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青と黒のボーダー

作者: 原田朱里

「女なら、これから一芸は身に付けておきなさい。」


母の口癖だった。


女に生まれたなら、外で働くでもなし、家に入るのだから、そこで一芸を身に付けておけば、将来何かの役に立つ。

という意味だと思う。



まだ、今でいう小学生になるより前から言われ続けた言葉だ。



かく言う母も、華道の先生になり地域の人を家に招いて教室を開いていたので、私もなんとなく華道を続けていた。



当時としては珍しくもなく女学院を卒業して、1、2年はそこまで大きくはない会社の受付嬢となり、そのたいして大きくはない会社の社員と結婚をした。


時代は高度経済成長期であり、夫の収入もあがり、大きくはなかった会社も名前は聞き覚えのあるような会社に成長していた。



もちろん、結婚後は家に入ったが母の教えを守り華道は続けて、そのうち、母と同じように家で教室を開くようになった。







ガタンゴトンと揺られる電車に乗り、大阪に向かう。

大阪にある百貨店でショーウィンドーに飾る生け花の作成を任されている。


花は既に打ち合わせを終え、先方に到着しているだろうから、体一つでいいから楽でいい。




目の前には、孫と同世代くらいの青年が座っている。

娘には、華道を勧めたが娘は大学を出てて、今も外で働いている。孫も同じように大学を卒業するだろう。



「女なら、これから一芸は身に付けておきなさい。」

という言葉も古くなってしまったのか、大学を出て、お勤めするのも一芸なのかと納得してしまいそうな自分もいる。



電車は終点に着き、ドアが開く。

人はゆっくりと腰をあげ、各々の道に向かう。


私も目的の百貨店に足を進める。

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