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機能不全家族の子供  作者: 桐生正恭


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7/9

7話目 道

俺はある家の前に立っていた。

出てきたのは中年の男だ。

「おー、太陽君か。久しぶりだね。元気にしてるかね。」

「まあ……はい……」

この人は美咲の父親だ。普段は朗らかで優しいが、怒ると怖く、何より厳しい。

美咲の進路もこの人に決められた。

幼い頃からの付き合いとはいえ、やっぱり彼女の父親ともなると緊張する。

昔はよく家族ぐるみで付き合いがあったが、俺と両親が仲悪くなったことからそれはなくなった。

「いつの間にかうちの娘と付き合ってるとはなあ。びっくりしたよ。」

「あー、お父さん!何してるの!」

「美咲、中学生なのに化粧しているのか?」

「ううっ……お父さんには関係ないでしょ。ほら、太陽いこ!」

美咲が俺の腕を掴んで連れて行った。


俺たちは街中へデートをしに来た。

「お父さんが出てくるとは思わなかったな。」

「いつもお母さんだもんね。たまたま休みで太陽に会いたかったんだって。」

「まあそう思ってくれてるのは嬉しいな……流石にびっくりしたけど。」

「ごめんねえ。あっ!あったよ!行きたかったカフェ!」

入ってみるとSNSで流行りそうなおしゃれなカフェだ。

俺はコーヒー、美咲は紅茶を頼むことにした。

「受験近いのにお父さん、よく許してくれたな。そろそろ受験なのにな。」

「たまたまこないだの模試がよかったからね。まあそれでも偏差値的には安心できないけどね……」

「受験か……俺には縁がないから応援することしかできねえな。」

「何言ってるの。受験じゃなくても太陽は就職があるでしょ。どんな道でも頑張らないと。」

「そうだな。そういえば寮があるところに就職できた。」

俺はみんなの受験より一足早く道が決まっていた。

未成年の子供が家を出るというのに親父は保証人にもならないと言う。

親父なりの俺との決別なのだろう

最後の最後まで親としての責任を果たさない親父を、俺は心底軽蔑している。

保証人がいない俺は賃貸契約ができず、寮のある仕事に就いた。

やりたくもない仕事だが、親に頼らず生きていくにはこれしかなかった。

「そっか、太陽も社会人になるのかあ。大人って感じ。」

俺にとって大人とは敵である。

法的には子供だが、人生を生き抜くには背伸びして大人ぶるしかなかった。

話が弾む間にあっという間に暗くなり、俺たちは家へ向かった。


校庭の桜が咲いている。

卒業式はあっという間に過ぎ去り、俺の中学生活に終わりを告げた。

卒業生たちが校舎前にたくさん集まって、写真を撮ったりしている。

俺はみんなと進路が違うため、疎外感があった。

惨めになるからさっさと帰ろうとすると、美咲に引き留められた。

「太陽、ツーショット撮ろうよ。」

仕方なく応じた。

写真を撮った後、人目のない所に呼ばれた。

「太陽、第二ボタンちょうだい。」

ほんとにこんなベタな事があるんだな。着る事もないからまあいいか。

「はいこれ……今までありがとう。」

「そんな一生の別れみたいに言わないでよ……」

いいや……これが本当の別れだ。

俺は美咲の顔を見ずに振り返って走った。

「太陽、待って!!」

呼び止める声を振り切って俺は走った。

本当はずっと一緒にいたかった。美咲の事は今でも大好きだ。

だからこそ別れないといけないと思った。美咲には幸せになって欲しいから。

俺みたいな自分勝手な人間が誰かを好きになる資格はない。

中卒で学歴のない俺に美咲を幸せにはできない。

通り道の公園に寄って、俺はベンチに座った。

「なにやってるんだろ俺……」

自分がどう生きればいいのか分からなくなった。

美咲という絶対的な味方をこの手で自分から手放したくせに、後悔している。

絶望の淵に立たされている。

孤独感に苛まれても、もう誰も助けてくれない。

今、覚悟を決めないといけない。

「なんかもう全部面倒くさい……」

考える事が苦痛になった俺は家に帰る事にした。


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