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4話 ニャンニャン刑事の誕生秘話

 春休みに入り、この日は3月の最後の日のことである。

 カチャッと音楽室の鍵が開き、1人の女子生徒が入ってきた。


「おはようございまーす」


挨拶(あいさつ)をする。

 彼女以外は誰もいないので、何も反応がない。

 彼女は鞄を適当に机の上に置いた。



 *



 音楽室には上下に動くスライド式の黒板とグランドピアノが置いてあるのはもちろんのこと、雛壇には机とイスが各40個くらい並んでいた。


「まだ、誰もきてないんだ……。もう少しゆっくりくればよかった……」


 彼女は黒板の左上にかかっている時計を見ると、まだ8時30分を指している。


「トランペットやフルートは持ってこられるけど、ユーフォニアムとかチューバは重いから、楽器とかの準備は何人かきたらやろう」


と言いながら楽器倉庫の鍵を開け、その倉庫の電気をつけると、


「あれー? 昨日はこんなのなかったはず……」


 彼女は何やら見慣れない封筒を見つけた。



 *



 なんだろう? と思いながら早速その封筒の封を切る。

 出てきたのは謎のバトンらしきものと先ほどより小さめの封筒。


「げっ、また封筒なの?」


と彼女は少々げんなりしながら小さめの封筒の封を切った。


「あれ? 手紙だ」


 彼女は1枚の紙を取り出した。


『この手紙を受け取った人へ

 こんにちは。この度はこの手紙を受け取っていただきありがとうございます。

 さて、早速、本題に入りますが、この封筒の中に入っているものはこれから1年間使用するものですので、大切に使用してくださいね。

 あなたのコールは【All my friend forever!】です。』


 そこに書かれていたのは謎のバトンらしきもののことだった。


「バトンみたいなものの説明文? というか、オール・マイ……、『friend』って普通は『s』をつけて複数にするよね?」


 彼女は言いながら、誰のものか分からない赤ペンを使って謎のコールに『sつける?』と書き込んだ。


「酷い英文だね。こちらで直してもいいかなぁ?」


と言った瞬間、


「すみませんが……、直されると困ります」


と突然、声が鳴った。

 よく通る男性の声だ。


「だ、誰!?」


 彼女は周りを見回す。

 音楽室はもちろんのこと、楽器倉庫には彼女しかいない。


「私はこの封筒を届けた者です。私は……」

「凄くいい声してるね! あなたの名前は?」

「今から言おうとしたのに!」

「すみません……」

「私はエメットとです。その大きな封筒の中に入っているバトンを出してください」

「バトンはもうすでに出てるよ。これでしょ?」


 彼女はエメットの指示通りにバトンを持った。


「ハイ。では、そのバトンを先ほどの手紙に書かれたコールを言いながら回してください。くれぐれも書き直したものを言わないでくださいね」

「ハーイ、書いてある通りに言えばいいんだよね?」

「ええ」



 *



 彼女はバトンを回し始めた。

 数回回したあと……。


「それを真上に!」


 彼女はバトンを真上に投げた。


「敵がきたら、これで返信終了です」

「ふーん……。ところで、エメットはさっき、『敵』って言ったよね?」

「ハイ。あなたは敵と戦ってもらいます」

「ハイ!? 私が『敵と戦ってもらいます』って言われて、喜んで『やる!』って言うと思ったら大間違いだからね! 私はやらないから!」


 彼女は誰もいない楽器倉庫の中で姿も形も存在しないエメットにキレていた。

 彼は冷静になって、


「どうしても、あなたの力が必要なんです」

「どうしても? 他の人にも同じことをして承諾させたんでしょ?」

「ハイ。白衣を着た女性は少し戸惑っていましたが、OKしてくれましたよ。」

「ハイって……。その人って春原先生じゃん! 本当なの!?」

「ハイ。彼女は本当に引き受けてくれましたよ。あなたも安心して戦えるでしょう」

「そう言われるとなぁ……。まぁ、春原先生がいるからちょっと安心できるな」


と彼女は楽しそうに言った。

 エメットは呆れたかのように、


「契約しますか?」


と問いかけた。彼女は、


「契約する! 私でよければね」


と答えた。


 こうして、彼女は敵と戦うために動き出した。

 そして、エメットからは言われていないが、男装をする覚悟とともに……。



2015/06/21 本投稿

2016/05/05 空行挿入

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