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12.

そうそれらは呟くとはるか後ろのそれらからこの道めがけて順々に倒れこみ始める。それらの肋骨が苔道へと突き刺さり、それらは苔へとかぶりついていった。

 鋭く尖った肋骨は地面に軽々吸い込まれ、あれに刺さってはひとたまりもなさそうだ、いつ横にいるそれらが降り注いでくるかもわからない。

 走るしかない。戻るなと言われた。構わず進めと言われた。

 目の前の鎌と縄をもつそれらめがけて駆け走る。

 あと少し、ほんの少し、今、そいつらと並んだ。

 骸骨はその瞬間まっすぐ前を向いていた頭をこちらへ向けて歯を鳴らせはじめる。

 そして体もこちらへと向けたかと思うと手にもつその縄をこちらへめがけて投げつけてきた。

 ・・・やられた。その縄は両腕へと絡まり、その二匹の骸骨は手繰り寄せ進む歩みを阻もうとしてきた。

 まだ少し距離はある倒れこむそれら、だがそれは立ち止まっていてはすぐに追いつかれそうだ。

 手繰り寄せる骸骨はもう片手の鎌を地面に何度も刺して恐怖を駆り立てた。

 骸骨の力は思いのほか強い。どれだけ腕に力を入れて進もうとしても一歩も前へと進むことができない。

 均衡するその綱はそのまま、降り注ぐやつらが目前にくるまで動くことはない。

 だがそれもそいつらが目前へと迫り、あと5体、6体、そのぐらいで串刺しになってしまうだろうというとき、それらは縄を引く骸骨もろとも串刺しにしてしまった。

 縄もほどけ、間一髪降り注ぐ奴らから避けることができた。

 だがそれでも降り注ぐ奴らはまだまだ続き、紙一重、すぐ背中で振り落ちるそれらを感じながら必死に逃げた。

 息もずっと止めている。だんだんと胸が苦しく走る事にも辛くなってきてしまう。

 あぁ、だめか、でもあと数十体、その横を駆け抜ければ終わりなんだ。

 拳を強く握って、唇をかみしめて、消えそうになる意識を必死に保って走った。

 あと10体、6体・・・・あと1体。

 背中にかすかにそれらが触れた感覚が脳へと伝わる。だがそれでも、無事に、なんとか、この池の道を渡りきることができた。

 最後の一歩を大きく踏み出し、空中へと飛びだす。

 だがその先は黒く染まる地面の暗闇の世界。やっと抜け出せたと思ったのも束の間だ。

 闇の中に体は落ちて、何かが足に着いたかと思うとバランスを崩して体がグルグルと周りなにがなんだかわからないままどこかへと転がり行く。

 また、世界が変わった。

 体がぐるぐるとまわって何かにぶつかる感触。それはメキメキと音を立ててなにかを突き破った。

 薄暗い。目をあけると、木。木でできた部屋、に出てきたと思う。

 薄暗くてよくわからない。突き破ったその壁は真っ黒でその先は何も見えなかった。

 逆に部屋の中はまだすこし、薄暗くは感じるが目を凝らせばあたりを目視することができる。

 木の机。木の椅子。天井には鉄のロウソク立てがぶら下がり揺れていた。

 机の上には一枚の紙が。


 「見つかるべからず」


 ここでのあらたな制限だろうか。見つかるなとは何からだろう。そしていったいここはどこなのだろうか。池を越えた先に描かれていた建物。それがここということでいいのだろうか。

 部屋にはその机と椅子以外なにもなく、一つ扉が置かれているだけだった。

 静かに薄暗く。耳を澄ますがあたりになにかいる気配もない。

 とにかくその扉をあけてみる。廊下だ。

 だがこういう作りは不思議に感じる。あまり広いとは言えないこの部屋だ。なのにこの部屋の隣りや正面の壁には見える限り部屋らしきトビラがある様子がない。

 左右どちらにも続くこの廊下。

 正面の壁にはまた文字が描かれる。


 「知りたいものは右を勧めよう」「知らぬを望むは左を勧めよう」


 また何かわからないままの問いかけだ。知る。知るとはこの今までの出来事のことだろうか。

 ただただ遊びに、渡されたチラシに興味を持ってきただけなのに何故ここまで追い詰められねばいけないのか。それは確かに説明してほしい。悪ふざけがひどすぎる。弁明があるなら聞いてやろうじゃないか。

 右を選ぶ。

 右を選び進んでいくと廊下にまた文字が刻まれていた。


 「すべてを見たら森へ走れ」


 その文字の横にある窓からこの建物のすぐそばから森が続いているのが見ることができた。

 森へ走れとはそこのことを言っているのだろう。だがすべてについてはよくわからない。

 これから知るそのことなのだろう。

 その文字を後にして、廊下を進む。

 刻まれた文字を過ぎると壁に窓が等間隔に設けられあたりの景色が良く見える。だが、月もなにも、光の光源がみあたらないわりに、暗いわりによく遠くまで見える不思議な感覚が視界から伝わってきた。

 廊下はそのまま大きな広間へとたどり着いた。廊下からは下へ下る階段が、その下る階段の先には玄関のようなとても大きなトビラがある。

 そのまま廊下はどこかへと続いているのだが興味本位で階段を下ることにする。


 「コツン、コツン、コツン、コツン、コツン」


 テンポよく響く金属音。それが聞こえて下るその足を止めた。この下る階段のさらに奥。とにかくこの下に誰かがいるのかそれは聞こえる。

 その音はそのままこちらへと近づいて、姿を現した。

 銀色に光る靴を履いたそれ。それは頭蓋から角が生え衣を纏い、眉間にしわを寄せる黒々しい鬼だった。

 その後ろにはなにかがづらづらと並んでいる。

 人だった。いままでにない普通の人だ。彼らは手足に鉄の金具で拘束され、その鬼の後ろの後を追う。

 あれ、あれは渡し船で会話をしていた昨日のおじいさんではないか?。

 階段を急いで駆け上がりまだり角から様子を伺ってみた。

 彼らはその黒鬼にひきつれられ大きな扉から広がる森の中へと消えていく。

 突然その黒い鬼は玄関を潜った後にこちらへと振り返る。すぐさま身を隠したが。気づかれたのだろうか。


 「・・・・コツン、コツン、コツン、コツン」


 足音はまた動き出して扉が閉まる音と共に消えていく。

 いったいなんだったのだろうか。彼らは階段を下って扉の右の通路から沸いて出てきた。

 そちらになにかがあるのだろう。耳を澄ませて何も気配がないのを察すると再び歩き出す。

 彼らが来た廊下へとでるとその老廊下はいきなりさらに下へと下っていく階段がりそれを進んだ。

 下ると何かがいる。十字路をさらに進んだその先にそれはいた。

 

 「ジャバジャブジャバジャブ、ジャバジャブジャバジャブ」


 水の弾ける音。後ろ姿しかそれは見えない。屈んだ体勢でいる。

 

 「ジャバジャブジャバジャブ、ジャバジャブジャバジャブ」


 それの先には通路を横切り、水が流れていた。

 それはそれに向かい肩をゆらしながらうごめいている。首をカコカコと動かしながら。

 それは肩の動きを止めたかと思うと立ち上がる。すると今度は手を上にあげて手を顔に近づけた。


 「ブオォォォォォォォォォォォ」


 耳につく大きな音と共に周囲一帯の空気が轟き風となってあたりをかき回し始めた。

 それは十字路の物陰に隠れるこちらにまでよどめき、体をふわりと浮かび上がらせてしまう。

 突然と体にかかる猛風に、思わず短鳴な悲鳴をあげてしまった。

 それはその声を聞き逃しはしない。

 悲鳴をあげてすぐのことだ。それは体を素早くひねりこちらへと顔を向けてくる。

 あわてて十字路の影へと顔を引っ込めた。たがそれは大きな足踏みを響かせながらこちらへと近づいてくる。

 これはまずい。

 この十字路一帯には部屋も隠れる場所も見当たらない。

 とにかく急いで今いる十字路の道を駆け走りだす。

 その足音を聞いてだろうか、それの足音は早く音を刻んでこちらを追いかけてきた。

 その音はもう十字路をすぐに曲がろうとしている。そんな風に音がきこえてきた。もうどうすることもできない。

 今この場にあるのは両脇に建つ大きな二本の天井を支える柱だけだ。

 音が曲がってしかたなく、その柱の裏に身を屈めて息を殺す。

 それは一度曲がったかと思うと足音を止める。

 だがゆっくりとそれは確実にこちらへと再び歩き始めた。

 見えてはいない。でも音は聞えてくる。

 ただ黙る。ひたすら黙る。体のすべての動きを殺して、大きく鳴りやまない心臓の音を握りつけて鎮めながら。

 

 音はついにと来てしまう。 


 ・・・・・足が、足の親指が横目に現れた。

 それの足だろうか。今の自分の背の丈で膝あたりぐらいまでしか届かないだろう。それの爪は黄色く色を染め、肌は青黒い。

 もう一歩、もう片方の足が目の前に現れる。

 ソレは天井すれすれまで伸びきる大きな角もさながら体全体が今まで見たことのないほど大きな、鬼のようだ。

 手は足の爪とは打って変わり鋭く磨かれ、白く、綺麗な色をしていた。

 それはそのまま前を進む。

 このまま。このまますぎてくれ。そう思う。

 それの鬼はまた一歩、もう一歩。先ほどまでの足音とは打って変わり、不安げにゆっくりと歩いていた。

 鬼はそれでも自分から手を伸ばせばすぐに届きそうな位置で再び立ち止まる。

 このまま通り過ぎてはくれないのか。鬼は立ち止まると手を見て爪を撫でて目を近づける。

 鬼はそのまま片足を後ろに後ずさりした。

 あぁ、見つかってしまう。きっとこのままこいつに食われてしまうのだろうな。最後を覚悟してしまった。

 だがそれの鬼は自分のいる逆の柱から振り返り爪しか見えていないのか。 横にいるこちらには気づかずに来た道を戻っていく。

 危ないところだった。ここでの見つかってはいけないとはこいつらの事なんだろう。

 言われなくても、あんな大きな化け物、見つかりたくて見つかりに行けるわけがないじゃないか。一目でも見つかれば殺されるか食われるか、食われるか殺されるかしかないだろうに。

 はぁ、命がいくつあればここから帰れるのかな。

 それの鬼が十字路へと姿を消した音を確認して立ち上がる。

 そしてそのまままっすぐ進んでいこうかと決めて動いたその時だ。

 「ドスン」という音がして沈黙の時が流れて行く。

 なんの音なのか。これはこのまま動いていいのだろうか。耳を例のごとく澄ますが何も音はしない。

 だがなにかが自分に警告を促す。

 動いてはいけないと。息を殺せと。

 踏み出した足をそのままに体を凍りつかせて制止して世界を感じ取る。

 

 「ドスドス、ドスドス・・・・」

 

 再び足音がして遠くの方へと消えて行った。

 今この柱を飛び出していたらどうなっていたのだろうか。もしかするとずっと、立ち止まっていたその間こちらの廊下を見ていたのかもしれない。

 ここでは今までよりもさらに注意を、警戒をして先に進まなければ半端には進めなさそうだ。

 ほんの一瞬、柱に体をへばりつかせてちらにと来た十字路を確認した。

 よし、何もいない。先へすすも・・・お?。

 

 「ダンダンダン、ダンダンダン、ダンダンダン」


 また十字路の方角からだ。そのテンポを奏でる音はだんだんと近づく。

 

 「鎮メヨ憤怒、母ノ悲嘆ハ謳高ク。鎮メヨ悔ヤミ、子ノ艱難辛苦。母ノ沈痛子ニハ届カズ。子ノ産声ハ鳴ナルコトハナク。ソレハ帰ラヌ。ソレハ帰レズ。」


 何かをブツブツと呟くその声。それは一つではない。

 十字路をじっと見ているとまた先ほどの巨大な鬼が現れる。だがそれはそのままこちらへは気づかずまっすぐ、大きな扉があった玄関へと向かった。 そいつがまた十字路から消えて、後からそれと比べると小さな行列が後を追う。

 子供だ。それは子供だ。人の子供だ。

 川辺で石を積み上げていた子らと年幅のかわっらないだろうその子供らは目を閉じて鬼を追い歩いている。

 そしてその脇には 牛の顔をした人のような体つきをする何かが何体もそばを離れず並行していた。


 「子ノ産声聞キタクバ生贄ヲ。ソノ生贄ニハ罪人ヲ。母ノ憤怒鎮メタクバ生贄ヲ。ソノ生贄ニハ清白ナ童ヲ。」


 呟き進むその行列は途絶える事なく永遠進む。

 いったいどれだけその列は続くのか。

 やっと、やっとその行進は途絶えて十字路へと消えていく。

 正直あまりにも長く、静かに歩く子供たちに見とれてその呟きははっきりとは聞いてはいなかった。だがそれでも、はっきりと耳に残る言葉を彼らは残していった。

 母の悲嘆。生贄。

 母とは今過ぎて行った子供のことでいいのだろうか。だがその子供らに生贄が必要とも言っていた気がする。

 うぅん。正直、怖いことは怖い。でもそれでも。この子供らの後を追えば、なにかがわかる気がする。それは不確かでなんとなくの無意識的な確信。

 ついて行って無事に帰れるとも限らない。だがそれでも、今の自分の状況をしるためにも、あの行列の後を追う事にする。そう思う。

 十字路へと静かに早歩きで駆け戻り、少しだけ顔を出して様子を見た。

 その行列はそのまま玄関の大扉をくぐって外へと行進していく。

 それをじっと待つ。その行列がすべて外へと出るその時まで。その間に何かに見つかってはお終いではある。でもあたりにはもう、何かがうごめく気配はとくには感じれない。大丈夫だろう。

 特に他に異変もなくその行列はすべて扉を抜けて行った。

 急いで今度は走り、閉まる扉に追いつけと近づく。

 人一人ギリギリ通れるか。そんな隙間になってやっとたどり着いて飛び込むように外へと飛び出す。

 飛び出したらすぐに一番近くにあった木のそばへと駆け走り身を隠して気配を消した。

 行列の脇にあるく牛鬼の何体かはこちらへと振り返りその異変に気付いている。だがしかし、振り返るそこにはいつもと変わらないその光景が広がることから彼らは再び前を向いて歩き出した。

 危ないところだ。

 飛び出した後のことを考えてはいなかった。

 ちょうどよく自分ひとりを隠せるだけの大木があってほっとする。

 あのままなにもない大きな庭だったとしたらすぐに見つかり今どうなっていたか分かったもんじゃんない。

 改めて慎重になろうと自分に釘をさす。

 改めて行列を確認して子供らの後を追う。

 改めて追従するその行列は今度森の横にそびえる岩でできた洞窟のようなものへと進んでいく。

 その道はひたすら一本道で、後を追うには彼らがこの一本道を過ぎてからでないとすぐにばれそうに思った。

 仕方がない。森の林の中で身を隠してその時を待つことにする。そう思う。

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