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両腕を
彼の背に回す
ずっと待ってた
心が
プライドと恋心を乗せたまま
跳ね回っているのを
感じる
抱き締める腕に力を込める
嬉しくて
……嬉しくて
ただ抱き締めていたかった
ただいま
自分の声が
涙ぐんでいて驚いた
おかえり
彼が私に負けないくらい
震える小さな声で囁いた
この家で会ったあの女性が
彼の長兄の恋人だったと
思い出したのは
次の日になってからだった
出会った男の子は
彼の甥で
一人暮らしの
彼の不精が目に余ると
義姉がたまに
ご飯を運んできてくれるらしい
違和感を感じた筈だ
通された部屋は
子育て中とも
家族の居間とも
思えなったのだから
次の日の
午後も遅くなった頃
左手の薬指に
煌めく指輪と
たくさんの
愛の言葉を貰って
やっと
彼の家を出た私たちは
彼の長兄の家に
報告に行った
大きく笑って
遅いのよ!
この子はとっくに夢を叶えて待ってたのに!
と私を叱る彼女を見たとき
不意に思い出したのだ
よくあの台詞で
お兄さんを脅かしているのを
幼い時
彼と二人でこっそり見物していた
逃げたら承知しないから!
神社の肝試しも雪合戦も
彼の『大きいお兄さん』は
いつも彼女に形無しだった
でも私たちは知っていた
いつも脅かしているお姉さんが
お兄さんが居ないと
陽のない植物のようになることも
いつも
お姉さんより弱いように見えるお兄さんが
本当はお姉さんの太陽なんだってことも
二人が本当に
お互いを愛していることも
あの『強いお姉さん』が
もうすぐ
『世話焼きのお義姉さん』に
なる
鍋を囲んだ夕食の席で
彼女は早速
私の隣りに座った彼を
からかって楽しんでいる
夕べから二人で過ごした彼の家は
実は
彼が昨年
周囲の反対を押し切って
購入した家で
その時の言い訳が
『あいつ』が帰ってきたら必要になる
だったことも
この時
初めて耳にした
あんまり幸せすぎて不安になる
支えが欲しくて
隣の彼の顔を伺うと
火を噴きそうな
赤い顔で
私から顔を隠すように
向こうを向く
大人になった と
思ったけど
彼ははやり
私の知っている彼だ
と
愛しい気持ちが溢れてくる
畳に置かれた彼の手に
自分の手を重ねる
重ねた手から
私の『大好き』が
届いていると確信して
この人が
おじいちゃんになっても
側に居られる
自分の未来が
これほど輝いて見えたことが
あっただろうか
と
私は幸福に包まれながら考えた
やっぱり
もっと早く
帰ってきたら良かった
呟いた私に彼が言った
帰ってきたんだから
それでいい
完結です。
もうちょっとらぶらぶなところを書けば良かったかなぁと思いつつ。
ここまでお付き合い頂いてありがとうございました!




