接触、そして
システム(小説)の更新完了
1
街を出て暫く行ったところで、僕は三人を襲撃する事にした。魔法煙草を吸いながら三人が来るのを待つ。他のモノは殺しても良いと言う事だったから、容赦はしない。最初から、殺す気で掛かる。
そんな事を思っていると、遠くに影が見えてきた。僕は魔皇剣の柄に手を置き、シンプルな仮面を付けその場で待つ。そして、姿が完全に確認できた瞬間に、行動を開始した。
「山斬一閃…!」
爆発音とともに、三人の前にいた従者たちが吹き飛ぶ。慌てふためいた表情を見せる奴ら。
全く、ぬるいな。こんな奴を倒す為に僕を仕向けただと。リーデルトめ、期待させておいてなんだこれは。
「貴様! 何者だ!」
執事の一人が僕に怒鳴り、周りの執事と共に剣を向ける。
ほぅ、僕に剣を向けるか。なら、死んでも文句は言えないな。
「破天暗風…」
一瞬でその執事の後ろに行き、抜いた魔皇剣を鞘に納める。そして腕を上げ、指を鳴らす。
地面に何かが落ちる音と共に、赤い雨が降り注ぐ。
「どんなに頑張ろうと、所詮人間はこの程度なのさ」
上半身と下半身が離れ倒れて死んでいる執事の一人の頭を踏みつけ、あざ笑う。
「!? き、貴様!」
一人の執事は激怒し、僕に向かってくる。他の者は僕に脅えているのか、剣を持ったまま立ちすくんでいる。
「貴様は! 貴様は! 貴様は!」
何が言いたいのか分からない。恐らくこの執事にとって、さっき殺した執事は肉親の様な存在だったのだろう。だから激怒し剣を振るう。全く、精神が脆い。そのせいで――
「死ぬのに…」
僕は持ち前のスピードで相手の後ろに回り込み、心臓めがけ魔皇剣を振るう。
「!? ガァ!!」
しかし心臓から外れ、右の肺に突き刺さる。
「おや、外してしまったか。まぁ良い。そのまま死ね」
僕はそう言い、ぐりぐりと剣を回しながら引き抜く。そしてその執事を蹴り飛ばす。心臓では無いので苦しんで死ぬ事になるだろうが、知った事では無い。
「さぁ、次は誰だ? 一人で無理なら集団で来い。兵法の基本は相手より数が多い事だろ? 君達は僕一人に勝てないのかい?」
僕が此処まで言うと残りの執事の半分、大体十五人位が剣を向ける。
ふむ、面白いなこいつ等。メイドに戦わせまいと自らが前に出て、メイドには出るなと言っている。そう言う下らないプライドが、命を落とすと言うのに。いや、これがリーデルトの仕組んだ事なのか?
イヤまさかな。いくらあいつでも、人の心を操る事は出来ない……ハズだ。
僕がそんな事を考えていると、執事たちは斬りかかってくる。
「虐殺行為」
周りにいた執事が僕の攻撃で刻まれる。
「兵法の基本は完璧だったみたいだが、それ以前に力の差が大きかったようだな。すまないな、僕が強すぎて」
どこのナルシストだと言われてもおかしくないセリフを吐くが、この場にいた者の殆どが恐怖した。圧倒的な僕と言う存在に。しかしそんな中、一人が声を上げる。
「もう我慢出来ん! 俺の眼前で仲間が死ぬ事は!」
「………執事長、五月雨 裂夜」
「私もいるわよ化物!」
「今度はメイド長の五月雨 朔夜か」
「いや、従者がやられているのに黙っている主もいないのよ」
「フッ、神導寺 葵」
これはターゲットの三人がいっぺんに出てきてくれた。すばらしい、実にすばらしい。今さっきの虐殺を見てもなお、太刀向かってくるとは! 度胸だけは合格と言ったところかな? 他はまだ未知数だが。
僕がそう思っていると硝子の割れたような音と共に、音楽が変わる。戦闘の合図だ。
「神導寺家執事長、五月雨裂夜! いざゆかん!」
「神導寺家メイド長、五月雨朔夜! いきますわ!」
「神導寺家次期頭首、神導寺葵! いくわよ!」
名乗りから始めるか。なら僕も名乗らなければな。
「悠久の傍観者、シェオル・アイン・ソフ……虐殺の開始だ」
僕はそう言って鞘に納めた魔皇剣を再び抜いた。ちなみに、悠久の傍観者とはリーデルトが付けてくれたものだ。
2
「どうした? 三人がかりでこの程度なのか?」
僕は魔皇剣で三人の攻撃を軽くあしらう。
「クッ! 俺の鋼糸が通用しないだと!?」
「私のナイフが当たらないなんて!?」
「二人のサポートが追いつかない!」
残念だ、期待した僕が馬鹿だった。度胸以外は最悪。雑魚にも程がある。
そう言えば、従者の二人は職業の特性で従者のダメージを変わりに負うらしいな。なら、あの神導寺の御令嬢を狙う事にするか。
僕はそう思い神導寺の御令嬢目掛け、スキルを発動する。
「転真乱刃」
一瞬で間合いを詰め、僕は御令嬢に斬りかかった。斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬り続ける。見た感じ御令嬢にはダメージが無い様だが、二人の従者にはダメージが有るらしい。まぁ御令嬢に関しては精神的にダメージを受けているようだが。
「ハハハ! ハハハハハハハハハ!」
狂ったように笑いながら40連撃を決める。連撃が終わると、二人の従者は膝をついて肩で息をしている。大分ダメージを受けたようだ。
「何で…」
御令嬢が静かに声を漏らす。
「何でこんなことするのよ!」
………こいつはどうしようもないバカだ。リーデルトの言う通りなら、此処で排除しておかなければ世界は終わる。
「う~む、もう少しやってくれると思ったんだけどねぇ」
「「「!?!?!?」」」
「……リーデルト、これはいったいどう言う事だ! 弱いにもほどがあるぞ!」
突如現れたリーデルトに僕は怒鳴る。リーデルトはやれやれと言った感じで首を振りながら近づいて来る。
「リーデルトさん!? こいつと知り合いなの!?」
御令嬢が僕を見る。リーデルトはその言葉に頷き、僕に肩を組んでくる。
「御名答! 僕とこいつは親友さ!」
僕はリーデルトをひきはがし、三人を見る。
「君達は弱い、弱すぎる。君達がこの世界の命運を背負うとなると………実に、実に悲惨な結末を迎える」
「まぁまぁ、そう言ってやらない。君と彼らとじゃレベルが違い過ぎるんだから」
……そう言えば奴らのレベルの情報が頭に流れ込んでこなかった。やはりこいつの仕業だったか。
「リーデルト! あいつは何なんだ! 何故俺達に攻撃してきた!」
「そうですわ! それに、執事が何人も殺されたのですよ!」
従者の二人はリーデルトに詰め寄り、怒りをあらわにする。
全く持って、無様だ。もう何も言えないね。
「ちょっとちょっと、そんなに怒らない怒らない。君達だって何人も殺して来てるんだから」
「それは相手が殺す気で攻撃してきたからだ!」
「それに、私達だって好きで殺しているわけではないですの!」
好きで殺していたらもうそれは人間じゃない。人の皮をかぶった化物。いや、人間から進化した新たな生物と言うものかな?
「だから落ちついてって! それと、シェオルもいつまでそんな仮面を付けているのさ!」
「……外していいのか?」
「誰も付けろと言ってないよ」
そうか、なら外そう。このままじゃ煙草が吸えん。
僕はそう思いながら仮面を外す。そして煙草を加え火を付ける。
「…ふぅ…、……? なんだ、人の顔をじろじろと」
僕が仮面を外してから、三人は驚愕の表情を現し、僕の顔を見てくる。
はて? 僕の顔はそんなにショッキングなのかな? 別に大きな傷跡とかが有るわけではないのに。
「…………そうよね、人違いよね」
「そうだ、そうに決まっている」
「………」
?? ますます分からん。僕に似た知り合いでもいるのか彼等は? いや、そんな事はどうでも良い。
「おっと、忘れるところだった。君達全員に敵対していた奴のレベルの情報を流すよ」
リーデルトがそう言うと頭の中に情報が浮かんでくる。
~五月雨裂夜~ Lv26
~五月雨朔夜~ Lv25
~神導寺葵~ Lv26
…………成程、OK。これじゃ話にならない訳だ。向こうも向こうで僕のレベルを知り驚愕しているようだ。まぁ無理もないだろう。約57位レベルが違う相手に太刀向かっていたのだから。
ではなぜリーデルトは僕を彼等に仕向けたのか? 経験を積ませる? それはないな。ならなんだ?
「うんうん、良い感じに困惑してくれて――」
「良いから話せ、すぐさま話せ。さもなくば首が飛ぶぞ」
「――分かった! 分かったから! 早く剣を鞘に納めて!」
本気で焦っているリーデルトを見て僕はゆっくりと剣を鞘に納める。
「全く、すぐ首に剣を当てるのは君の悪い癖だよ……っとその前に」
リーデルトは手を高く挙げ、指を鳴らす。すると僕が殺した執事に、最上級治癒魔法のリヴァイヴ・ライフがかかり光に包まれ生き返る。
「うんうん、生き返らせとかないと君達の中がギクシャクするからね」
どうでも良いと思うが。まぁ、昔からリーデルトの考えは読めなかったから考える事は止めよう。
「さてと、まず何で君達三人をシェオルと戦わせたかだね」
三人はほぼ同時に頷く。
ふざけた回答だったら殺す、必ず殺す。
「簡単に言えば、君達に知ってほしかったんだよ。本物の強者と言うモノを」
……僕が強者だと? フンッ、笑わせてくれる。僕よりも遥かに強いモノは存在する。
「くだらんな。僕は帰るよ」
「まぁまぁ、ちょっと位聞いてっても良いじゃないか」
「五月蠅い。誰が何と言おうと僕は帰る。そして寝る」
僕はそう言い瞬迅移動を発動させようとした。しかし、発動が出来ない。
リーデルトめ、僕の魔法を止めたな。
「チッ、どちらにしろ聞いていかないと返さないって言う事だね?」
「うんうん、理解が早くて嬉しいよ!」
「黙れ! こんな雑魚と戦わされた事で苛立っているんだ! それに、天才馬鹿の雑兵の事でもだ!」
「だから、すぐに剣を首に向けないでよ! 私だって恐怖は感じるんだから!」
良く言う。まぁ良い。そんな事より、話しを進めてもらう事にしよう。
僕はそう思い、魔皇剣を鞘に納める。
「ふぅ。でね、話と言うのはシェオル、君に三人のレベルを上げてもらいたいんだ」
……ハァ? このバカは何を言っている。三人のレベルを上げる? 何故僕がそんな事を。それは経験値を吸わせろと言う事か? 確かに、レベルの高い僕が、レベルの低い三人とチームを組み、レベルの高いモンスターを倒せばある程度経験値が割り振られる。しかし――
「僕には得する要素がない。と言うより、寝る時間を割かれて損をする」
「う~ん…、確かにそうだね。ならばこういうのはどうだい? 君の作った術式を使えるようにしてあげる」
「!? 何だと!? ならば断罪術式・祭壇自己犠牲や邪眼術式・見者必殺が使えると言う事か!?」
「う、うん。そうだよ。君のステータスに術式の覧を追加しておくから、それで良いでしょ? まぁ元々君が作った術式だからね。君が使わないと意味がないし。あ、でも、この世界に影響がないよう威力や効果の調整はさせてもらうよ」
「あぁ、構わない。ならば僕も君の行った役目を引き受けよう」
交換条件と言う事で、僕は三人のレベル上げを引き受ける事にした。
「じゃ、ちょっと待ってね…」
そう言うと、リーデルトはムムムと唸り、そして両手を上げて――
「ィィッヤァアアアアアアアッハァァアアアアアアアア!!!」
と奇声を上げた。すると僕の頭の中に情報が流れ込んでくる。
~特殊スキル、術式を解放しました~
僕はステータスを確認し
術式
断罪術式・祭壇自己犠牲
堕天術式・呪縛されし黒き翼
邪眼術式・見者必殺
鎮魂術式・虐殺終焉の禊
が追加されているのを確認した。
「ふむ、確かに。ならば僕も役目を果たそう」
「うんうん、ありがとう。私もサポートするから、よろしく」
リーデルトがそう言うのを聞くと、僕は三人の方を向く。
「明日の朝八時に、あそこに見える川明の森に来るんだ。異論は認めないよ、絶対にだ」
僕はそう言うと、三人の意見を聞かず瞬迅移動を発動する。そして僕はこの場から去った。
メンテナンス(小説筆記)を開始します。