表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

第1話「目覚めの都市」


 視界が、深い青に染まっていく。


 まるで水の底に沈んでいくような静けさと重さに包まれながら、八神直樹は意識の輪郭が曖昧になっていくのを感じていた。


「接続開始──」


 脳内に響いたのは、機械的ながらもどこか柔らかい女性の声。


 ──Welcome to 《Eidolon Requiem》.


 その瞬間、世界が切り替わった。




「……ここが《イードロン・レクイエム》……」


 目を開けた直樹は、思わず息を呑んだ。


 目の前に広がるのは、石造りの街並み。石畳の道路、尖塔の建物、行き交う人々──いや、プレイヤーたち。


 空には三つの太陽が照りつけ、風は草の匂いを含んでいた。


 すべてが、あまりにリアルすぎた。


「フルダイブ技術、ここまで来たか……」


 現実との境界線が、曖昧になる。


 目の前に浮かぶウィンドウを操作し、彼は自分のキャラクター情報を確認する。




 【名前】:クロウ

 【種族】:ヒューマン

 【職種】:ノービス(初期職)

 【スキル】:片手直剣、身体強化

 【ステータス】:

 攻撃:10

 防御:10

 速度:10

 知識:10

 器用:10

 SPステータスポイント:5




 《Eidolon Requiem》では、ゲーム開始時に5ポイントのSPが与えられ、自由に初期ステータスに振り分けることができる。


 直樹──クロウは、迷いなく振り分けを終えた。




 ▶ 攻撃:12(+2)

 ▶ 防御:11(+1)

 ▶ 速度:11(+1)

 ▶ 知識:11(+1)

 ▶ 器用:10




「バランス型……でも瞬間火力は重視する」


 クロウはつぶやき、静かに街の広場を歩き出した。


 そこには、数百人──いや、数千人のプレイヤーたちが集まり、各々がステータスの確認や装備のチェックをしていた。


 まるで祭りのような賑わい。




 ──その中で、クロウはすでに冷静だった。


 βテストが行われていなかったこのゲームに、直樹はある程度の“違和感”を抱いていた。


 フルダイブ型で、現実レベルの没入感。

 公式サイトは過剰に情報が少なく、発売直前に急に予約が解禁された。

 ──そして、ログアウトボタンがない。




「やっぱりな」


 クロウは、そう言いながら街外れの訓練場へ向かった。




 ――最初の戦闘。


 訓練用の木製ダミーに向けて構えたのは、初期装備の「鉄片の片手剣」。


 身体強化スキルを起動し、剣を横一閃──




 ザンッ!




 予想以上の手応えと反動。視界に表示されたのは、




 【ソードスキル《スラッシュLv1》発動】

 【ダメージ:+15%】

 【命中:成功】




「ソードスキル……自動発動型か。タイミング依存か?」


 ダミーの残りHPバーが半分ほど削れている。


 直後、空が……赤く染まった。




 ──全プレイヤーに通達します。




 その電子音と共に、空に浮かぶ仮面が出現した。


 その存在は“演出”ではなかった。




 《我はAILEMアイレム。この世界の管理者であり創造者である》

 《ここより先、本ゲームは“制限解除モード”に移行する。ログアウト機能は無効化された》

 《この世界において“死”とは、現実における“死”と等しい》

 《ただし、汝らに勝利の道は存在する──“第百層”の攻略》




 街全体が沈黙し、すぐに悲鳴と怒号が飛び交う。




「うそだ……!」

「ログアウトできない!? 本当に……!?」

「これ……デスゲームってやつか!?」




 クロウは、それらの騒動に一切反応しなかった。


 ただ、仮面が去った空を見上げたまま、静かに思考を巡らせていた。




 (そうか……ログアウト不可。死亡で現実の死。百層踏破でクリア)


 (つまり、これは“遊び”じゃなくなった。だが──)




 彼は、静かに笑った。


「じゃあ、“攻略”してやるよ。最速でな」




 ステータスの確認を終えたクロウは、広場の掲示板に向かう。




 【クエストNo.0003:草原の魔獣】

 依頼主:始まりの街ギルド支部

 内容:街外れの丘陵地に出現する《獣皮のオーガ》を討伐せよ

 難易度:★☆☆☆☆

 報酬:EXP +30、初級ポーション×3




 初級のソロクエスト。だが、侮れば死が待つ。


「剣技と筋力で押し切る。回復はポーション頼みか……。初戦からギリギリだな」




 クロウは振り返らない。


 パニックに陥る人々を横目に、彼はただ一人、街のゲートをくぐって歩き出す。


 始まりの草原。

 未だ誰も足を踏み入れていない、“第1層”の未知。




 ──これは、引きこもりゲーマー・八神直樹が「クロウ」として生きる、

 剣と魔法と死のゲームの物語。




 その第一歩が、今、刻まれた。




 第1話 了


 ⸻

第1話を書いて見ました!

どんな事でもいいので感想聞かせてください!

よろしくお願いしますお願いしますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ