イケメン総長との出会い
イケメンであるという設定が大好きでそれを生かせる作風について考えていました。昔から考えていた作品をこうして形にして掲載できるのはとても嬉しいです。
よろしくお願いします
私はイケメンにしか興味はない。もちろんクラスや学校の中で一番人気なんて興味ない。だってあんなの他の人たちよりもましだというだけでしょ?消去法で選ばれたイケメンは真のイケメンだとは言えない。
収入よりも何よりもイケメンとの恋愛がしたい。今までピンときたイケメンなんて今までいなくてとりあえず二次元のゲームをして満足をすることしかできなくなった。
自覚はあるのだがこの変わった性格からもちろん友人なんていなくて通学路を一人歩く。
真っ白な屋根に真っ白な壁。そして道も真っ白。道行く人の髪色も白色。とてもきれいな街並みは穢れのない純白で彩られている。私がこの世できれいだと思うのはイケメンの次にこの白色であるがこの国の国民としては当然の感覚である。白色以外はすべて消し去ってしまえばいい、色のついたものなど不吉であると代々言われている。
私は魔力が不思議と強く、魔力のにおいを嗅ぐことが出来るという特異体質をもっているため友人など存在しない。
「?」
なんだかいつもより魔力のにおいが強い気がする。普通の人でもある程度魔力が強い人は存在しているが、その比ではないくらいに強い。今まで嗅いだ中で一番強い人だということはわかったがそういう人もいるのだと考えたがそれ以上に興味はなかった。
そのまま歩いてその場所から離れることにしよう。
嫌なにおいでもないがあまりにも強い場合は避けたくなってしまう。
「ちょっとそこのお嬢ちゃん」
「気軽に話しかけるなって」
うわ、話しかけられちゃった。魔力強い人ってなんだか偉そうにしてくるから苦手なんだよね。そう思っている間ににおいの主はどんどんと近寄ってくる。
いやいや私は後ろを振り返った。
「やっほ~」
私はその場で凍り付いた。
そこにいたのは、まさしくイケメンと呼ばれるべき存在だった。片耳にかきあげた髪を軽く結んでラフな感じであるがその美貌からそれすらもファッションに見えてくる。人懐っこそうな表情で笑いかけているが切れ長の目をしていることで黙っていればかなりクールな印象を受けそうな青年。彼がいるだけで絵画になりそうなくらい眉目秀麗であり誰もが望むであろう顔だ。
「い、イケメンきたあああああああああああああああああああああ!!」
「へっ?」
私は固まっていた体を無理やり動かして彼に近づき手を握った。そして顔をまじまじと観察していく。こんなに近づいてもきれいな肌で毛穴が見当たらないなんてイケメンはお肌の手入れすら怠らないのだろう。この世の美を集結させたらこうなるに違いない。ここまでの美を作り出せるのなら全員このレベルの顔にしてほしいものだ。
握った手はすべすべで細い。
こほん、とわざとらしい咳払いによって私は現実に戻ってきた。その声は当然私でもなく、目の前の彼でもない。
彼の視線が隣にいたフードを深くかぶった人に向けられた。
ああ、そういえば二人組だった。イケメン君にしか意識が及んでいなかった。
「この女の子がなんやねん」
独特の話し方で彼はぼそぼそと話す。その人はかなり深くフードをかぶっているため顔どころか目や口すら見ることが出来ない。一体前が見えているのだろうかと考えてしまうくらいだがとりあえずなんでもいいだろう。イケメンじゃないだろうし。
しかし、どこか辺だ。
いくら魔力が低い人だとしても魔力は少なからずあるためここまで近づいてにおいがしないなんてありえないはずなのに。
「ねえ、あなたって」
「この子よりも俺と話しよう。俺は東城来也」
私の話をさえぎって、イケメン君が前に出てくる。フードの男は何も言わずにその後ろに隠れるように後ろに回っていた。聞かれたくないなら聞かないけれどこんなに陽と陰の差が激しい人たちは一緒に歩いているほど仲がいいのか。
ん?東城来也ってなんだか聞いたことのある名前。
確か、この国の総長であり東城家の長男の実質世界一番の権力を持っている人物。平たく言えば超偉い人である。
驚いている私を見て伏し目になるイケメン君もとい来也さん。
「私の国のトップがこんなにイケメンだっただなんて最高すぎるんだけど!」
「えっ?」
今まで総長や幹部なんて興味がなくて見たことはなかったがこんなにイケメンがいただなんて知っていたら調べていたのに。国の公式ページを見ていれば見ることが出来たのだろうか、いや総長なんてほとんど国民の場所にすら出てこないくらい見る機会がない存在だ。ネットでなんて気軽に見ることなどできないだろう。
総長であることは嘘の可能性もあるがこの魔力を持っているとしたら納得ができる。
来也さんは笑いをこらえているのか肩が震えている。
「総長と会って言うことがイケメンってなんだよ」
「笑ってる姿もイケメンで最高すぎるんだけど」
くしゃっと顔を崩していてもかなり均衡を保っていて美という感じを隠しきれていない。クールな感じかと思ったら意外とフランクな感じなのだということが分かった。
「正体さらしてどうするつもりなん」
またフードの男が小さな声で話す。
来也さんはそうだったと思い出したようにポンと手を叩く。あきれたようにため息をつかれているのに気にするそぶりもない。
「そうそう、この子新しく幹部にするから」
「はぁ!?」
大きな声を出してフードの男が大きく反応する。それもそうだろう、幹部になるというのは国で数人しかいないトップに立つという意味であり総長を守るために命を懸けて守るというとても名誉のあるとされている職業である。総長になるのは東城家の人だったり他の大魔法使いの血筋という生まれが関係していることが多いが幹部は血筋でなく完全な実力で選ばれるものである。
しかし私も彼のように驚いている。だって私は魔力が多いとはいえ幹部に抜擢されるほどであるとは考えられない。
どうしてという理由は山ほどある。
「どういうことなん?俺に相談もせんとそんなこと決めて、そんなに強い子なんか」
「まあ後々話すからさ」
フードの男に抗議の声を聞き流しているようで来也さんはひらひらと手を振って適当にあしらって話を聞こうとしていない。
私も理由くらいは聞きたいのだけれど。
「俺のこと守ってほしい」
来也さんが真剣な顔をして見つめてくる。
きれいな瞳に映っている私は顔が真っ赤になっていてこんなに照れてしまっているのだと知ったら急に見つめるのが恥ずかしくなるくらいだ。そんな言葉をイケメンから言われることがあるなんて思いもしなかったから動悸が収まらない。
私が今まで想像していた「俺が守ってやるよ」というセリフとは違っているけれどこれもこれで子犬のように見えて可愛らしくもある。
おそらくこのセリフは甘いものではなく幹部になってほしいという勧誘だろう
でも幹部になるなんて命を懸けなければならないし私はまだまだ更なるイケメンの開拓をしていきたいため私は丁重に…
「もちろんやる」
「さんきゅ」
やってしまった。
でもイケメンに頼まれてNOということが出来る人なんて存在するのだろうか、いやいない。
それに幹部ってことは衣食住共にするということになる。そんな魅力的な提案ないだろう。どうして私なのかとかいろいろ気になることはあるがそれ以上に欲望に忠実である。
「ちょ、ちょっと待て。ほんまに理解が出来へんねんけど」
「ナル。俺が総長だ」
来也さんの冷たい言葉に対してナルと呼ばれたフードの男がぐっと言葉を詰まらせる。そして、大きくため息をつく。
そして、私のほうを見る。
「そんなんやからあんたのこと嫌いやねん。しゃあないわ」
顔は見えないが低い声をしていることから怒っていることはわかる。
不機嫌そうにしているナルに対してけらけらと笑っている来也は楽しそうに背中を叩いている。嫌いだといわれてこんな風に気にしていないなんて優しいということなのだろう。きっとそうだ。
「俺はナル。あんまり関わらんといてほしいわ」
彼はおそらくフード越しに私の目を真っすぐに見ながら
私を突き放した。
フードに空いている小さな穴から見える目は暗くてほとんど見れないが、なんとなく心が乱されるような感覚がした。イケメンかどうかもわからないような人なのに、来也さんを見たときよりもずっと彼の存在が気になってしまっていた。