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マリーは大きく息を吸い込んで叫んだ。
「掃除が終わりましたわっ!これで認めてくださいな!」
「掃除をしたくらいで認めるとは言っていないが」
「そ、そんなっ!では何を……」
「今日はもう休め。ずっと外にいたから疲れているだろう」
思っていたより認めてくれるには時間がかかりそうだと肩を落とすマリーだった。
マリーが用意された自室へ戻ろうとしたとき、デトリックがぽつりと「こんなに綺麗になっているとは」と呟いたのをしっかり聞いていた。
つい嬉しくてにやけてしまいデトリックにバレぬように手で口元を覆った。
「我が王よ、それは素ですか。計算ですか」
「は?何を言っている」
こてんとデトリックは訳もわからず、カミラの方を見る。カミラはため息をつきながら、そういう仕草も魔王らしくないと思った。色んな意味でデトリックは魔王らしくない、と。
「良いですか、王は天然過ぎます。これでは子供も泣かず笑いかけてきますよ。もう少し……こう、冷徹な感じを出すと……まあいいです」
「お前が何を言いたいのかがわからんが、魔王らしく頑張ろう」
「だからそういう拳を作ってよしっ、という感じがなぁ……」
ぶつぶつとカミラの小言は絶えないが、デトリックは無事にマリーが自室へ向かったことにほっとした。
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マリーは自分の部屋が豪華過ぎることに驚いている。今まで、こんな豪勢な部屋を与えられたことがあっただろうか。いや、ない。
ベッドはプリンセスベッドで屋根がついている。その屋根のところからベッド全体を包むように大きな白のレースの布がかかっている。女の子が誰しも憧れるものである。
それにベッドの上には可愛らしいクマのぬいぐるみ、ソファーやテーブル、クローゼットもピンクと白を基調とした……いわゆるゆるふわ系だった。
(これに喜ばない女子はいないよね。でも使用人にこんなすごい部屋を与えてくれるなんて)
マリーは思いっきりベッドにダイブしてクマに抱きついた。そして今日あったことやこれからどうすべきかをいろいろ考えているうちに瞼が重くなり、いつの間にかすやすやと眠った。
このときのマリーは王都が大騒ぎになっているとは思いもしないだろう。