前だけですが最後の幹部であるねこかんが登場しました。この五人で繰り広げられる話を私も楽しみにしています。