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高校を卒業する春
私は彼と約束を交わした
別々の夢を見つけたから
私は目指す職業の為
街から遠く離れた大学に進学し
彼もまた
目指す職業のため
街からほど近い大学に進学する
建築家
それが私の夢だった
建築の事務所に勤めて
いつか自分の事務所を持つことを
夢見ていた
彼が進学する大学には
私が思うような
建築を学べる学部が無かった
それに
この小さな街では
建築関係の事務所に勤めるのも
難しいと思えた
彼の夢は弁護士だった
彼の亡くなった父親の職業が
やはり弁護士で
私たちは幼い頃
よくその事務所に出入りしては
仕事の邪魔をしていた
一人っ子の私と
末っ子の彼は
特に
いたずらを考え出すことにおいては
天才的だったと言えるだろう
しかもよく息が合っていた
古い本の匂い
受付のふくよかなおばさん
いたずらを叱りつつ
いつも許してくれた彼のお父さん
全てが懐かしく
愛おしい
卒業から十年
約束からも十年
長すぎると言われればそうだし
短いと言われればやはりそうだろう
この十年は
殆どずっと
勉強と仕事だけに費やしてきた
学生時代から
社会人になってからも
何度かデートはしたけれど
私の恋人はずっと
一人だけだった
デートの相手たちはただの友人で
私の意志に反して
発展しそうな関係は
全て避けて通った
連絡も取らない
声も聞かない
消息は
ごくたまにもたらされる
同郷の友人からの土産話からだけ
それでも
恋人だった
大きな会社は
興せなかったけど
建築家として
個人事務所を構えられる程度には
独り立ち出来るという自信がついた
まだまだ駆け出しの青二才だけれど
今なら帰ることが出来る
あの街で
建築家として
やっていける
でも
貴方は?
不安で
不安で
懐かしい色の電車の中
読むのを楽しみにしていた筈の小説も
文字が
頭の中を素通りしていく
いま、あいにいきまs(ry
……失礼致しました。




