第7話 イージートラップ
「くわちゃん、今ね・・・」
バイクを脇へ停車させ電話に集中する。
「ママ、どうした、なんかあった?」
「今ね、襲撃受けてるの。エビちゃんが応戦してるけどたぶん無理。人数で敵わないわ」
トモママの焦りが伝わる。近くにこと美がいるのか、息遣いが聞こえる。
「俺が出ていくのを待ってたのか。でもどうしてそこの場所が・・・?」
ここで俺は気づいてしまった。コジローを連れてくる時誰も出てこないのを不思議に思ったが、それが罠だった。発信器でも付けられていたか。しまった、油断していた。
「ママ、コジローもいるんなら、首輪を見てくれ、GPS発信器でも付いていると思う。すぐに戻る!」
「あったわ、このまま壊すわよ。戻るって、メモリを届けるんでしょ?」
ママは首輪から発信器を外し、踏み潰した。
「いや、メモリは後回しだ。これは俺のミスだ。うかつだった」
電話を切りギアを入れ直す。リヤタイヤをホイルスピンさせながらUターンさせた。ずっと後ろを走っていた車とすれ違う。何やら怪しげな男が二人。おそらく尾行だろうな。
その車も方向を変え追ってくる。
「ええい、こんな時に!」
無理やり脇道へ入り込みいくつかの段差を越える。それでもお構いなしに追ってくるようだ。
なるほど、尾行だけではないらしいな。となると、俺が教授から受け取った物を持ってるってわかったか。
バイクの向きを変え、敵と正面に向き合う。ベレッタを取り出し構える。さすがにゴム弾ではパンクさせるのも難しいか。ならば・・・。
車のフロントグリルに向かって4回トリガーを引く。物凄い勢いで水蒸気が吹き出す。
狙い通りラジエターを貫通したようだ。
再度スロットルを回し方向を変え全開で走り出す。
これで足止めはできるが・・・。
今走ってきた道ではいつ敵と遭遇するかわからない。俺のは多少の林道でも走れるバイクだ。やっぱりこいつで来て正解だった。枝にぶつかり、砂利で滑りながらママの店を目指す。
ママの店に着くと驚いた。もうめちゃくちゃ。
「なんだ、ランチャーでも使ったか」
周りを警戒しながら店内に入る。そのままパニックルームに駆け込む。ロックを解除しドアを開ける。
「くわちゃん!」
ママが第一声を発する。
横にはコジロー。隅にはエビ太が横になっている。大量の汗をかき、苦しんでいる。出血の跡もある。
「ママ、エビ太は?」
エビ太に駆け寄り額に手を当てる。発熱している。見ると肩口に傷。腹部には内出血か。
「ナイフで肩を刺されてたの。それで動けなくなって。お腹も怪我してるわ。ごめんねくわちゃん、私がいながら。こと美ちゃんまで連れて行かれちゃった」
「ママのせいじゃない、これは俺の責任だ。無防備すぎた、ごめんママ」
ナイフで貫通しているのか。骨折と同じだ。熱は出る。腹部の怪我が気になるが。
「しゃ、社長、すみません、こと美さんを・・・」
エビ太が目を開け小さな声で話し出す。
「無理に話すな。骨に響くぞ」
汗を拭き取りながら涙が出てくる。
「あいつが、たけTがいたわ」
動かせる腕に力を入れるエビ太。その手を握り返ししっかりと力を入れる。
「え?なんであいつが」
たけTとは切っても切れないのか。裏で動いているとしたら・・・。嫌な予感しかしない。
「ママ、エビ太を頼む。いつものところへ連れて行って」
仕事柄危険とは隣り合わせ。いくつか闇で動く医者も知っている。
「わかったわ、エビちゃんは任せて。くわちゃんはこと美ちゃんを。それとこれを。くわちゃんに渡せって」
ママから一つのスマホを受け取った。これで連絡するってことか。もちろんこちらの居場所も筒抜けだろうな。そしてそのスマホから着信音が響いた。
プライベートアイズをご覧いただきましてありがとうございます。
ここ数日更新していなくて申し訳ないです。
久しぶりの投稿ですがこれからも完結に向けて進めていきます。
よろしくお願いします。