4 就職活動
「しっあわせはー歩いて来ない……」
死んだ深海魚の様な顔で歌う。
木の枝を指揮棒にして振り回す。
端から見れば陽気な青年だが、内心は朝ドラ見たいにドロドロな精神状態だ。
「お腹すいたなー……次の死因は餓死かな…」
森の入り口で大きめの平たい岩で寝転がって考える。
---ピピピ---
急に頭の中で不思議な音が鳴った。
---湊さん、聞こえますか?---
「…テレパシー?なんなんだこれ?」
---良かった、繋がりました---
---私です、湊さんを担当した神です---
「………………………………………」
---あのー?聞こえてますか?---
---湊さん?もしもーし!---
「おい研修神!俺にまず言うことないのか?」
---えっ?……………研修神?---
「おい新人研修神」
---……はい、申し訳ありませんでした---
「そうだよな、で、なんの用だ?」
---ご存じの通り私の手違いで『転生』ではなく『転移』させてしまった対処の連絡です…---
「やっとかよ、まあタイミングが良いっちゃ良いんだけどさ、悪い意味で」
「はやく違う世界に転生させてくれよ」
---あの…非常に言いにくいのですが、湊さんにはそのままでいて頂く事に決定したんです---
「…………はー??ふざけんなよ!!」
---ひぃっ!ごめんなさい、ごめんなさい---
「知ってるのか?俺しか魔力無いやついねーんだぞ、100年に一人の存在だぞ」
---はい、なのでもう少し後に恩恵を授ける形を取らせて頂きますので辛抱してください---
「今よこせ!秒でよこせドジ神!」
---まだ上司の許可待ちなんですよ、ごめんなさい、貰い次第連絡しますので---
「神の上司ってなんだよ……はやくしてよ……」
---あっそろそろ通信制限来ちゃう……---
---ピピピ---
「え、おい!待てよ…………切れた…」
テレパシーは終わった。
だが俺に希望が、光が差した気がした。
「神々の恩恵………間違いなくチート特典フラグだよな?」ウキウキ
俺は自分のチョロさに少し恥ずかしくなったが全然気にしない。
てかやばいな、そうなってくると転移で良かったって錯覚するな。
「異世界最高ーーーー!!!」
気が軽くなった俺は王都に戻ることにした。
門兵もエラーノさんと来たときの人だった為、スムーズに入れてくれた。
「取り敢えずララを探すかー」
そう思った矢先、目の前にララを発見した。
「ユキ。…………はぁはぁ。」
「ごめんララ、急に飛び出して」
「ユキは何も悪くないよ。私の認識が甘かったわごめんなさい。」
「それこそララが謝ることじゃないよ、それより王都を案内してくれるんだよね?」
「うん。それじゃあ行こっか!」ニコ
(笑顔がLED電球より眩しいぜ)
「この商店通りは飲食から衣類までとても充実してるわよ。」
「なあララ、さっきから思ったんだが商人の中には若い人はいないのか?」
「……………うん。高齢や戦う事が出来なくなった冒険者や兵士の方などが次の人生として行う風潮が……ね。」
「それが顕著に表れてるのが『男』か………」
「まあただの風潮だし大丈夫よ。加治屋とかなら若い男性もいるみたいだし。」
「それは特別なスキルがあったら………だろ?」
「……ええ。けどきっと何とかなるわ。」
「だといいんだがな………」
ララに一通り王都を案内して貰い、大分頭の中で地図が形成されてきた。
しかし気になることが………
「ララ今日はありがとう本当に助かったよ」
「えっ?まだ少ししか案内してないよ?」
「もう十分だよ、このお礼はいつか絶対する」
「いいよお礼なんて。それより本当に大丈夫なの?」
「ああ、これ以上俺といるとララまで変な目で見られるかもしれないしな」
「なんだそんな事なら私は気にしないよ。」
「俺が嫌なんだ、こんな魔力無しに、優しくしてくれた人に、迷惑かけたくないんだ分かってくれ」
「……………そう。分かったわ。」
「ごめんな、本当に絶対今度お礼するありがとう」
俺はララにそう言い残しその場を後にする。
噂ってのは本当にウイルスのように広がるのが早いな。
鈍感な俺でも通りすがる人が俺に向ける目を見ると嫌でも分かる…。
そんなに魔力って大切なのかよ…くそっ。
「取り敢えず一門無しはやばいよなー」
俺は決めた、と言うよりアホ神から連絡が来た時点で決めていた。
前世ではしたことなかった、初めての挑戦
「さてやるかー、就職活動!」
俺の望みは、ボーナス多めの完全週休二日制。
さらに言うなら残業は程々で昇給あり。
この世界の雇用形態どんなんだろ………。
「あー無理、とっとと消えな」
「ふざけんなよもやし!立場をわきまえろ!」
「ごめんねー、うちはカツカツなの」
「落ちこぼれを雇う訳ないだろ!」
心がバキバキに折れた。
初恋の子に振られた時のようだ。
(ちくしょー……グス………バカや…ろ……グス…)
ありとあらゆる商店の方に頭を下げたが、俺の顔を見ると態度が変わり罵声を放つ。
空色が柑橘系の果物と同じオレンジ色になっていた。
「今日も何も食べてないなー」
あまりの空腹と虚無感で体を支えているのがやっとの状態だった。
ぼーと広場の噴水をベンチから見つめていると
「ユキ。おーいユキ。」
声の方向に顔を向けるとララが隣に座っていた。
「ララ?天使が迎えに来たのかと思ったよ」
「何言ってるの。それより仕事見つかった?」
「駄目だよ………って何で知ってるの?」
「うーん。この辺は噂好きな人が多くてね。」
「…………………………………………」
顔を下にうつ向く。
「落ち込ませようとした訳じゃないわよ。ちゃんと朗報持ってきたんだからー。」
「えっ?朗報って………」
「ユキを雇っても良いって所あったよ。」ニコ