表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

3 もやし(魔力無し)

 18歳でこの世を去ることになった俺。


 神様が本当にいるとは思いもしなかった。

 各世界には魂の容量が決まっており、そのバランス調整がお仕事らしい。


 人手不足(魂)な異世界に転生するはずが、新人研修中の神様の凡ミスで『転移』した。

 俺の知っている物語とかだと物凄いチート特典があるはずなのに……。


 しかし期待や希望はすぐに粉末状になった。


 何故なら俺はこの世界で唯一『魔力ゼロ』。


 知識はそのままだけど貧弱で魔力がない。

 どうやって生き抜いていけばいいんだよ……。




「あっユキくん!!」


 俺は走った、無我夢中にひたすらに走った。

 顔はトマトより赤いだろう。

 それでも涙を置き去りにして必死に走った。


「ちくしょう……グゥ……なんでだよ…グズ…」


 エラーノさんのギルドを飛び出し、人気のない路地裏で膝を抱える。


「バカ見たいじゃねーかよ、何が勇者の素質だよ、チート特典くれよ……」ポロ



 俺は高校サッカー部での引退試合でもこんなに泣いたことはなかった。

 それほど胸を踊らせた自分が情けなかった。


(色々ありすぎて疲れたなー………)


 一通り泣きつかれ静かに睡魔に襲われた。


(帰る場所もないし……これから……どうし…zzz)



「……ュキ………ユキ………ユキ。」


 俺を呼ぶ声で目が覚めた。

 もう辺りは暗くなっており夜まで寝ていたのだろう。

 声のする方を見上げると


「ララ……………」

「やっと見つけたんだから。どれだけ探したと思ってるのよ。」

「……何で俺を?」

「それは…心配になるじゃない。それだけよ。」

「そうか、ありがとう。もう大丈夫だよ」

「大丈夫って。目が魔人見たいに真っ赤じゃない。」

「ああ、花粉症なんだよ俺」

「なによ魔力がないくらいでメソメソと。」

「ははっ、そうだよね別に魔力がなくても生きていけるもんね」

「そうよ。…まあ実際に魔力がない人なんて初めて見たからあれだけど、何とかなるわよ。」

「……………………………」


 ララを良く見ると足元がとても汚れている。

 きっと必死に探してくれていたのだろう。


(別に冒険者になれなくても死ぬわけじゃない。俺はこのファンタジーを生き抜いてやる)


「ララ、本当にありがとう元気出たよ」

「そう?なら良かったわ。それとギルド長から聞いたのだけどユキは遠い異国から来たって本当?」

「………ああ、そんなところだよ」

「なら明日私が王都を案内してあげるわ。」

「良いのか?凄く助かるよ」

「じゃあ無事も確認出来た事だし、明日ギルドにお昼集合ね」ニコ

「分かった」

「それじゃあねおやすみユキ。」


 ララはそう言って微かに見える灯りの方へと歩いていった。


(ララは本当に優しい子だなー、いつかこの埋め合わせが出来たら良いな)


「てか今日どこで寝れば良いんだよ……」


 テンパって路地裏に来たが、良く見渡すと夜のせいもあり少し不気味だ。

 チンピラに襲われたら怖いし、灯りのある所に行こう。


 王都はとても広い。車を使っても回りきるのにとても時間が掛かるであろう広さだ。

 その中でも俺が今いる場所は中心部より離れた場所だと思われる。

 なんならちょっとしたスラム街じゃないかとも感じた。


「おい兄ちゃん、妙な格好してるな!」

「……妙ですか?」


 チョロチョロと歩いていると、体格の良い強面の男が話し掛けてきた。


「もしかして貴族のガキか?」

「……貴族?いや無一文の旅人だよ」

「だよな、貴族がこんな時間にフラフラしてねーよな」


 男は残念そうな顔でどっかに行ってしまった。

 それにしてもアロハシャツはこの世界では妙な格好なのか………。


 少し歩いた所に雨風をギリ凌げる程度のドアのない小屋を発見した。


(レンガ造りで硬そうだけど今日はここで寝よう)


 誰もいない事を確認してその小さな小屋に入って横になった。


(これからどうしようかな、冒険者が駄目でも前の世界の知識を生かした商人にでもなるかな)


 そんな事を考えながら俺は眠りについた。




「小僧!起きろ小僧!」


 体を揺さぶられ眠い目を擦りながら起きる。


「…………おはよう…ございます」

「おい小僧、はやくそこから出ろ」

「………………………はい」


 俺は男に言われた通りすぐに小屋を出た。

 するとその男が小屋の中で、ズボンを下ろして俺は絶望した。


「………俺、トイレで寝てたんだ………」


 確かに少し異臭がしていたが、疲労に勝てず気にしなかったが。


「それよりやばい、もう昼頃だろ」


 俺は急に正気に戻り、ララとの約束であるギルドに走り出した。

 明るい時間帯ということもあり、あまり迷わずにギルド前に辿り着く事が出来た。


(多分遅刻ではないよなー)


 "ザワザワ" "ガヤガヤ"


 人が多く騒がしいギルドの中に入った。


「お!あいつだ!もやし(魔力無)だぞ!」


 一人の冒険者らしき男が俺を指差して叫ぶ。

 その瞬間、騒がしかったギルドが嘘のように静まり返った。


「………………………………えっ?もやし?」


 俺は戸惑い甲高い声が出た。

 合唱コンクール本番以来だ。



「がはは、確かに気の抜けた間抜けだな」

「私、落ちこぼれの烙印であるもやし人間初めて見たわ」

「魔力無しってゴブリンと変わんねーな」

「あははははははは!!!」


 見ず知らずの人が俺を罵る。

 明らかに子供まで俺をバカにする。

 昨日の適正無しを皆知っていたのだ。


「冒険者になれない奴がギルドに入っちゃ駄目ですよね、すみませんでした」


 俺は泣きそうになりながら、頭を下げこの場を出ようとする。


「いやもやしはギルドと言うより王国出入り禁止だろ」

「あははははははははは!」


 振り返らず出口へ足を速める。


「待ってユキ。」


 俺の袖を掴んでそう言ったのはララだった。


「……………ララ?」

「ごめん。こんな風になるとは思ってなくて、待ち合わせをギルドにしちゃったんだけど」

「気にしないでよ!俺の存在価値が分かったし良かったよ」


 俺はまた走り出した。


「待ってユキ。」


 ララの声を無視してひたすらに走り出した。

 王都も飛び出し、気が付いたら人気のない山の麓まで来ていた。

 とにかく人と会いたくなかった……。



「もう一回死んでみようかな……………」


 ふと空を見上げて呟いた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ