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大道もこの仕事についてそれほど長い時間を過ごしてきたとは言えないが、それでも誰かが死んで「こいつ、喜んでいるな」と思える人物には何人か会ったことがあった。


しかしそれをはっきりと口にしたのは、この男が初めてだった。


よっぽど並木が腹に据えかねたのかとも思ったが、そうではなくて思ったことをすぐ口に出してしまうタイプの男なのだと気がついた。


――こいつ、これじゃあ人生さぞかし苦労することだろうな。


大道は思ったが、しょせん大道には関係のないことだ。


それからいくつか話を聞いたが、どれも並木に対する不平不満ばかりだった。


「それじゃあお時間とらせました。それでは失礼します」


「もう二度とこないでくださいね」


男は乱暴に戸を閉めた。


さっきまでのりのりでしゃべっていたと言うのに。



左隣に聞けば、今度は右である。


今日は世間一般的には休日なので、いてくれる可能性が高いと思いながらインターホンを押すと、三十代後半に見える男が出てきた。


「どちらさまでしょうか」


並木のことを聞くと、若い男よりは穏やかな語り口ではあったものの、内容的にはほぼ同じことを言った。


左右両隣に住んでいる人物か同じ証言をしているので、並木が近所迷惑な男であったことは間違いのないことだろう。


男も、殺されたことはたいへんお気の毒ですが、と言いつつも、遠まわしに静かになってくれてよかった、と言った。


「お時間取らせてしまってすみません。ありがとうございました」


「いえいえ、こんなものでよければ」


男は静かに戸を閉めた。



左右に騒音トラブルがあったとわかれば、次は当然上下である。


上の会の住人は留守であったが、下の階の部屋からは四十代くらいの男が出てきた。


大道の第一印象によれば、右隣の住人と似たタイプの男に見えた。


話してみたが、話す内容は左右の男とほぼ同じであったが、一つだけ新たな情報が手に入った。


「そういえば並木さん、サーフィンをやっていましたね」


「サーフィンですか」


「ええ。休みの日にサーフボードをかかえて出て行くところを何度か見かけたことがありますよ」


大道は少し気になった。


サーフィンといえばもちろん海である。


そして海にはサメもいるのだから。


――なにかつながりはあるのだろうか?


お決まりのあいさつをかわし、男が戸を閉めた後も玄関先に突っ立って考えてみたが、具体的なことはなに一つ思い浮かばなかった。



大道が調べてみると、このあたりにサーフボードを専門的に扱っている店は、一軒しかなかった。


もともとサーフィンをやる人間は、日本全体の人口から考えればほんの一部にすぎない。


コンビニのようにあちこちにあるわけもない。


東京には近いが小さな地方都市にすぎないこの街では、一軒もあれば十分だ。


並木が街から遠くにあるショップの常連でもない限り、そこの店主が並木のことを知っている可能性はかなり高い。


大道は早速店にむかった。

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