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機能不全家族の子供  作者: 桐生正恭


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8/9

8話目 孤独

中学を卒業した俺は、地元を少し離れたコンビニで社員として働くことになった。

未成年の俺の為に、オーナーが保証人になってくれたらしい。

赤の他人の俺になぜそこまでしてくれたのかというと、単純に人手不足らしい。

多店舗経営しているらしく、面接でゆくゆくは店長にしたいと言ってくれた。

そんなオーナーを入れはアパートの前で待っていた。

すると黒い車がやってきて、年寄りが降りてきた。オーナーだ。

「やあ、新田君。面接以来だね。これが鍵ね。失くさない様に。必要最低限の家電と布団は部屋にあるから、好きに使ってね。。あとこれ……」

オーナーが封筒を渡してきた。

「そんな多くないけど、生活費に使って。」

「何から何まですみません。」

「まあ君の家庭事情は担任の先生から聞いてて、それを踏まえた上で採用しているから。中々若い人材が来てくれないから助かるよ。明日から出勤だから今日はゆっくり休んで。じゃあ俺は仕事に戻るね。」

「ありがとうございます。」

オーナーは去っていった。それを見送って俺は部屋に入った。

部屋はワンルームで実家の部屋より狭いが、申し分ない。

俺は大の字になって横たわった。

「あー、やっと解放された。」

実家を出る日、誰も見送りには来なかった。でもこれでいいんだ。

自分で孤独な道を選んだのだから。

寂しい気持ちを見ないふりして布団に入った。


「おはようございます。」

レジにはちょうどオーナーが立っていた。

「ああ。新田君か。おはようございます。とりあえず事務所入って。」

俺は言われた通りに事務所に入った。

中に入ると女性が二人いて、こっちをじっと見てきた。

「もしかして……新しく入った子?」

「はい、新田太陽と言います。よろしくお願いいたします。」

「やだ、こんな若い子がくるなんておばちゃんびっくり。私、宮本と言います。よろしくね。」

「森です。」

話を聞くと、二人は子持ちでパートで働いているようだ。

ユニフォームを渡されて俺は袖を通してみた。鏡で自分のユニフォーム姿を見ると違和感しかない。こないだまで学ランだったのにな。

もう社会人なんだ。と改めて実感した。

「じゃあ朝礼しようか。私たちの後に続いてね。いらっしゃいませ!」

「い、いらっしゃいませ!」

よくそんな声が出るな。

接客用語を復唱していよいよ現場に立つことになった。最初はレジ接客を教わる。

宮本さんが隣について教えてくれることになった。

「登録は簡単でバーコードをスキャンする。揚げ物とかバーコードがない物はタッチパネルで登録するの。」

「ほおほお……」

すると人が入ってきた。

「いらっしゃいませ!」

宮本さんが条件反射のように言葉を発した。俺も後に続いて言った。

「そうそう、新田君いい声してるね。何か部活でもやってたの?」

「いえ、ずっと帰宅部でした。」

「そっか、高校行かないで働くなんて大変ね。」

そう言って宮本さんはどこかへ行った。客が俺のいるレジに来た。

ちょっと待て、いきなり一人で接客するのか?周りを見渡したが誰もいない。

仕方なく商品をスキャンしようとすると、

「おい。若造!お前は挨拶もできないのか!」

老人がいきなり怒鳴ってきた。それを聞いて宮本さんがやってきた。

「お客様!どうかなさいましたか!?」

「わしがレジに来たのにこの若造、いらっしゃいませも言わないんだがどういう教育をしているんだ!」

「大変申し訳ございません。今日から入った新人ですので。私からきつく言っておきますので。」

なるほど、これが噂の老害っていうやつか。

「ちょっと、新田君、何ボーっとしてるの。頭下げて。」

「申し訳ございませんでした。」

「ったく。さっさとやれ。」

これが大人なのか。多分だが俺が悪いんだろう。社会に出るとはこういうものなのか。

「ありがとうございました。」

レジを終えて、老人は去っていった。

「あなたね……挨拶は基本でしょ。ついこないだまで中学生の子にこんな事言いたくないけど、もう社会人だという事を自覚しなさい。」

「はいすみません……」

俺だって好きでこの道を選んだわけじゃない。親のせいだ。

その後しばらく教わりながらレジをして休憩に入った。

「はー、しんど。」

思わず言葉がこぼれてしまった。金を稼ぐって楽じゃねえな。

これが毎日続くと思うと気が気じゃない。やりがいもあるわけでではない。

人生ってくだらないな。一人で生きるってこういう事なのか。

自分で選んだとはいえ、前まで漠然としていた孤独というものがはっきりと認識し、泣きそうになってしまった。

周りの同級生は今頃学校なのにな。

孤独を噛み殺し、仕事に戻った。


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