同業者、そして対立者
システム(小説)の更新完了。
1
街の騒ぎが収まり二日。僕はその日、近くの泉に来ていた。理由は特になく、しいて言うならばレベル上げと言ったところだ。
「……こっちはモンスターが居ないな…」
どうやらくる場所を間違えてしまったようだ。モンスターが一匹たりとも居ない。
「はぁ…、街に戻るか……ん?」
僕が街に戻ろうと思った時、ふと一人の黒衣の人を見つけた。
「……!? 何だあれ!?」
僕が驚いたのは黒衣の人では無い。その人の周りにある大量のモンスターの死体や、モンスターが消え落としたであろうアイテムの山にだ。
ここにモンスターが居ない理由が分かった。あの人がモンスターを片っ端っから殺しているのだ。良く見ると、あの人の近くに三人の人が居た。
「話しかけるか……否か…」
迷う。もし戦闘になればひとたまりもないだろう。あの様子からすると、レベルが絶対に違う。違い過ぎると言っても過言ではない。
僕はそんな事を思っていると、三人は黒衣の人の元から去って行った。そして、黒衣の人が一瞬で僕の前に現れる。
「!?」
僕は焦って武器を取ろうとしたが、黒衣の人に止められる。
「待つんだ。僕は君と争う気はない」
僕は黒衣の人がそう言ったので、武器を取ろうとした手を納める。そして黒衣の人を見る。其処には、僕と瓜二つと言っても過言では無い位にた男が居た。
「な…なな!?」
驚きで声が出ない。此処まで似ていると不気味だと思う位だ。
「ふむ、君は僕に似ているね。顔立ちも、職業も、そして運の無さもね」
男はそう言い、僕を見る。職業もと言う事は、恐らく彼もエグゼキューショナー、もしくは魔剣騎士なのだろう。運の無さは余計だと思うが。
「あ、貴方は…」
「僕? 僕は只の傍観者さ。力の強さより理から外されたモノ。君なら分かると思うけど?」
確かに。僕の職業は他の職業を圧倒する位の力を持っている。馬鹿げた攻撃力などが代表されるように。
「うん、その顔は何か心当たりがある顔だね。でも…」
男はそこで言葉を止め、僕の後ろを指差す。
「此処でお話ししている暇は、無くなった様だよ。本当に、運が無いな」
男はそう言い煙草を加える。僕は男の指差した方を見る。するとそこには白いロングコートを着て、首から十字架を下げた男が経っていた。
「聖剣騎士」
アレが聖剣騎士なのか!? 男の身長は約2メートル位。
「我は汝らに問う。汝らは何ぞや?」
「僕達かい? 僕たちは傍観者さ」
僕もカウントに入れられているらしい。
男はそれを聞くと、どこからともなく二本の剣を取りだす。
「ならば汝らに問う。汝らの存在は必要か?」
「存在が必要? そんな事は知らないよ」
黒衣の男が平然と答える。
「…地はあなたのためにのろわれ、
あなたは一生、苦しんで地から食物を取る。
地はあなたのために、いばらとあざみとを生じ、
あなたは野の草を食べるであろう。
あなたは顔に汗してパンを食べ、ついに土に帰る、
あなたは土から取られたのだから。
あなたは、塵だから……塵に帰れ!」
男はそう言うと飛び掛かってくる。
「死ね罪人共ぉおおおおおお!!!」
ルガァと言う奇声が上がるのではないかと思う位、大声でそう叫ぶ。
「フッ、猪の様な男だ。下がって居ろ、死にたくなければ」
黒衣の男がそう言い、剣を抜く。
二人の戦いが始まった。
2
「だぁあああうぅううううううう!!!」
男が奇声を上げながら、黒衣の男に斬りかかる。
「クッ、馬鹿力が!」
「ハッハッハ! 楽しいな、罪人よ!」
男はそう言うと、黒衣の男から距離を取る。
「懺悔せよ! 自分の罪を言い表せ!
さすれば神は、真実で正しい方だから
その罪を許し、清めて下さるだろう。
だから私が、汝らを神の元へと葬ってやろう」
「五月蠅いよ、聖書マニアが。何が神だ、馬鹿馬鹿しい」
「黙れ罪人! 地の果てまで全ての人々が主を仰いで救いを得る。神は主のみ、主以外に神は、他には居ない」
二人の言い合いが、攻撃と共に始める。
「罪人よ、貴様も信仰せよ!
信仰がなくては、
神に喜ばれることはできん。
神に近づく者は、
神がおられることと、
神を求める者には
報いてくださる方であることとを、
信じなければならないのだ」
「別に僕は神を信じて居る訳じゃない!」
「ぬわぁんだとぉおおおおお!!」
男は大声を上げ、黒衣の男に斬りかかる。
「五月蠅い! 魔皇狂乱!」
黒衣の男が何十回も男を斬る。
「屑が僕に太刀向かうな!」
黒衣の男の言葉と同時に、男が血まみれの状態で倒れる。
「神は我を癒してくれる!
全て、疲れを持った人は、
重荷を負っている人は、
主に救いを求めよ。
さすれば、主は我々を癒してくれる
疲れと癒し!」
男がスキルを発動する。すると、男の傷は見る見る中に消えていき、再び立ち上がった。
「ハッハッハ、この程度で私を倒すことはできんぞ罪人よ」
「………ククッ」
黒衣の男が笑いだす。
「ククッ……フハハハハハハハ!!」
「何がおかしい!」
「興が乗ったよ聖書マニア! 良いだろう! 君は僕が相手するにふさわしい存在だ」
黒衣の男はそう言い剣を構える。
「僕からの贈り物だ。受け取るが良い!
狂乱獄殺!!」
黒衣の男はそう言うと、男に斬りかかった。しかも、先ほどとは比にならない位の速さで。
「なぁに!?」
「どうした? この程度なのか? ならば君は僕の前に現れ、何がしたかったんだ?」
圧倒的という言葉が正しいだろう。黒衣の男の攻撃に、男はなすすべもなく倒れた。
「グゥ、今のままでは殺し切れん……次は殺す、必ず殺す、だからせいぜいその時まで生き残れ罪人よ」
男はそう言うとその場から消えた。
「………フンッ、僕もこのまま死ぬ訳にはいかないのでね。さて、大丈夫かい?」
黒衣の男が僕に話しかける。
「あ、はい」
「そう、なら良かったよ」
男はそう言うと、戦闘の最中切れたであろう煙草を捨て、新しい煙草を取り出し火を付ける。
「さてと、僕は行くとするよ。君も頑張って生き残るんだ。良い事があるかもしれないよ?」
黒衣の男はそう言うと、さっきの男の様に消え去った。
「……何かのイベントだったのか?」
僕は疑問を持ちつつ、モンスターが居ないので街の方へと戻った。
「地はあなたのために~」と書いた一文は、創世記3章18~19節より。
その分の決め台詞ともなる「あなたは、塵だから……塵に帰れ!」は、創世記3章19節、「あなたは、ちりだから、ちりに帰る」より。
「懺悔せよ~」と書いた一文は、ヨハネの手紙 第一 1章9節を多少変えて使わせていただきました。
「信仰がなくては~」と書いた一文は、ヘブライ人への手紙11章3節より。
「神は我を癒して~」と書いた一文は、マタイの福音書11章28節を多少変えたものを使わせていただいております。
メンテナンス(小説筆記)を開始します。