転職試験
システム(小説)の更新完了
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完全なる平等の存在~タルタロス~ Lv113
相手の情報が入ってくると同時に、黒い槍が飛んでくる。僕は魔皇剣を抜き、槍を紙一重のところでかわした。
「サァ、ソノ生者ノ姿デ冥府ヲ味ワッテ逝ケ!」
巨大な体の長い腕が、大鎌を掴み僕に振り下ろす。僕はその鎌を魔皇剣で止めたが、力が違い過ぎる。このままでは、力押しで負けてしまう。
「クッ、化物が!」
「フンッ、ソレヲ理解シタ上デ此処ニ来タノデァロゥ? 嘆ィテモ、今サラ遅ィ!」
タルタロスはその言葉と共に、詠唱を開始した。
「Ο θανατοσ ειναι η απυλυτη ισυτητα και
Ταρταροσ!」
タルタロスの詠唱後、五体の死神が召喚される。
~死神~ Lv- ×5
これがリーデルトの言っていた死神召喚か! となると、これを喰らう訳にはいかな――
「な!? 身体が動かない!?」
徐々に死神が近付いて来る。不味いな。身体が動かないとなると……。
「我が目で見た者、捉えて殺せ!
邪眼術式・見者必殺!」
術式を発動し、死神を一掃する。その瞬間に、僕の身体は動くようになった。
成程、死神召喚は死神をすべて倒さなければ即アウトと言う訳か。しかも、身体が動かない状態で。おいおい、これはかなり鬼畜だね。
「ホゥ、死ヲ回避シタカ。ダガ、今ノハ小手調ベダ。次ハ同時ニ10体ト行コゥカ。
Ο θανατοσ ειναι η απυλυτη ισυτητα και
Ταρταροσ!」
再び身体が動かなくなる。そして、発言通り10体の死神が召喚される。
「クソッ、化け物が!
我が目で見た者、捉えて殺せ!
邪眼術式・見者必殺!」
僕は全部の死神を見て、一掃した。恐らく、死神自体のHPは10もないのだろう。しかし、触れられた瞬間に終わりと言う訳か。
僕の術式を見て、タルタロスが疑問の表情を浮かべる。
「ムッ? 余リニモ呆気ナク倒サレティクナ。ソレニソノ魔法、見タ事ガ無ィゾ」
「当たり前だ! これは僕が作った術だからな!」
「何? 汝ガ作ッタダト? ソレハマタ…………面白ィ!」
笑いながら大鎌を振るい、斬りかかってくる。力勝負では此方が負ける。かと言って距離を取って、下手に即死スキルを発動されても厄介だ。これは魔王を選んでおけばよかったかも知れないな。まだ僕は一度も攻撃出来ていないし。
「ドゥシタ? ソノ程度カ?」
嘲笑う様な感じで、此方を見下しながらそう言った。流石にこれはイラつく。
「そうかい、お望みなら攻撃してあげよう!
無限獄殺!」
力を抜き、一瞬でタルタロスを20回程斬りつける。そして同時に結界を作り出し、精神もろとも刻んでいく。
「クッ……、中々ヤルデハナィカ」
強がっているのではないだろう。顔を見ても余裕がある。忌々しい位に。
「そうかい。なら、連撃と行こうか!」
100レベルの時に習得した技。威力だけなら一撃必殺級らしい。未だ使った事のない技なので、僕にも分からない。
僕はタルタロスから、近からず遠からずという距離でスキルを発動した。ゆっくりと魔皇剣を薙ぐだけ。
「………大神殺し」
その瞬間、タルタロスの身体から、大量の血が噴き出る。
「グガァ………何ダコレハ!? フッ、面白ィ。シカシ遣ラレテバカリハナァ…………我モ反撃トィコゥカ」
そう言うとタルタロスは、自分の首筋に鎌の先を軽く当て、斬り裂いた。
「Οι ανοιξε τισ πυλεσ του Χαλκου.Αναβιωση ενασ στρατοσ αθανατο」
血が噴き出て、辺りを赤く染めて行く。そして――
「αθανατοι!」
――スキルを発動した。
タルタロスの血が見る見る中に形を変えて行く。そしてそれは無数の兵士に変わった。
「サァ、死ンデ冥府ニ引キ摺リ込マレルガ良ィ!!」
兵士たちは僕を囲むように集まり、手に持つ鎌を振りあげた。
2
「チッ、仕方がない。
世界は焼きつき大地は炭と化す!
魔皇剣! 六号解放!
第六熱魔皇剣・レーヴァテイン!」
剣が光り出し、白い炎が噴き出す。僕はそれを、地面に突き刺した。すると、炎は地面を燃やし、周りにいた兵士たちを、消炭に変えた。そして炎はそのまま、タルタロスを燃やす。
「~~ッッ!? 奥儀カ!? 成程……少シハ遣ルヨゥダ」
燃やされてなお、ニヤリと笑い続けるタルタロス。どんな化け物だよお前は…。
「シカシ、存外ニ今ノハ効ィタゾ。面白イ。我モ奥儀ヲ使ゥトスルカ」
そう言うと、タルタロスは詠唱を開始する。
「Κανεισ δεν μπορει να ξεφυγει απο το θανατο」
不味い!? 確実に即死スキルだ! 発動する前に倒さなければ!
僕は詠唱をしているタルタロスに、攻撃を与え続けた。
「Απο την απολυτη εξουσια του θανατου」
「地獄降誕!! 狂乱獄殺!! 無限獄殺!!」
三回連続でのスキル使用。MPに関しては問題ないが、まるでダメージがない。
「Χιλη ευθραυστη, παραδωστε Θανατοσ」
タルタロスの詠唱は続く。その声は、まるで冥界から死神が、僕を殺しに近づいてきているようだった。
「Η υπαρξη μασ」
「不味い!」
奥儀はさっき使ったので使用は暫く出来ない。攻撃はまるで意味がない。これは避けるにこしたことはないな。しかし、相手の技がどんなものか分からなければ、避けようがない。
「Ναι, η παρουσια του θανατου μασ」
タルタロスは詠唱を終えて、此方を見る。
「サァ、我ニ祈ルガ良ィ。ソシテ、我ヲ受ケ入レルノダ」
そう言うとタルタロスは両手を掲げ――
「θΑΝΑΤΟΣ!」
――奥儀を発動した。
3
息が苦しくなる。頭が割れる様に痛く、体中から血が溢れだす。
何なんだこれは!? タルタロスは、なにを発動したんだ!? 完全即死スキル? いや、それはあり得ない。リーデルトの話しだと、完全即死スキルは存在しないとのことだ。ならば何だ。確実に当たれば即死と言う事が分かる。完全即死はあり得ない。しかし、ただの即死スキルでは無い。ならば何だ? 死神召喚の様に、動きを封じて攻撃をしてくるスキルか? いや、それも違う。そもそも僕自身動くことはできるし、攻撃要因のタルタロスは動かない。更に言えば、何かを召喚する気配もない。残るは――
「!? 時間設定スキルか!」
時間設定スキル。これは決められた時間内に相手を倒さないと、完全即死スキルが発動されると言うものだ。完全即死スキルはそれだけでは存在していないのだが、ある特殊条件下で有れば数えれる位だが存在しているらしい。その内の一つが時間設定スキル。
「サァ、冥府ノ宴ノ始マリダ。楽シンデ逝クガ良ィ」
チッ、とことん即死スキルを使ってくる化け物が! 奥儀は? ダメだ、EXゲージがまだたまっていない。
「大神殺し! 無限獄殺! 狂乱獄殺!」
僕は今使える最高のスキルを連発し続ける。しかしダメージは皆無。こうしている間にも、タルタロスの設定した時間が刻一刻と迫って来ている。
何か打開策はないのか! 粗方、僕が発動できるスキルは発動しつくした。後残っているスキルは………死刑執行。1/3の確率の即死スキル。しかし未だ成功したためしがない。まぁ僕が使わないだけなのだが。
もし僕の考えが正しければ、このスキルは成功するはず。失敗したら終わり。命を賭けた賭けだが――
「でも……やるしかないようだね」
僕はそう呟き、タルタロスに対しスキルを発動した。
「死刑……執行!!」
タルタロスの体を剣が貫く。
「フッ、何ヲシテモ無駄ダ」
結果表示までの約1.5秒がとても長く感じる。成功すれば僕の勝ち。失敗すれば僕の負けが確定する。そして、結果が表示された。一文字で――
――CRITICAL――
――と。
「ガァ!? 何ヲした!? !! 即死スキルカ!」
タルタロスの発動していたスキルが中断され、赤い血が辺りに飛び散る。
「フフフ、僕の勝ちだね」
此処で即死スキルが成功するのは奇跡と言うべきなのだろうが、しかし僕はそうは思っていない。僕はタルタロスの存在をあることに例え、賭けをして見たのだ。それはタルタロスが一番下の冥府の王であり、冥界の神であったからこそできた賭け。僕はタルタロスの存在そのものを、死と考えたのだ。自らが死そのもので有れば、即死スキルによる死、つまり自分自身を受け入れないことはできないと考えてたのだ。
死であるから故に、死を拒否する事が出来ない。それは自分自身だから。タルタロスにのみ有効な手段。他の敵で有れば、こうも簡単に即死スキルが成功する訳がない。
「フフッ……フハハハハ!! 我ノ存在ヲ見抜ィタカ!! 面白ィゾ人間。良ィダロウ。我ヲ倒シタノダ、冥府ノ王ノ称号ヲ手ニスルガ良ィ」
そう言うと、タルタロスは黒い霧となり消えて行った。
獲得経験値 …666666
ボーナス経験値…000322
獲得金額 …626413
最大Hit数 …000322
戦闘時間 …4331.2
獲得ポイント …000666
Lv122に上がった
アイテム"冥王の黒衣"を手に入れた
アイテム"冥府の双鎌"を手に入れた
アイテム"13本目の魔皇鎌"を手に入れた
アイテム"冥府の魔石柱"を手に入れた
アイテム"冥界神の書物"を手に入れた
アイテム"冥王の紋章"を手に入れた
多分だが、死んではいないのだろう。存在自体が死であるタルタロスが死ぬことは多分だがあり得ない。勝負という名目では負けとなるのだろうが、存在自体は絶対に死ぬ事がない。
全く、何処まで化け物なんだ奴は。
そんな事を考えていると、僕の足元に魔法陣が形成された。僕はその魔法陣に従い、この場所から消えた。
メンテナンス(小説筆記)を開始します。