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ただ巨大で強力なあごの力を持つホオジロザメが噛み切ったと同じように人体を切り離すために、どのような道具を使ってどのように切断したのか。


それは警察もまるで掴んではいないことが、そのコメントから見て取れた。


――久しぶりにおもしろい事件かもしれない。


大道の心が少しばかり躍った。


猟奇的で不可解な事件は、会社にとっても大道個人にとっても、大歓迎だ。



「ホオジロザメ殺人事件」。


テレビのバラエティもどきの情報番組では、この事件をそう呼んでいた。


当分の間一般大衆、そしてそれ以上にマスコミはにぎわうことだろう。


が、大道の場合は少し違っていた。


出版社の記者であるが芸能人のスキャンダルなどは追わず、社会性のある事件ばかりを追う。


そしてある程度まとまると、それを不定期に出版するのだ。


大道は以前、新聞の報道部で記者をやっていたことがあるが、その場所ではうまくやることが出来なかった。


それは大道の取材姿勢にあった。


一つのことを徹底的に納得するまで追い続ける。


それが大道の信念であったが、新聞は何と言っても早さが命だ。


じっくりと仕事を進める大道がついていけるわけがなかったのだ。


新聞社内で無能の烙印を押され、逃げるように退社したのだが、それでも見る人は見ていた。


ほとんど話をしたことのない先輩から突然連絡があり、大道を今の会社に紹介してくれたのだ。


編集長とは取材を通じて知り合い、以降プライベートでも付き合うほどの仲になっていたそうだ。


「うちは新聞とは違って、鮮度よりも内容の濃さが命だ。だから君には好きなだけ取材をしてもらうよ」


最初に会ったときに編集長はそう言った。


しかし出版社も営利団体である。


いつまでも際限なく待っていてくれるわけではない。


しかし新聞社と比べれば、比較にならないくらいに自由度が高いのは確かだ。


大道は今の仕事についてよかったと思っている。


唯一の悩みは、取材が立て込むと休みなし、睡眠時間かなり少な目となるのがつらいといえばつらいのだが、だがそれも大道が自ら選択した結果なのだ。


新聞社で仕事をしていたときのことを思えば、天国とまではいかないけれど、少なくとも地獄ではないと大道は考えていた。


と言うよりも、天国と地獄が適当に混ざり合って混沌とした仕事、とでも言ったほうが正しいかもしれない。



通り魔的な殺人や強盗殺人などをのぞくと、多くの殺人事件は殺されたほうになんだかの要因がある場合が多い。


要因とは言っても、殺された人が悪いといっているわけではない。


殺された人により多くの問題がある場合とそうではない場合とがあるが、どちらにしても殺された人と犯人との間になにかの確執があり、それによって殺されることがほとんどであると言う意味だ。


そこで大道がやるべきことは、まず聞き込みだ。


ただし警察関係者の人間も当然聞き込みをするので、その邪魔をすることは絶対にタブーだ。

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