プロローグ 170年の悪夢
俺は、悪夢が嫌いだ。
理由はただ一つ。
俺は170年間、同じ悪夢を見続けていたから。
『オ”ォァ・・・』
『オ”ィエ”ォ・・・』
今日も不気味な声が響き渡る。
永遠に目が覚めることのない、それでいていつも新鮮な苦痛を味わわせる夢。
そんな夢の中にある日突然、一人の少女が現れた。
10歳ほどの慎重だが、真っ白な髪と翡翠色の瞳が輝いている。
「・・・誰?」
「私は結衣。あなたの名前は?」
「...希夢」
この出会いが、希夢の運命を変えることになる。
◆◆◆
「希夢は、ずっとこの悪夢を見続けて来たの?」
「...ああ」
俺は小さくそう返す。
「頑張ったんだね」
何故か子ども扱いされている気がして、でも照れ臭かった。
この悪夢の心の傷が、少しずつ、でも確実に癒されていく。
「こんな悪夢・・・見たくないよね」
そう言って結衣は周りを見た。
『ウ”・・・ィ”・・・』
そこにいたのは、巨大な赤黒い怪物。
それがこの夢の全てを覆い尽くしている。
実体はなく、ただ声を発してうごめくだけだ。
その怪物を見て結衣は少し目を伏せる。
そして、言った。
「いいんだよ、悪夢を見なくて」
結衣はその手に光を纏う。
「〝光幻〟」
その瞬間、怪物が光に浄化させていく。
『イゥ”・・・ィ”ェ”・・・』
その時、目が覚めた。