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The way home  作者: 櫻眞理恵
9/10

追加 8-1

7までで完結したお話ですが、らぶらぶエピソードをあまり書けなかったので、少しだけ追加させて頂こうと思います。

 帰ってくるとは思っていたんだ


再会を果たした後

ソファで二人

並んで座っていると

不意に彼が

そんなことを呟いた


何となく気恥ずかしくて

高校生の

あの頃のように

自分から気軽に彼に触れられずに

さっきから何度も

手を動かそうとしては

断念するのを

繰り返していた


今度こそ

彼の手に触れようと

意志を総動員して

筋肉に指令を送っていたところで


小さく呟いた彼の言葉に

飛び上がってしまった

おかしな声が出なかっただけ

プライドと理性に

感謝すべきなのかも知れない


私が飛び上がったのも

きっと

気付いているのだろうけれど

彼は私に目を向けないまま


 ごめん


さっきより

更に小さな声で

独り言のように

呟いた


 ごめん?


思わず問い返す


急に

胸の下辺りで

妙な動きを感じた


結婚はしていないけど

恋人はいる

とか

そういうことだったら

どうしよう


 ……ごめん


口元に手を当てて

やはり

私の方は見ないで

彼は繰り返す



こころというのは

心臓ではなく

脳にあるらしい


でも

そんなことは嘘だ

思ってしまうくらい

胸が

痛い






 素直に迎えられなくて

 ごめん


私に

染み渡ったその言葉は

こわばった体から

空気を押しだして

息が止まっていたことを

教えてくれた


そうか

この人も

不安だったんだ



吐き出した息を

ため息だと思ったのか

ぱっと

こちらを振り返った彼は

少し

慌てて


 ごめん


強く繰り返した


それが

申し訳なくて

……嬉しくて


 違うの


私も慌ててしまう



 他の人がいるって

 言われるのかと思って


その告白が

気まずくて

目を逸らす


目を逸らしていたから

彼がどんな顔をしたのか

分からないけれど

一瞬後に

抱きすくめられた


痛いくらい


並んで座ったソファで

上半身だけ

彼の方に引っ張られる形で

抱き締められる


ロマンチックな場面だと思うのに

重くないかとか

妙なことが

思い浮かんでしまって

体に力が入る



それに気づいたのか

私を抱き締めていた彼の腕が

少し緩くなる


 ずっと

 待ってたって言っただろ


耳元で声がする



彼の

顔が見たくて

彼の膝に手をついて

体を起こす


目を合わせると

何とも言えない顔で

彼が見返している




彼の手が

私の頬に触れる


 ……俺


 なあに?


言いよどんだ彼に

問いかける




 何でお前のこと

 連れ戻しに

 行かなかったんだろう


押し出すように

絞り出すように

そんなことを

彼が言う


どくん


鼓動に乗って

心が痛む



 私


引っ張り出されたように

私からも

言葉が転がり出る


 どうしてもっと早く

 貴方に

 会いに来なかったんだろう


自分の言葉に

涙が出る


本当に

そこに彼がいることを

確かめたくて

頬に

手を伸ばす



暖かい




このぬくもりを

どうして

こんなに長い間

手放していられたんだろう




はらはらと

自分の頬を

涙が伝っていくのがわかる


頬にあった彼の手が

涙をぬぐってくれる


鼻をすすると

懐かしそうに

彼が目を細めた



 お前

 意地っ張りだからなぁ


 そんなことない


きっとして

即座に言い返すと

彼は

目の前で花が開くように

大きく笑んだ


眩しい


頬を捕らわれたまま

少し俯く




 泣くなよ


笑みを含んだ声が

少し色を帯びる


その気配に

目を上げると

探るような目にぶつかった



そのまま

見つめ返す


この表情を

私は知ってる


懐かしい記憶の中で

ひときわ鮮明な

大切な記憶たちの中に

同じ表情を見つける



見つめ返す私の目に

彼が何を見つけたのか

分からないけれど

彼の顔が近付いてくるのが

彼の頬に宛てた手で分かった


そのまま

目を閉じる


ゆっくり

唇が

触れる




掠めるように

1度 2度

触れた後


少しだけ

顔が離れる気配がした


目を開けると

ぎこちなく微笑んだ彼が

息が触れるほど近くで


恥ずかしくて


嬉しくて


俯く


それでも

目を伏せているのが

もったいないような気になって

目だけ上げて

見つめてみる




 お前……


何かに耐えかねたような

声がした


 え?


問い返す間に

景色がぐるりと回り

唇にまた

唇が重なった


反射的に

目を閉じる


背に柔らかいものが当たり

ソファに押し倒されたことに気づく


さっきの

触れるだけのキスが

嘘のように

荒々しく

唇を奪われる


思考まで奪われて

私は

感覚の世界に

落ちていく


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