8話目 孤独
中学を卒業した俺は、地元を少し離れたコンビニで社員として働くことになった。
未成年の俺の為に、オーナーが保証人になってくれたらしい。
赤の他人の俺になぜそこまでしてくれたのかというと、単純に人手不足らしい。
多店舗経営しているらしく、面接でゆくゆくは店長にしたいと言ってくれた。
そんなオーナーを入れはアパートの前で待っていた。
すると黒い車がやってきて、年寄りが降りてきた。オーナーだ。
「やあ、新田君。面接以来だね。これが鍵ね。失くさない様に。必要最低限の家電と布団は部屋にあるから、好きに使ってね。。あとこれ……」
オーナーが封筒を渡してきた。
「そんな多くないけど、生活費に使って。」
「何から何まですみません。」
「まあ君の家庭事情は担任の先生から聞いてて、それを踏まえた上で採用しているから。中々若い人材が来てくれないから助かるよ。明日から出勤だから今日はゆっくり休んで。じゃあ俺は仕事に戻るね。」
「ありがとうございます。」
オーナーは去っていった。それを見送って俺は部屋に入った。
部屋はワンルームで実家の部屋より狭いが、申し分ない。
俺は大の字になって横たわった。
「あー、やっと解放された。」
実家を出る日、誰も見送りには来なかった。でもこれでいいんだ。
自分で孤独な道を選んだのだから。
寂しい気持ちを見ないふりして布団に入った。
「おはようございます。」
レジにはちょうどオーナーが立っていた。
「ああ。新田君か。おはようございます。とりあえず事務所入って。」
俺は言われた通りに事務所に入った。
中に入ると女性が二人いて、こっちをじっと見てきた。
「もしかして……新しく入った子?」
「はい、新田太陽と言います。よろしくお願いいたします。」
「やだ、こんな若い子がくるなんておばちゃんびっくり。私、宮本と言います。よろしくね。」
「森です。」
話を聞くと、二人は子持ちでパートで働いているようだ。
ユニフォームを渡されて俺は袖を通してみた。鏡で自分のユニフォーム姿を見ると違和感しかない。こないだまで学ランだったのにな。
もう社会人なんだ。と改めて実感した。
「じゃあ朝礼しようか。私たちの後に続いてね。いらっしゃいませ!」
「い、いらっしゃいませ!」
よくそんな声が出るな。
接客用語を復唱していよいよ現場に立つことになった。最初はレジ接客を教わる。
宮本さんが隣について教えてくれることになった。
「登録は簡単でバーコードをスキャンする。揚げ物とかバーコードがない物はタッチパネルで登録するの。」
「ほおほお……」
すると人が入ってきた。
「いらっしゃいませ!」
宮本さんが条件反射のように言葉を発した。俺も後に続いて言った。
「そうそう、新田君いい声してるね。何か部活でもやってたの?」
「いえ、ずっと帰宅部でした。」
「そっか、高校行かないで働くなんて大変ね。」
そう言って宮本さんはどこかへ行った。客が俺のいるレジに来た。
ちょっと待て、いきなり一人で接客するのか?周りを見渡したが誰もいない。
仕方なく商品をスキャンしようとすると、
「おい。若造!お前は挨拶もできないのか!」
老人がいきなり怒鳴ってきた。それを聞いて宮本さんがやってきた。
「お客様!どうかなさいましたか!?」
「わしがレジに来たのにこの若造、いらっしゃいませも言わないんだがどういう教育をしているんだ!」
「大変申し訳ございません。今日から入った新人ですので。私からきつく言っておきますので。」
なるほど、これが噂の老害っていうやつか。
「ちょっと、新田君、何ボーっとしてるの。頭下げて。」
「申し訳ございませんでした。」
「ったく。さっさとやれ。」
これが大人なのか。多分だが俺が悪いんだろう。社会に出るとはこういうものなのか。
「ありがとうございました。」
レジを終えて、老人は去っていった。
「あなたね……挨拶は基本でしょ。ついこないだまで中学生の子にこんな事言いたくないけど、もう社会人だという事を自覚しなさい。」
「はいすみません……」
俺だって好きでこの道を選んだわけじゃない。親のせいだ。
その後しばらく教わりながらレジをして休憩に入った。
「はー、しんど。」
思わず言葉がこぼれてしまった。金を稼ぐって楽じゃねえな。
これが毎日続くと思うと気が気じゃない。やりがいもあるわけでではない。
人生ってくだらないな。一人で生きるってこういう事なのか。
自分で選んだとはいえ、前まで漠然としていた孤独というものがはっきりと認識し、泣きそうになってしまった。
周りの同級生は今頃学校なのにな。
孤独を噛み殺し、仕事に戻った。




