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出会い

何も変わらない毎日

何も変わらない景色

何も変わらない気持ちで

何も変わらない生活をして

何かが変わるはずなかった


そんな毎日が変わったのは


冷たく降り続く雨の中


出会ってしまった1人の子供


その子供と出会ったことで


俺は一体、人生のどれほどが変わっただろう


ただ、俺が今


君に伝えたい、たった一言



ーーーありがとうーーー








「東雲くん、コピー室行くならこれ一緒にコピーしてもらえる?枚数足りなかったのよ」


社内で有名な美人先輩に頼まれても


「先輩のミスでしょう。自分でしてください。」


と、表情一つ変えずハッキリと断る。


「終わりそうにないんだわ、仕事を手伝ってくれないか?」


同僚に頼まれても


「人に助けを求める前に休憩時間を減らしたらどうだ?昼間2時間も抜けるからだろう。せいぜい残業して終わらせるんだな。」


と、呆れているように言い放つ。

その様に人と接してきたせいで、友人と呼べる人間は極々わずかだった。


“孤独なルーキー”


これが社内でのあだ名だった。

当の本人は気にする素振りはなく、いつも飄々とした顔で仕事をこなしては帰る。

きっちり同じ時間にデスクの前に座り、同じ時間に帰宅する。

時間を合わせようとしてるわけではない。ただ、それ以外にすることがなかったのだ。


そんな男の人生が変わる出来事が起こったのは、土砂降りの雨の日だった。

空は厚い雲に覆われ、道は色とりどりの傘が並んで行き交っていた。冷え込むこの季節の雨は人々の肌に冷たく突き刺さった。

行き交う人々を目の前に、天気予報を見ず傘を忘れた東雲(しののめ) 雪夜(ゆきや)は商店街の入り口にある八百屋の屋根の下で雨宿りをしていた。


「…さみぃ…」


止みそうにない雨を恨めしい目で睨んで言い放ち、どうやって帰るかを考えていた。


(商店街には屋根がついてるからそこを通るか…いや、遠くてめんどくさいな…あ、少し先の坂の下、トンネルが出来たはず…)


そこしかない、と雪夜は早足で坂の下に出来たトンネルまでむかった。トンネルの手前には、商店街の裏通りに繋がる小道があった。

ふいにその通りに目をやると


一人の少女がずぶ濡れで地面に倒れていた。


何をしているんだ、と気になって近寄っていった。

よく見ると、この冷たい雨の中生地の薄い服を泥まみれにして小さな巾着袋を抱えていた。

雪夜は少女の体を揺すって声を掛けた。


「おい、大丈夫か?起きろ、死んじまうぞ」


触れる肩はとても冷たく、少女は目を覚まさない。

雪夜はそっと口元に手を当てて、呼吸しているか確認し、着ていたスーツを少女に羽織らせて抱き抱えた。

自分でもどうしてこの様な行動を取っているのかわかっていない思考を置き去りに、足だけは家へと向かっていた…





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