9話 ラントの過去
「みなさんは誰かを恋に落ちたり、落とされたりした経験はありますか?」
まぁ、私はあるけど……。
最初になぜ、そんなことを訊くのかと思った読者が多いだろう。
私の恋愛対象者の条件は2つのパターンがある。
それは幼なじみか友達か――。
*
その前に私の過去について話させていただこう。
私の家族は科学者の父、大学教授の母、薬剤師の姉と私の4人家族。
よく周りの人からは「科学系一家」と呼ばれていた。
そんな家系で育った私には1人の幼なじみがいた。
彼の名前はベル・シムール。
私より1歳年上ではあるが、今もずっと彼とのつき合いはネオンやロレンスより長い方だと思う。
ベルとは家が近く、よく遊んだし、一緒にいた。
彼は私を妹のように可愛がってくれた記憶がある。
そして、私はベルに少しずつではあったが、恋に落ちていった……。
*
私が中等部に進学したある日のことである。
「あら、クロノス博士のところの2番目の娘さん。将来は科学者、大学教授、薬剤師のどれかしら?」
近くに住んでいるおば様によく言われるようになった。
「いぇ、実はまだ、進路は決まっていません」
私は素直に彼女に答える。
こればかりは素直に答えないとなと思っていたから。
「そうよね……。まだ、中等部に入りたてだものね……。ところで、ベル君は?」
「俺もまだ、決まっていませんが、一応、候補はあります」
「それは何かな?」
「教師か医者のどちらかですね……」
へぇー……私は彼の進路をはじめて知った。
「まぁ! 凄いじゃない! ベル君、頑張ってね!」
「ハイ」
その当時はそのような会話が多くなったかなと思う。
*
おば様と別れたあと……。
「ベルはいろいろと候補があるんだね」
「あぁ。ラントは何か候補とかないのか?」
「あのね、私も実は教師になりたいんだ」
「教科は?」
「理科の化学かな」
「俺も教師になるとしたら理科の物理の担当をしたいなぁ……と思ってたんだ。ラントの家族は科学系一家だし」
「ベルも理科の先生なんだね!同じ高校と大学に行けるといいね」
「あぁ」
「ベル、大好きだよ! また明日ね!」
キャッ! 私はベルに告白(?)しちゃった。
「ラント、気をつけて帰るんだぞ」
「うん!」
*
あれから、時が流れ……。
私はついに大学に進学した。
ベルは高校までは同じだったが、彼は私の通っている大学にいなかった。
私はなぜだろうと思い、彼の家に行ってみたら、彼の家族は引っ越したらしく、「テナント募集中」という看板が下がっていた。
要するに、簡単に言うと、私とベルの幼なじみ歴は14年間だったのだ。
私は彼がいない日々はとても寂しかった。
私は彼に相応しくなかったのだろうか?
私のどこが気に入らなかったのか? などといろいろと考えているうちに無性に泣きたくなってきた。
人は誰かを恋に落ちたり落とされたりしながら生きていく……。
※ラントはそんな中、理科の教員免許を取ることができました。
2016/07/23 本投稿