表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

最初の朝

『……』


(…誰だ?)


真っ白な世界の中、見渡す限り人はいない。

それなのに、声がする

とても優しく、懐かしい声…

でも誰の声なのか思い出せない


『…き…』


(聞こえない…なんて言ってるんだ?)


俺の声は出なかった。ただ声のする方に走り、手を伸ばした。


(どこだ、どこなんだよ…?!)


…『ゆきや』


(…!!)


そうはっきり聞こえた時、一瞬だけ、会いたくてたまらない人の背中が目に映った。



「先生…!!」


バッと叫び起き、目に映ったのはリビングの本棚だった。

雪夜はリビングにあるソファーの上にいた。

上がっている息を整えながら、自分がここにいる訳を頭の中で整理する。

昨日、倒れていた「あけよ」を助け、なだめたあとベッドに寝かせたためソファーで寝たのだ。


…と考え、あることに気がついた。


「…夜飯、食ってなかったな…」


そう言った雪夜のお腹は今にもなりそうだった。

台所へ行き、残り物を探し始めた。コンロの上には、あけよが起きたら食べさせようと昨晩用意していたお粥があった。固まっていたので、温めて自分で食べることにした。

あけよには、胃に入りやすく温かい物を作ろうと作業に取り掛かった。

野菜スープにクルトンをいれて部屋に持っていった。

コンコンと二回ノックし、ドア越しに呼び掛ける。


「あけよ、起きたか?…入るぞ」


ゆっくりと扉を開け、目に入ったのは


上半身を起こして窓の外を見つめるあけよだった。

カーテンの隙間から差し込む光に照らされて綺麗な長い赤茶の髪を輝かせている。


“綺麗だ”


心の中で、ただそう思った。

あけよがゆっくりこっちに振り返り、ぺこりと頭を下げた。


(“おはよう”という意味か…?)


「ああ、おはよう。朝飯を作ったから食え。アレルギーはあるか?」


雪夜の問いに、あけよは首を横に振って


“ア リ ガ ト ウ”


と口を開いた。

雪夜は少しだけ嬉しく感じた。

照れくささを紛らわす様に


「ゆっくりでいいから食え」


と、あけよの膝に朝食を乗せたお盆を置いた。

素直にコクリと頷き、スープに手をつけるあけよを見て雪夜はホッとした。

一度台所にもどり、あけよの麦茶と自分のコーヒーを入れに行った。湯がわく間にポストから朝刊を取り、入れた飲み物と朝刊を持ってあけよのいる部屋にもどった。

朝刊を読みながらふとあけよを見ると、少しずつだがちゃんと食べてくれるようで今のところ問題はない様子だった。

だが、なぜ「帰りたい」と言わないのだろうか。まだ10歳かそこらの子供なのだから、泣いてすがるものではないのか、と不思議に思った。

帰りたいと言わないことには、何か理由があるのだろうか。

ご両親は、心配しておられないのだろうか。


雪夜はそう読んでとった。すると雪夜は、緊張の糸が切れたように大きなため息を交えて言った。


「俺がいいも何も、昨日“ここで休めばいい”とあけよに言ったのは俺だ。それにこの広い家の中、住人が一人増えても何も変わらない。あけよがいたいだけいればいい。」


ぶっきら棒で素直じゃない雪夜の言った言葉は、あけよの胸に温かな気持ちに変わって優しく届いた。

そして、雪夜を指差してもう一度口を開いた。


“ナ マ エ”


そう読んだ雪夜は聞き返した。


「名前?俺の名前か?」


そう聞くと、あけよはコクリとうなずいてまっすぐに雪夜の目を見た。

雪夜もしっかりあけよの目を見て答えた。


「雪の夜に産まれたから、雪夜(ゆきや)だ。少しの間よろしくな。」


雪夜の言葉を聞いたあけよは、とても嬉しそうに雪夜に笑いかけた。


その瞬間、一瞬だけ雪夜の頭の中に一人の女性の笑顔が過ぎった。


(…え?)


雪夜の思考が一時停止した。


(…なんで…先生の顔が浮かんだんだ…?)


固まってしまった雪夜にどうしたのか、とあけよが手を伸ばした瞬間


ジリリリリリリリリリリ…


ベッドの頭部にある目覚まし時計が鳴った。

ハッとしたように雪夜が時計を見ると、針は7:30を指していた。

設定を解除し、あけよを見ると震えていた。

急な大きい音に驚いたようで、怯えていたのだ。

雪夜は隣に寄り添い、


「大丈夫だ、ただの時計だ」


と時計を見せながらあけよの背中をさすった。

あけよが落ち着き、ゆっくり時計を手に持った。

じっと時計を見つめるあけよに、雪夜は時計の数字を指差しながら話し始めた。


「いいか、俺は8:30にここを出て会社に行く。終わるのが17:00だから帰ってくるのは17:30頃だ。それまでおとなしく待っていられるか?」


話を聞き終わったあけよは、時計を見たままコクリとうなずいた。

それを見た雪夜は


「よし。…昼ご飯は作り置きして行く。家の中のものは適当に使ってもいいが、台所には入るな。あと、この部屋のものも勝手に触るな。いいな?」


と、留守の間の約束を一通りあけよに言いつけた。

素直にうなずいたあけよの頭を撫でて、雪夜は会社に行く準備をし始めた。









読んでいただきありがとうございます(*^^*)


いやぁそれにしても寒いですね(ーー;)

この前公園で寝ちゃって気づいたら雪に埋もれてまして…レスキュー隊の方々に大変ご迷惑をおかけしました(ーー;)

やっちまったなぁ←これなんていう芸人の言葉でしたっけ。笑

と、まぁまぁこれからものんびり書いていくので気軽に読んでいってください(*^^*)


アドバイス・質問等はコメント欄でどうぞ(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ