10話 ベルの過去
俺は果たして「政府の操り人形」なのだろうか……。
なんて、俺がこんなことを思っているのは誰にも分からないのだろうか……。
俺の本名はベル・シムールという。
「ベルモンド」と呼ばれていることもあるが、それは政府の上の方の人間がつけただけの偽名だ。
実は俺には1人の幼なじみの少女がいた。
その少女の名前はラント・クロノス。
彼女とは一時期は少し離ればなれになっていた。
離れていた期間、俺は何をしていたのかというと、政府の上の方の人間のところにいたのだ。
「君がベル・シムール君か」
「ハイ」
「君にはちょっと協力していただきたいことがある」
「それはなんでしょうか?」
俺はその人物に問いかける。
一応、答えてくれたが、ここで書くと放送禁句用語がたくさん出るので、読者の想像に任せるとしよう。
「うわっ! 何をする!」
「ベル君、これから君には簡単な手術を行う」
俺は強制的に手術室に通される。
なにやら精密機械が入ったような感じがした。
その時、俺は「政府によって作られた操り人形」となり、しばらくの間は友人や家族などに会うことは禁じられている。
それから1週間くらいは意識がなかったような気がしたが、よく覚えていない。
意識が回復したあとは拳銃の使用法や訓練を強いられた日々……。
俺はわずか15歳で自由な時間がなく、なんか束縛されているようだった。
*
あれから、数年後……。
俺はラントと再会した。
彼女は今も変わらない容姿ををしているからよく分かる。
俺は「ラントか?」と問いかけると、彼女は「ベル?」と訊き返してきた。
そのときの彼女はずっと俺に会いたかったようだ。
「突然、君の視界からいなくなってしまってすまなかった」
「大丈夫。ところで、話は変わるけど、理科の教員免許を取ることができたんだ」
「そうか。ラント、おめでとう」
ついに、ラントは理科の先生になろうとしていた。
しかし、俺の夢は政府の上の方の人間によって、断念したが……。
久々の彼女との再会。
俺はそれが嬉しかった。
次の瞬間、ラントは突然、俺に抱きついてきた。
「大好きだよ、ベル」
「俺もだよ、ラント」
2人で愛の告白をする。
その時、彼女は今まで通りに接してくれた。
俺が「政府の操り人形」だということを知らずに……。
「なぁ、ラント」
「なぁに?」
「もし、俺が「政府の操り人形」とかだったらどうする?」
「うーん……。私だったら、いつも通りに接してると思うよ?」
彼女からの答えは意外だった。
普通ならば、「政府の操り人形」と一緒に過ごしたくないと言ってもおかしくない。
だが、ラントは違った。
彼女は「政府の操り人形」の俺のことを受け入れようとしている。
「そうか……。実は俺、「政府の操り人形」なんだ」
「えっ、嘘……!? で、でも、たとえ「政府の操り人形」でもベルはベルだからね!」
「……ラント……」
元はまともな人間だった俺。
わずか15歳で簡単な手術を受けさせられ、「政府の操り人形」となっても、それを受け入れようとしている誰かがいる。
2016/07/24 本投稿




