同業者と対立者
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1
後日私は三人とチームを組み、川明の森の前にいた。
「さぁ、準備は良いね? まぁ、主に君達は立っているだけで良いのだけれど」
僕はそう言い、森へと足を踏み入れた。
光さす魔の森~川明の森~
「シェオルさん。私達は何を? 流石に立っているだけと言うのは…」
メイドがそう言う。しかし、この森のモンスターのレベルは30~45。つまり、戦いの時には三人は足手まといでしかない。しかし、何かしないと恐らくは引き下がらないという顔をしている。
はぁ…、面倒くさい。
「なら、僕が合図したらMPの回復をよろしく。後は後ろで徹底防戦していてくれればいいから」
僕はそう言うと、魔法煙草に火を付けモンスターを探しだした。そして一分と経たないうちにモンスターが現れた。
硝子の割れる音と共にBGMが変更される。
~マンドラコーラ~ Lv32 ×2
~マンドラミネラル~Lv30 ×3
頭の中に情報が流れ込む。
さて、昨日手に入れた術式を使う事にしよう。
「さぁ、まずは小手調べだ」
僕はそう言い、詠唱に入った。
「人は生がPenalty!
罪は罪、裁かれません。
何故なら汝は人だから。
死はOut! 生は間違い!
自らを傷つけ許しを請うな!
神はいない、Hellはこの世、
汝が怒りが滅ぼします。
未知は優秀、無知は天才。
死を得るのならSilverナイフで心を護れ!
断罪術式・祭壇自己犠牲!」
僕は詠唱が終わると同時に、地面に魔皇剣を突き刺した。すると、モンスターを貫かんと地面から銀色の針が飛び出す。モンスターの最大HPが3000(3k)。たいしてこの技のダメージが5000(5k)。つまりは一撃でモンスターが死ぬ。
BGMが変わり、戦闘結果が頭の中に入ってくる。
獲得経験値 …003211
ボーナス経験値…000008
獲得金額 …001532
最大Hit数 …000008
戦闘時間 …0010.2
獲得ポイント …000001
五月雨 朔夜のレベルが26になりました。
アイテム"緑の炭酸飲料"を手に入れました。
戦闘結果が流れ終わり、再び辺りを散策する。
「あの、シェオルさんは今まで何をなされていたんだ?」
御令嬢が話しかけてくる。
今まで何をしていたか………ふむ…、難しいな。
「しいて言うなら、毎日魔法煙草を吸い、好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に身体を動かす、そんな感じの毎日を送っていたね。正直、生きた屍の様な生活だった。退屈すぎる。まぁ今も何だけど」
「じゃあ、何でそんなに強いんだ?」
今度は執事が質問をする。
何故強いかか。それも考えた事がなかった。
「ただ向かってくる敵を、返り討ちにしているだけだ。それで勝手にレベルが上がって行き、スキルを覚えて行った。そんな所だ。何故強いのかは分からないな」
僕がそう話していると、モンスターが現れた。
再び硝子が割れる音とBGMが変わる。
~マンドラクターペッパー~ Lv39 ×2
~マンドラサイダー~ Lv35 ×2
~マンドラムシュ~ Lv43 ×1
頭の中に情報が流れ込むと同時に、僕は術式を発動した。
「堕天使はHeaven! 天使はHell!
堕ちるは正しき悪となり、
残るは悪しき善となった。
See,Look,Watch!
無駄なことは良い事だ!
無駄なきことは悪い事だ!
黒い羽は、自分は現します。
避けても避けても逃げれない自分を。
天使はいずれ悪魔になろう。
L-L-S-B-M-B-A
傲慢-嫉妬-憤怒-怠惰-強欲-食欲-性欲
貴方はどれかを選択を!
堕天術式・呪縛されし黒き翼!」
僕から黒い翼が生え、それが敵を覆うように展開される。
そして大量の剣、槍、鎚、銃等の武器が降り注いだ。見る見る中に削られていく敵のHP。そしてまたすぐに片が付いた。
再びBGMが変わり、戦闘結果が頭に入ってくる。
獲得経験値 …003571
ボーナス経験値…000032
獲得金額 …001995
最大Hit数 …000032
戦闘時間 …0020.0
獲得ポイント …000001
アイテム"緑の炭酸飲料"を手に入れた。
アイテム"独特な味の緑の炭酸飲料"を手に入れた。
アイテム"緑のアルコール飲料"を手に入れた。
戦闘結果が終わり、また辺りを散策する。僕達はそれを繰り返した。
2
気付けばかなり時間が経っており、ここら辺のモンスターは粗方全滅させたような気がする。周りには、持ち切れなくなったアイテムが落ちている。三人のレベルも30になった。
「ふむ、今日はこれ位で良いかな?」
僕がそう三人に尋ねると、三人は勢い良く頷く。
「助かった。礼を言う」
「まさか今日一日で此処までレベルが上がるなんて、思ってもみませんでしたわ」
「ありがとう。もしよろしければ、今後もお願いできないでしょうか?」
三人がそう言って頭を下げてくる。僕としては、術式が使えるようになったので、ある程度までは手伝うつもりだ。基本的にはLv70位まで。だから、頭を下げられなくても、そこまではあげてやるつもりだった。
しかし、こうやって頼まれるのも少しくすぐったいような気がする。まぁ、頭を下げられたからには、リーデルトからの任務を完璧に全うしてやらなければならない。
僕はそう思いながら、辺りを見まわした。するとそこには一人の少年が居た。
「さぁ、君達は帰って自分のすべきことをするんだ。僕はこれから用事がある。これは街に行く転移符だ」
僕はそう言って一枚の紙を渡した。三人は再び僕に頭を下げ、転移符を使いこの場から去った。
さて、僕はあの少年に話しかける事にしよう。
そう思い、その少年に僕は近付いた。
「!?」
僕が一瞬で近づいてきた事に驚き、少年は剣に手をかける。
「待つんだ。僕は君と争う気はない」
僕はそう言って剣を納めさせる。そして、僕は少年を見た。
ほぅ、此処まで僕に似ている存在が居るとは。そしてこの雰囲気は……恐らく、エグゼキューショナーなのだろう。僕の勘がそう言っている。
「な…なな!?」
少年の方は驚きで声が出ないようだ。
まぁ確かに、自分と瓜二つの者が現れて驚かない訳がない。
「ふむ、君は僕に似ているね。顔立ちも、職業も、そして運の無さもね」
もう少し話していたい。しかし、この嫌な感じは……敵が近付いてきている。
「あ、貴方は…」
少年は戸惑いながらも聞いて来る。
「僕? 僕は只の傍観者さ。力の強さより理から外されたモノ。君なら分かると思うけど?」
僕はそう答えた。すると少年は少し考え込む。
これで分かった。彼がエグゼキューショナーだと言う事が。そして丁度その時、敵が姿を現した。
「うん、その顔は何か心当たりがある顔だね。でも…」
僕はそう言って少年の後ろを指差す。そう、敵が居る方向に。
「此処でお話ししている暇は、無くなった様だよ。本当に、運が無いな」
僕はそう言って、魔法煙草に火を付ける。僕達の前に立ちふさがったのは、白いコートを着た大男。恐らくは別世界からの侵略者の一人。つまり、白協会からの使者。そしてその中でも、幹部並みの力を持った男なのだろう。全く隙がない。隙と思われる所は、全て誘っているのであろう。何よりも身体からあふれ出てくる闘気、覇気、そして殺気がそれを物語っている。
「聖剣騎士」
僕はそう呟いた。すると、頭の中に情報が流れ込んでくる。
白協会最強の使徒~シュヴァリエ・コシュマール~ Lv80
とんでもない敵が来たようだ。
「我は汝らに問う。汝らは何ぞや?」
男が突然口を開き、そう聞いて来る。だから僕は、自分の職業の分類を教えた。
「僕達かい? 僕たちは傍観者さ」
勿論、これで納得するとは思っていない。
そう思っていると、再び聞いてきた。
「ならば汝らに問う。汝らの存在は必要か?」
そんな事を聞いて来る。
存在が必要か必要じゃないか。それを決めるのは人間には無理だ。神でないとそれは決められないし、分かりもしない。そして僕はその神の存在すら興味がない。
「存在が必要? そんな事は知らないよ」
最善の回答だと思う。
しかし、そう答えた瞬間、硝子の割れる音と共にBGMが変わった。
「…地はあなたのためにのろわれ、
あなたは一生、苦しんで地から食物を取る。
地はあなたのために、いばらとあざみとを生じ、
あなたは野の草を食べるであろう。
あなたは顔に汗してパンを食べ、ついに土に帰る、
あなたは土から取られたのだから。
あなたは、塵だから……塵に帰れ!」
男はそう言うと飛び掛かってくる。
「死ね罪人共ぉおおおおおお!!!」
ルガァと言う奇声が上がるのではないかと思う位、大声でそう叫ぶ。
「フッ、猪の様な男だ。下がって居ろ、死にたくなければ」
僕は少年を後ろに下がらせ、魔皇剣を抜いた。
そして、戦闘が始まった。
3
「だぁあああうぅううううううう!!!」
男は奇声を上げながら、僕に斬りかかってくる。僕はそれを受け止める。しかし、この男の力はふざけていた。
「クッ、馬鹿力が!」
「ハッハッハ! 楽しいな、罪人よ!」
男はそう言うと、僕と少し距離を置く。
「懺悔せよ! 自分の罪を言い表せ!
さすれば神は、真実で正しい方だから
その罪を許し、清めて下さるだろう。
だから私が、汝らを神の元へと葬ってやろう」
この一文、何処かで……あぁ、ヨハネの手紙の一文か。さっきの塵に帰れとかもだが――
「五月蠅いよ、聖書マニアが。何が神だ、馬鹿馬鹿しい」
下らない。人間の作りだした意識の産物のくせに。それに、君達の世界には神の存在すら意識しない者が居るんじゃないか? だからこの世界に侵略出来ているのだろうが!
「黙れ罪人! 地の果てまで全ての人々が主を仰いで救いを得る。神は主のみ、主以外に神は、他には居ない」
クッ、舌戦だと話しにならない。何でも神、神、神、神、あぁ五月蠅い!
僕がそう思っていると、男が口を開く。
「罪人よ、貴様も信仰せよ!
信仰がなくては、
神に喜ばれることはできん。
神に近づく者は、
神がおられることと、
神を求める者には
報いてくださる方であることとを、
信じなければならないのだ」
だから、僕は神と言う存在を否定する者だよ!
「別に僕は神を信じて居る訳じゃない!」
「ぬわぁんだとぉおおおおお!!」
僕のその一言に、男は大声を上げて激怒する。
「五月蠅い! 魔皇狂乱!」
僕はスキルを発動し、男に攻撃をした。
「屑が僕に太刀向かうな!」
僕の言葉と共に、男は血まみれの状態で倒れていく。しかし――
「神は我を癒してくれる!
全て、疲れを持った人は、
重荷を負っている人は、
主に救いを求めよ。
さすれば、主は我々を癒してくれる
疲れと癒し!」
男はスキルを発動し、傷を回復させた。そして再び立ち上がり――
「ハッハッハ、この程度で私を倒すことはできんぞ罪人よ」
ほぅ、これは面白い。実に、面白い。
「………ククッ」
思わず笑みがこぼれる。
「ククッ……フハハハハハハハ!!」
声を上げて笑ってしまった。しかし、それほど愉快な気分なのだ。
「何がおかしい!」
男がそう怒鳴る。
「興が乗ったよ聖書マニア! 良いだろう! 君は僕が相手するにふさわしい存在だ」
そう言い僕は、再び魔皇剣を男に向ける。
「僕からの贈り物だ。受け取るが良い!
狂乱獄殺!!」
僕はそう言い、スキルを発動させ、何十回も男を斬りつける。
「なぁに!?」
先ほどとは比べ物にならない位なので、男が驚愕の声を上げる。
「どうした? この程度なのか? ならば君は僕の前に現れ、何がしたかったんだ?」
僕にどんどん押されていく男。そして男は、僕の攻撃に耐えきれなかったのか、その場に倒れた。
「グゥ、今のままでは殺し切れん……次は殺す、必ず殺す、だからせいぜいその時まで生き残れ罪人よ」
そう言うと男は、スキルを発動させたのか、この場から消え去った。
その瞬間にBGMが変わり、戦闘結果が頭の中に流れ込んでくる。
獲得経験値 …213998
ボーナス経験値…000143
獲得金額 …023156
最大Hit数 …000143
戦闘時間 …1322.9
獲得ポイント …000065
アイテム"白協会の聖書"を手に入れた。
アイテム"狂気の聖剣騎士のコート"を手に入れた。
戦闘結果が流れ終わり、僕は少年の方を向く。
「………フンッ、僕もこのまま死ぬ訳にはいかないのでね。さて、大丈夫かい?」
僕は少年の無事を確認すべく、そう聞いた。
「あ、はい」
少年はそう言いながら頷く。
「そう、なら良かったよ」
オッと、煙草が切れているね。
僕は新しい魔法煙草を取り出し、火を付けた。
「さてと、僕は行くとするよ。君も頑張って生き残るんだ。良い事があるかもしれないよ?」
僕は少年にそう言うと、瞬迅移動を発動させ、この場から去った。
「地はあなたのために~」と書いた一文は、創世記3章18~19節より。
その分の決め台詞ともなる「あなたは、塵だから……塵に帰れ!」は、創世記3章19節、「あなたは、ちりだから、ちりに帰る」より。
「懺悔せよ~」と書いた一文は、ヨハネの手紙 第一 1章9節を多少変えて使わせていただきました。
「信仰がなくては~」と書いた一文は、ヘブライ人への手紙11章3節より。
「神は我を癒して~」と書いた一文は、マタイの福音書11章28節を多少変えたものを使わせていただいております。
本作品第五部の同業者、そして対立者と同じ内容です。
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