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異世界、通訳、女の子。  作者: 薄紅時雨
1章 通訳者
9/17

パワーレベリング

今日は、このみの家で三人でお泊りだ。


「料理は私に任せてください!今日はパーティーですよ!」

「あたしも手伝うって!このみもすごく頑張ったんだから。」

「俺も手伝うぞ。」


キッチンには肉や野菜、小麦粉のようなもの、そして調味料。


「半蔵さん、タマネギを切ってください。」

「分かった。」


この世界のタマネギでも涙が出るのか、と考えながら包丁で切り刻んでいく。

みじん切りだから、こうやって・・・


「半蔵、料理のやり方分からないの?」

「いや、みじん切りってこうやるんだよな?」


流石の俺も、これくらいの料理の経験はあった。

何か間違っていたのだろうか。


「魔力包丁貸して。カット、モードみじん切り!」


包丁がカレアの手から離れ、大きく変形した後にタマネギを自動で切り刻む。

この間、僅か1秒。


「こんなに便利なのか・・・!」

「半蔵は休んでていいよ。」


足手まといになると感じた俺は、ソファーで休むことにした。



「おいでおいでー 職業証をー キャッチ!できないな。」


料理が完成するまで暇だったので、職業証を取り出した瞬間に素早くキャッチする「モテ仕草」の練習をしていた。

カレアやこのみは簡単にやってのけるのだが、俺はどうもまだ慣れない。

まあ、小さい頃から職業を持っている人達と比較するのはおかしいのだが。


「キャッチ!できたー!!!」


「半蔵うるさいぞ。料理出来上がったから、準備手伝って。」


できないのが悔しくて、つい熱くなりすぎてしまっていた。

俺は布巾でテーブルを拭く。


「テーブルを拭くのはこうやってやるんですよ。魔力布巾を貸してください。クリーニング、ターゲットヴィジブル!」


布巾が自動でテーブルを拭いてくれる。

その間、僅か3秒。


どうやら、この世界の家事に慣れるまで、相当苦労することになりそうだ。

このみの家の中がやたらと綺麗なのは、こういう特殊なスキルのおかげなのだろう。

いや、このみの性格の問題だろうか。



「祝い!ギルドレックレス(無謀)結成!今日は宴だよ!」



ピザ、焼いた肉、オレンジジュースがテーブルに並べられている。


「いただきます。うまいぞ!この世界の料理は最高だ!」

「お口に合うようで良かったです。」


本当に、この世界は料理が美味しくて助かる。

食事が美味しくないと、何もかもやる気が出なくなるのだ。

食事の文化に関しては問題なし、と。


「ねえ半蔵、明日は半蔵のレベルを上げようよ!」

「ギルドのクエストか?」

「クエストをクリアしても経験値は入らないよ。狩りに出かけるの!」


この世界では、クエストはお金や物品を得るためのものらしい。

ネトゲのように、クエストアイテムを大量購入してクエストを周回することで、一気にレベルが上がる!なんてことはないのだ。


「どこに狩りに行くんだ?」

「そりゃあ、セプテスの獣でしょ!」

「カレア!そこだと半蔵さんが死んでしまいますよ!」

「このみなら半蔵を守りきれるでしょ。空飛べるんだし。」


今、カレアはものすごいことを口にした。

このみが空を飛べる?

まあ、レベル200を超えれば当然のことなのかもしれない。


「このみ、空を飛べるのか?スキルか?それとも・・・」

「スキルです。ハイジャンプとグライディング(滑空)。木の上から高く飛んで、滑空して別の木の上に着地します。これなら敵の攻撃を受けません。」


鳥のように自由に飛べるわけではないらしい。

だが、これで俺の死は免れるわけだ。


「それより、カレアはソロで大丈夫なの?獣って数も多いし、カレア一人じゃ・・・」

「このみがいない間、あたしはいつも一人で獣を狩ってるんだよ。このみのレベルに追いつくために。」

「やっぱりそうなのね。カレアが死んじゃったら、私・・・」

「あたしはね、このみを守るために強くなりたかったの。あたしは大丈夫だから、安心して!」


そりゃあ、このみのような女の子がいたら、誰だって守りたくはなる。

でも、カレアだって本当は守られたいはずだ。

いつも強がっているカレアだけど、何かとずっと葛藤し続けているのは、彼女を見ていれば分かる。


「はー。お腹いっぱいー。半蔵、あとでシャワー浴びるしょ?シャワーの浴び方も知らなさそうだから、あたしが一緒に入るよ。」

「ああ、頼む。」

「シャワーの浴び方は昨日教えたじゃないですか!嘘つき!」


結局、シャワーはカレアとこのみが一緒に浴びた後、俺が一人で浴びることになった。

そして、明日の話をした後に、ベッドに入ることになった。


「あたしはこっちで寝るから。半蔵、このみをよろしく。」


そう言って、カレアは向こうの部屋へ行ってしまった。


「この家にはベッドが二つしか無いのか。」

「向こうはカレア専用で、こっちが私のベッドです。カレアは一人で寝るのが好きなんですよ。」


ソロギルドに入ってたし、狩りもソロだし、カレアは一人が好きなんだろうか。

あるいは、()()()()()()()()()()()()()でもあるのだろうか。



―――――ベッドの中にて



「こうやってこのみと一緒に寝るの、二回目だな。」

「やめてください!恥ずかしいです・・・。」


普段はツーサイドアップに結ばれている紫色の髪は、今はほどいてロングヘアーになっている。

こうして近くで見ると、少しクセっ毛な感じもする。


俺がからかうたびに、このみは乙女な表情を見せる。

それが可愛くて、愛おしくて、もっとこのみの乙女な部分を見たくなる。


「もう寝ますよ。おやすみなさい。」

「ああ・・・ 今日は疲れたしな・・・。」


そういえば、俺はまだここに来てから3日目だ。

新しいことづくしで、大変だけども楽しい日々。

もう、転移の時のことなんてあまり覚えて・・・




―――――暗闇の中



真っ暗でよく見えないな・・・

あ、光だ。あっちに行けば何か・・・


「ようこそ、神の世界へ。」

「このみ・・・?」


そこにいたのは、このみだった。

でも、何か様子がおかしい。


「私はこの世界の神です。そして、あなたは・・・」

「お前はこのみで、俺は半蔵だ。」


このみが無表情のまま、俺を強く抱きしめる。

ものすごい力で抱きしめてくる。苦しい。このまま潰れてしまいそうだ。


「私は、愛で人を縛ります。神は、愛で人を縛ります。」

「分かった・・・ 離してくれ・・・」



「神は、愛に縛られ―――――」




―――――ベッドの中



「おはよう・・・ ってこのみ、何抱きついてんだ。苦しいから離してくれ・・・」

「ふぁーっ・・・ おはようございま・・・」


沈黙。

このみはこの状況を知って、呆気に取られている。

しばらくして、このみは俺の体から離れる。


「悪い夢でも見てたのか?」

「はい・・・。 すいません、私としたことが・・・。」

「気にするな、お互い様だ。」


夢の内容、何だっけ。

神は、愛に縛られる・・・?

まあ、現実であれだけ強く抱きつかれていたら、夢も変なものになるのだろう。



「おはよう、カレア。」

「おはよう半蔵。歯磨きの仕方は分かる?」

「ああ。昨日このみから教わった。」


魔力を帯びた洗面台の前で「ブラッシング、マイティース」と言えば、歯ブラシも無しに口の中が綺麗になる。


この世界では、魔力の加工がなされた物に対して、「アイテムスキル」を発動することができる。

職業証にスキルを所持する必要が無い代わりに、魔力系の品物の価格はかなり高いものとなっている。

だが、カレアもこのみもお金持ちなのだ。

仲間が金持ちで良かったと思う。



「ここから、街の間を転移できるんだよ。ポラリスからセプテスへの転移は、25万シオン。」


25万シオンは相当な額だが、俺のためにカレアが払ってくれた。

エレベーターのような空間に入ると、アナウンスが聞こえてくる。



「テレポートを開始します。5、4、3、2、1・・・」



一瞬目の前が暗くなった後、空間の中の色が変わる。

その後扉が開き、出た先はセプテスの街中だった。


周りで話されているのは、主にセプテス語。

この街では、共通語であるポラリス語で話す人は少ないようだ。

木造建築が多くて自然にあふれていたポラリスとは違い、ここセプテスは人工的な雰囲気を感じる。

さっそく、ポラリス語で獣の森のパーティーメンバー募集の声が聞こえてくる。

この世界にパーティーのシステムは無いが、「ギルドは違うけど、一緒に狩りをしたい」という人達が複数人で狩りをすることを「パーティー」と皆呼んでいる。


「パーティーに入ったほうが安全じゃないのか?」

「今日は半蔵がいるから、無理無理。」


そういえば、そうだった。

ネトゲでも、足手まといになる弱いプレイヤーはパーティーに入れてもらえない。


俺たちは早速街を出て、獣がいる森へ向かった。

森までの道には、強いモンスターは存在しない。

だが、今向かっている「血飢獣けつきじゅうの森」には強くて狂暴な獣系モンスターがたくさん住んでいる。

血飢獣とは、血に飢えたアンデッド系の獣のこと。

魔王軍の中でトップの繁殖力を持っており、狩っても狩っても大量に湧いてくるらしいのだ。


そんなこんなで、森の入り口に到着する。


「これを使って、半蔵を固定する。」


カレアがマジックバッグから器具を取り出し、このみと俺をドッキングさせる。


「このみ、緊張しないか?」

「どういう意味でですか!」


そういう意味で緊張しているのか、このみは。

でも、俺はこのみ、そしてカレアを信じている。


このみが木の上にハイジャンプしたら、狩りがスタートだ。

カレアは獣と戦いながら、最良のスポットへと向かう。

カレアの攻撃力は凄まじく、一、二回斬るだけで獣が死んでいく。


おまけに、カレアは「ミッドレンジタイプ」の戦い方である。

カレアが習得している剣技は、波動を使って敵を蹴散らすものが多い。

剣の長さより遠い敵に攻撃できるため、獣の攻撃を受けずに狩りをすることができるのだ。


このみが木の上に止まった隙に、俺は職業証をうまくキャッチしてレベルを確認する。

このみの旧ギルドのマスターの「介錯の門」を突破した時点ではレベル85だった。

それが今は87。

最良のスポットで狩り続ければ、今日だけでレベル100は行くのではないだろうか。


狩りに来ている人間がとにかく多い森だが、カレアが言う最良のスポットは空いていた。

そこには、木に囲まれた中に円状の草むらがある。

カレアが草むらの中心に立っていると、カレアに向かって四方八方から獣が押し寄せてくる。


一方俺たちは、木の上に上ってくる獣からひたすら逃げている。

着地場所にいる獣は、このみが短詠唱の魔法で木から落とす。

この森には空を飛ぶモンスターが居ないため、安全に狩りを行うことが出来ている。


空を滑空していると、俺たちの近くで狩りをしている人が見えた。

空高くから剣の雨を降らせ、獣達に攻撃しているようだ。

ものすごく強そうに見えるが、あのスキルは何なのだろうか。


「あの剣を降らすスキル、強そうだな。」

「似たようなものなら、半蔵さんでも習得できると思いますよ。」


似たようなもの、という表現が気になるが、習得はできるらしい。


「トレーニングが必要か?」

「いえ、前提スキルを習得すれば大丈夫です。『アイスレイン』と『スラッシュ』が前提スキルです。剣を降らす『ソードレイン』を含めて、えーっと、12と5と15で・・・」

「32ポイントか。俺はアイスレインとスラッシュを習得できると思うか?」

「『スラッシュ』はカレアが使っていて、『アイスレイン』は私が使っています。実際に目で見たスキルは習得しやすいですよ。」


滑空中に、俺は再び剣の雨が降るのを見る。

その近くには、高くジャンプしている幼い少女の姿。


「今、あの剣の雨の近くに小さな女の子がいなかったか!?」

「あの子は刹那せつなさんです。ソロでここの獣を狩っているんですよ。剣の雨も彼女のものです。」


背が低くて、とても幼く見えた刹那という少女。

露出が多い忍者のような服装をしていた気がするが、実は大人なのだろうか。


「その刹那さんとは知り合いなのか?」

「はい。パーティーを組んで一緒に戦ったことがあります。最悪な人でしたけど。」


最悪な人・・・?

幼い少女の姿をして、中身は真っ黒なのだろうか。


「何が最悪だったんだ?」

「彼女はパーティーメンバーのことを一切考えていません。連携を考えずに自分勝手に行動して、私たちをさんざん振り回した挙句、最後はソロでいいって言って去っていってしまいました。」

「それは最悪だな。」


刹那という人が一体何者で、何のためにここでレベル上げをしているのかが全く分からない。

彼女がもし勇者になっても、ソロでは魔王軍の領域で戦うことはできない。

そもそも、彼女にとってはレベル上げの行為そのものが目的なのかもしれない。

この世界で狩りは人生の一部であり、趣味になりえる存在でもあるのであろう。


「ちょっと休憩したいー!このみ、半蔵、街に戻ろうー!」


カレアがそう言ったので、俺たちは一旦セプテスの街に戻り、休憩することとなった。

俺のレベルは、僅か1時間で87から96まで上がっていた。




―――――セプテスの街



ここセプテスは、ポラリスと同じく海に面している街だ。

海の向こうには、こことは別の大陸があるのだろうか。


そもそも、この世界の太陽が沈まないのは何故なのだろうか。

その答えは、大体予想がついていた。


「俺がいた元の世界では、一日のうちに太陽は東からのぼり、西へ沈んでいた。ここは違うよな。太陽は明るさが変わるだけだ。」

「一日で太陽がのぼって、沈む?それだとこの世界に太陽が落ちてきて終わるんじゃないの?」


やっぱりそうじゃないか。

この世界は、「平面」なのである。

地球のように、丸い星ではない。


「俺が生まれた地球って星はな、丸かったんだ。」

「丸い?転がり落ちないの?」

「星の中心に向かって重力が働いているから落ちないのだ。」


「半蔵さん、元の世界の星や太陽は誰が管理していたのですか?」


このみが険しい顔でそう聞いてくる。

無理もないだろう。この世界には「管理者」がいるはずだから。


「俺が元いた世界には、管理者は存在しなかった。太陽の周りを星が回っている。その太陽も、何かの周りを回っているはずだ。」

「めまいしないの?」

「全く問題はない。そういう法則で世界が動いていたからな。」


「半蔵さん、この世界のことが知りたいんですね。ここセプテスには図書館があるので、そこへ行ってみるといいと思います。」


この世界の文献を読んだことはない。

俺の言語スキルは、会話だけでなく読み書きの能力も習得することができる。

俺たちは、図書館で休憩することになった。




―――――セプテスの図書館



「カレア、すごい汗ね。狩りが終わっても汗が止まってないけど、大丈夫?」

「大丈夫じゃないかも・・・。ちょっとトイレに行ってくる。」


カレアは多汗症なのだろうか。

トイレではなく、病院かどこかへ連れて行った方がいいような気がするが、カレアの様子を見る限り、大丈夫なのだろう。

急ぎながらも、余裕な顔をしてトイレに向かっていたからである。


カレアがいない間、俺とこのみは本を探していた。


「これとかどうですか?『イダルの神と、世界について』。どちらかというと子供向けの内容ですが、難しい本より全然いいと思います。」

「ああ、その本にする。基礎さえ分かればそれで十分なんだ。」



―――――「イダルの神と、世界について」シャングリラ・イオツ 著


無数に生まれては消える世界達。

この世界も、そのうちの一つです。

海、大地、そしてイダル(この世界の人間)の神であるエルドラド(Eldorado)イオツ(Iots)によって、今の世界が生まれました―――――





―――――セプテスの図書館



「半蔵さん、分かりましたか?」

「大体分かったんだが、一つだけ引っかかるものがあるんだ。『神は、愛で人を縛ります。』ってどういうことだ?」

「庶民には、全く意味が解りません。この本の著者であるシャングリラ・イオツさんは、神の血を引き継いでいるので、本当の意味を知っているのだと思います。」


イオツとは、エルドラド・イオツ()の家系の名字のことである。

イオツ()の家系の人は、キリスという魔王軍の領域の隣にある地域に住んでいるらしい。


「シャングリラ・イオツって本名だよな?このみの本名は何なんだ?」

「三人だけの秘密ですよ。『レイン(Rain)フーリャノール(Fourianol)』です。」

「レイン、いい名前じゃないか。何故この世界の人は本名を隠すんだ?」

「自分の身を守る為です。本名を隠すことは、神が推奨していることなんですよ。」


本名を隠すことを神が推奨する、か。

神は、愛で人を縛る。


神は、愛に縛られる・・・?



難しいことを考えていると、カレアが帰ってきた。

カレアが帰ってくるまで、30分は経っただろうか。


「半蔵、なに難しい顔してるの?」

「おっ、カレアおかえり。元気そうで安心したぞ。」

「半蔵は大丈夫なの?」

「んー・・・。そうだ、カレアの本名は何なんだ?」

「きゅ、急になに聞くの!?」


本名を聞くと、カレアが思い切り赤面する。

ものすごく恥ずかしがっているようだ。

何か、心を見透かされたかのような表情。


俺はカレアのこと、さっぱり分からないのだが。


「あたしの本名は『シンシア(Cynthia)アルマリス(Almaris)』よ。これでいい?」

「ありがとう。素敵な名前だな。」

「バ、バカ!何言ってるの!半蔵のバカっ!」


さっきからカレアの様子が、何かおかしい。

狩りのし過ぎは心に良くないのだろうか。


「半蔵さん、カレアのことじろじろ見すぎです。気持ち悪いですよ。」

「え、そんなに見てたか?すまなかった。」


別にそんなつもりは無かったのだが、思い返してみれば、俺はカレアをガン見していた。

俺もカレアも、何かがおかしい。


「半蔵、本はもういいの?あたし温泉に行きたい。」

「ああ、本はもういい。この近くは山が多いし、温泉が気持ちいいだろうな。」


どうも、カレアのことが気になってしまう。

これは、単純な恋ではない。

何か、もっと深いところで・・・。



―――――セプテス温泉



「じゃ、あたし達は女湯に行くね。」

「ああ。」


「半蔵さん、今カレアに付いていこうとしましたね?」


・・・このみも何かおかしいのではないか?

俺は考え事をしながら、男湯に浸かった。


今日は、どうも頭が回らない。

疲れているせいだろうか?

異世界生活とはいえ、さすがにオフの日も必要なのかもしれない。


のぼせそうになってきたので、体を洗ってから温泉を出る。


「ここのアイス、超おいしい!」

「カレア、このみ。先に上がってたのか。」

「半蔵さん遅いから、心配してましたよ。」

「ああ、すまない・・・。」



俺たちはそのままセプテスの旅館へ行き、カレアは一人で、このみと俺は同じ部屋で泊まることになった。



―――――寝室にて



「こうやってこのみと一緒に寝るの、三回目だな。」

「はい、そうですね・・・。」


沈黙。


「半蔵さん、今日は私の事をからかわないんですか?」

「ああ。そういう気分じゃなくてな。」

「そうですか。ゆっくり休んでくださいね。」


そうだ。ゆっくり休まないと。



―――――暗い森の中



ここは、暗い森の中。

木に囲まれた中に円状の草むらがあり、俺はその中心に立っている。


「さあ、来い!獣共!」


「タイヨウ・・・」


俺の本名は、相内太陽あいうちたいよう。だが、今の俺は半蔵だ。


「俺は太陽じゃない!半蔵だ!」


「タイヨウハ、モトメテイル・・・」


「半蔵だ。経験値を求めている!」


「アイヲ、モトメテイル・・・」


「やめろ!抱き着くな!離れろ怪物!」


「タイヨウ、アタシノ、ナマエヲヨンデ・・・」


「シンシア。」


違う。違う。合っているけど違う。


「アナタハ、アイニ、シバラレル・・・」


「やめてくれ・・・!触るな・・・!」


「タイヨウ。」

「シンシア。」


体中にものすごい電流が走る。

俺の中に、怪物が入ってきて・・・!




―――――真っ白。



これが、世界・・・。


いや、違う。




―――――寝室にて


「はっ!」


まだ夜中だ。このみはぐっすり寝ている。

俺は、トイレへ向かった。



これは、非常にまずい。

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