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マリーを見ているといつも目が離せない。なんというか、小さな子供を見ているようで。
ある日彼女は私の城に訪ねてきた。しかし、こんなことはよくある。人間が面白がって魔族の城に来ることなんて。
だから私は全く相手にしなかった。どうせ思い付きの行動だろうと思った。
しかし何日たってもマリーは来るのを止めない。挙げ句の果てに大荷物で城門の前に陣取られた。
こんなことは初めてだった。でも人間だ。だから容易に信用してはいけない。……いけないとわかっていた。だが私は彼女に少し興味が湧いた。
年頃のご令嬢と思われたマリーはどうしてこんなところに毎日通うのか。普通、ご令嬢は箱入りにされるくらい可愛がられているらしいがこんな時間まで森の奥に来て誰も心配しないのか。
マシュマロが決め手となって僕は転送魔法を使いマリーを城に入れた。
そしてライラ国を守るために僕に仕えたいというマリーが面白いと思った。彼女は私の知っている人間と違う、と。
しかしその後、カミラが要らぬ小言は絶えないが。なんとか楽しくやっている。
*****
「朝起きたら……あの子がいたんだが……」
彼女が来て2日目の朝、デトリックはいつもより低い声でカミラ向かった。するとカミラはデトリックとは対照的に声高々と軽い調子で答えた。
「おはようございます。いやぁ、王が寝起きが悪いもんですからねぇ。私の仕事を代わってもらいました!」
「これはお前の仕事だろう。……目を覚ますとあいつがいて……目覚めが悪い」
「目の前に可愛らしい女性がいて目覚めが良いって?でしょう!マリーさんにも伝えておきますね」
「おいっ、そうはいってないだろう!」
マリーのせいでいつも以上にカミラはデトリックをからかう。そのカミラの表情はとても生き生きしている。終いには「これ、これから毎日ですからね」と言い、デトリックはため息をついた。
「魔王を起こしに来る彼女の身にもなってみろ……」
「あれま、これは効果なしですかね。しかし、これからが期待ということで」
カミラは思惑通りにいっていないこと気づき、これは対策を作らねばと反省した。
「おはようございます!今日もよろしくお願いいたします」
マリーは深々とお辞儀をして二人がいる食堂に入ってきた。マリーが来たとたん、デトリックもカミラも頭の中で考えていたことを止めマリーに挨拶をした。
「カミラさん、あの私あんな仕事で良いんですか?もう少し扱き使っても良いのですよ?」
あんな軽い仕事とライラ国の安全が釣り合うはずないとマリーは思い、なんでもいいからキツい労働をやるべきだと思っていた。
「あれがマリーに適しているんですよ。ライラ国は攻めないのでマリーは自分の仕事を全うしてください」
「は、はぁ……」
(この職場はユルすぎない?)
返事をしながらもマリーは魔王らしからぬ仕打ちに動揺が消えないでいた。こんな優しい魔族が本当にいるとは。
(ゲームのイメージと全く違う)
「お前、朝は少し付き合え。城のことや魔族のことを一通り教えよう」
「はい!」
本当に違う、と心の中で思いながらマリーは嬉しそうに声をあげた。