表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RPG  作者: 十六夜
12/20

最終転職

 システム(小説)の更新完了

 

 久々の投稿です。



      1



 三人の修業を引き受けて、もう三年が立った。三人ともLv90になり、転職を終えた。

 裂夜はバトラーから執事長リーダーバトラー、そして執事長から戦闘執事バトルバトラーに転職した。レベルもさることながら、バトラー系統の能力の高さから、このレベルまで来ると、エンカウントモンスターは敵ではなくなった。

 朔夜はメイドからメイドリーダーメイド、そしてメイド長から戦闘メイド(バトルメイド)に転職した。朔夜も裂夜同様、職業上の能力の高さから、エンカウントモンスターに敵はおらず、更に裂夜との連携攻撃が恐ろしい程上達した。

 葵はロードから七人貴族セブンローズ、そして七人貴族から皇帝エンペラーに転職した。ロードの時は殆どが補助魔法だったのに対し、皇帝にまでなると攻撃魔法も多彩で、その威力もかなり高くなった。

 さて、そんな中僕のレベルは120まで上がった。しかし、転職はまだ終わっていない。転職にはそれぞれ決まった課題が存在する。例えば、裂夜が執事長になるには、自らが使えるロードが動けない状態で30体のモンスターを倒す事。戦闘執事になるためには、同じレベルのモンスターを1時間耐久で倒し続ける事だった。

 敵を倒すような簡単な試験なら僕は何の抵抗も受けずに、すぐ終わらせる自信がある。まぁリーデルトの事だから、そんな簡単な試験でない事は分かっている。

 だからこそ僕は完全な状態の今、リーデルトの前に立ち、最終転職を開始しようとしている。

「おやおや、シェオルじゃないか! 今日は何のよ――」

「分かっているのに聞くのか? まぁ良い。転職しにきた。それだけだ」

「――……成程ね。白協会が現れてから三年。あれから奴らは全く攻めて来なくなった。不気味なほどにね。そして、来るべきRPG計画遂行のための転職と言う訳だね」

「フンッ、分かっているなら聞くな。さぁ、転職の課題を言え!」

 僕はそうリーデルトに言った。すると普段は吸わない魔法煙草を手にし、火を付けて吸う。そして煙を吐き出し、そのまま煙草を握りつぶした。

「……まず君に聞かなければならない。君は、魔、冥のどちらを選ぶ?」

 そう言って潰した煙草の吸殻を、上に投げた。その瞬間、僕の頭に情報が流れ込んでくる。


 ~エグゼキューショナー系統の最終転職~

 魔剣騎士からの転職は次の二種の職業の内、どちらか一つの選択となります。

 魔王

 圧倒的な破壊力を誇る魔法を多く習得し、敵を圧倒します。そのため、魔力が大幅に増大し、魔法攻撃のステータスも大幅に上昇します。そのかわり、今まで大幅に上がっていた斬り攻撃、速度のステータスの上昇が少なくなり、運気も極端に下がります。しかし転職後、習得するスキルは全てレベルマックスの状態で習得が可能となります。

 冥王

 即死魔法、即死スキル、もしくは即死レベルのダメージを与える魔法やスキルを多く習得します。ステータスの上昇は今まで通りですが、転職後は魔力、斬り攻撃、魔法攻撃、速度のステータスが大幅に増大し、新たな特殊スキルやスキル、魔法を習得します。しかし、今まで覚えた特殊スキルやスキルや魔法は一部を除き使えなくなります。


 ……成程。どれか一つを選び、転職すると言う訳か。魔王は力で相手を破壊し、冥王は即死系統の術で相手を圧倒する。どれを選んでも強くなれる。しかし、魔王を選んだ場合、今まで魔法を殆ど使わなかった僕が、魔法を使った攻撃にどれくらいの時間をかけて慣れるかが問題だ。

 逆に冥王を選んだ場合、今まで使っていたスキルが使えなくなるのが痛い。やはりハイリスク、ハイリターンと言った所だろう。さて、どうするか。

「私は魔王がお勧めかな? 課題的にも、習得する力的にも」

「……聞いていなかったな。課題は何だ? 勿論、職業により違うのだろう?」

 僕の問い。リーデルトは暫く黙ったままで口を開かない。しかし、僕が魔皇剣を抜こうとしたら、渋々リーデルトは口を開いた。

「はぁ…、課題だったね。まず、魔王の課題だ。魔王の課題はある二体の魔物の討伐。一体目は魔界の入口に存在する神獣、メガロデイノレオンの討伐。二体目は人間界の魔界と呼ばれる地獄谷に存在する魔神、シャイターンの討伐」

「メガロデイノレオンにシャイターンだと…」

 メガロデイノレオンとは、全長三十メートル程の獰猛な化物。そしてシャイターンとは、それは人間界に存在する魔物の王と言われている化物。

「で、次に冥王になるための課題。それはある一体の魔物の討伐」

「一体だと? だったらこっちの方が楽だろ」

 ならばなぜ、リーデルトは魔王がお勧めと言ったのだろうか? いつものおふざけの雰囲気ではなかったし。

「楽か。クスクスクス。君は面白い事を言うね」

「ハァ? いや一体か二体かと言ったら、一体の方が楽と言う事は誰にでもわかるだろ」

「確かにね。でも、君が討伐するのはただの魔物じゃないんだよ」

 ただの魔物じゃない? とてつもなくヤバい奴を討伐するとかか?

「君が討伐する魔物。それは…………………現冥王、タルタロスの討伐だ」

「な!? タルタロスだと!?」

 タルタロス。それは冥府の王であり、神である存在。一般的に冥王はハーデスと言う解釈が多い。確かに、ハーデスは冥王であるが、それは冥府の上層部に過ぎない。ハーデスの納める冥府ハデスの更に奥底にある冥府。神すら怖れなす淀んだ空間の冥王こそがタルタロスである。

「さぁ、これを聞いたうえでもう一度聞く。どっちの職業を選択するかをね。あ、ちなみに行き帰りは私の転移で送ってあげるから心配ないよ」

 前者も後者も鬼門か。しかし、より強大な力を求めるなら冥王を選ぶだろう。しかし、習得するスキルレベルが最大と言うのは魅力的だ。さて、どちらを選ぶか。

「まぁ、簡単な方は魔王だね。でも、シャイターンの持つ特殊魔法はちょっと厄介だけどね。ちょっと待ってて、今情報を流すから」

 リーデルトがそう言い、手をかざす。すると頭の中に情報が流れ込んできた。


 メガロデイノレオン

 圧倒的な攻撃力を誇る魔物です。スキル、大牙暴喰は一撃必殺となります。

 シャイターン

 現世の魔王と呼ばれる魔物です。スキル、地獄召喚は回避不可攻撃となっています。特殊魔法、失楽園は一撃必殺となります。

 タルタロス

 冥界の奥底に住む冥府の神です。スキル、死神召喚タルタロス不死軍隊アタナトイは一撃必殺となります。


「……成程、どれも面倒だな。タルタロスに関しては、一撃必殺スキルが二つもあるなんて」

「いや、厳密に言えばタルタロスが使うスキルは、ほぼすべてが即死スキルだよ」

「何!?」

「上記二つはその中でも回避がしにくいスキルさ」

 それはまた面倒くさい。しかし、来るべき戦いに備えるとしたら冥王が良い。即死スキルは魅力的だ。ならば、僕は――

「冥王を選択させてもらうよ」

「………そう、君ならそう言うと思ったよ。別に良いんだけどね。じゃあ、タルタロスの元に行っておいで」

 そう言いリーデルトが指を鳴らす。すると転移が発動し、僕はこの場から消え去った。



      2



 転移で飛ばされた空間。目に張りつくような暗闇で、一メートル先も見えない。失明したのではないかと錯覚するような暗闇。しかし、次の瞬間、紫色の炎が灯り、辺りを照らす。そこにいたのは身長約三メートル程の大男。長い黒髪に漆黒の衣服をまとい、肌は死体の様に白い。そして、その男が発する雰囲気は、人間では考えられない位、不気味なモノだった。

 僕は理解した。この男が、タルタロスなんだと。

「フム、久シブリダナ。此処ニ来ル生者ハ。ィヤ、我ガ冥王トナッテ、初メテダロゥ。サテ、汝ハ何故コノ第十三奈落、神スラ恐レナスコノ空ゥ間ニ来タノダ?」

 そう問うタルタロスの声は、まるで奈落の底から地上に聞こえてくる死へ誘う声に聞こえた。

「僕が此処にきた意味は…………君を討伐し、僕が新たな冥王になるためだ!」

 ハッキリとタルタロスに聞こえるようにそう言う。それを聞いたタルタロスの顔は、まるで新しいおもちゃを見つけたような子供の笑みだった。しかし、その笑みには、明らかに殺意が込められていた。ビリビリと淀んだ空気を揺らすように伝わってくる殺意。

 まさに冥王。生きとし生けるものが最後に逝き付く、唯一絶対の平等の存在。タルタロスの存在は、それ自体が死であるかのように、不気味なモノだった。

「フゥフフ……フハハハハ!! 我ヲ! ワァレヲ討伐! クゥハハハハハハ!!」

 大爆笑と言うのが正しい位笑う。しかし、その笑いが死へと誘う音に聞こえてしまったのが、僕だ。不死の身体を持ちながら、死を意識してしまう。

「ハハハハ……ハァ………………笑ワセルナヨ! 我ヲ討伐スルダト? 良ィダロウ。ソコマデ言ウ汝ノ力…………我ニ見セルガ良ィ!!」

 タルタロスの言葉と共に、硝子の割れる音が響き、BGMが変わった。

 メンテナンス(小説筆記)を開始します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ