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望月と少年の非日常譚  作者: 義春みちを
1章 異世界新生活
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1章 8話:わくわく!初心者工作!!

幼女と森へ向かう。絵面は完全に誘拐犯とその被害者だ。しかし、実際は逆で、ウツキは脅されていた。


「太陽の民かもしれない奴を、自由にさせるわけにはいかない。」


と、言う事でツタかなにかで縛られている。太陽の民がどれだけ警戒されているのか、ルナティアの件で知っていたはずだ。しかし、関係のない事で警戒されるのはまだ慣れない。


ヴィオラに連れられて、木の開けた場所まで来た。


「こ…ここら辺に、魔物除けをして欲しいんですけど…」


ツタのような物から解放される。


「今から、木に術式を刻んでいく。術式の埋め込まれた木には魔物は近づけない。」


開けた場所を囲うように木に術式を刻んでいく。刻まれた木は、ほのかに青白い光を放っている。


「ありがとう。助かったよ。」


「…小娘を、」


ヴィオラは何かを言おうとして、言葉を飲み込んだ。


「ヴィオラは帰る。小娘にフラれて泣きついてきても何もしないから。」


「なんで告白してフラれる前提ッ⁈」


言葉の通りヴィオラは自室へと帰り、ウツキは倉庫へと向かった。


□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇


倉庫にはたくさんのものがあった。ソルティアから、「倉庫のものは基本的に使わないから、漁って好きな物を持ってくといいわ。」と、言われている。


以前、ルナティアの持っていた懐中電灯の様な物をたくさん、それに加えて大きな布を倉庫から持ち出す。


□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇


「お願いしますっ!ルナティア様っ!!」


「これは、『友人』のウツキ殿ではないですか。どうしたんですか?」


やたらと『友人』を強調してくる。


「このナタで、木材を作るのを手伝ってください!!」


「ナタの扱いには慣れてないんですが…わかりました。『友人』の頼み事です。手伝わせていただきます。」


こうして、ウツキとルナティアは森で作業を開始した。


余談だが、ナタはウツキの部屋の壁に掛けられていた物である。


□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇


「はぁっ!!」


目にも止まらぬ速さで、縦に置かれたウツキより少し大きいぐらいの丸太が、5等分に切り裂かれていく。薄く切られた木材同士を、ウツキがロープで繋ぎ合わせていく。


「手先、とても器用なんですね。羨ましいです。」


「家庭科によって開花した俺の才能が、こんなところで役に立つとは…というか、ルナティアのパワーの方がすごくない⁈」


「他の女の子にそんなこと言ったら、捻られますよ。」


「捻る⁈」


地道に木を切り、編み込み、柵を作る。柵で丸く囲いたいのだが、ロープの締める加減が難しい。実物は動物の皮を使うらしいが、そんな物は無く、調達もウツキにはできない。


かれこれ、同じ作業を3日ほど続けた。


柵ができれば、そこに目地材とやらを塗っていく。どうやら、セメントやモルタルのような物のことらしい。

たまに、カタカナなどが伝わらないため、元の世界の物を伝える事に苦戦する。


「ウニ」と呼ばれるパーツを作る。中心に支柱を建て、その支柱と柵をつなぐパーツの事だ。本当は、天窓の窓枠となるパーツも必要らしいのだが、ガラスなんて取り付けるのには、専門的な技術が必要だろう。


「サリユの先端みたいな形ですね。」


「なにそれ、異世界カルチャーショックッ!!」


「かるちゃ…?」


とにかく、21本の木材の棒を組み、ロープで固定して、ウニを作る。特殊な枠組みのドアも付けてあげれば、骨組みは完成だ。



「ブルーシートとかあるか?」


『ブルーシート』という聞き馴染みのない単語に首を傾げるルナティア。


ここは異世界だと言うことを思い出す。魔物は出なければ、話の通じる美少女と工作。数日で、ルナティアの怪力には慣れてしまっていた。


「いや、気にしないでくれ。耐水性のある布が欲しいんだ。」


「耐水性…たしか東に、とても発展している国があります。その国の『水蚕』から取れる絹から作った布なら、最近出回るようになりました。どれぐらい残っているか見てきます。」


ルナティアが走って屋敷まで見に行く。しかし、遠くまで走り、こちらを振り返る。


「あんまり遠くまで行かないでくださいね!」


「俺はガキかよッ!」


それだけ叫び伝えて、再び屋敷へと走っていった。


□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇


ウツキは1人歩いていた。木々の音に耳を傾けながら、新鮮な空気を吸う。日本では引きこもっていてできなかった『自然を楽しむ』をする。


何処まで広がっているかもわからない森にたった1人。孤独感というよりも、誰からも縛られていない開放感がある。


そう感じるほどに広く豊かな森よりも、空はさらに広がっている。木々の中から差し込む光。木の影によってさらに魅力的に見えた。


一際明るい場所がある。そこには大樹があった。それは御神木の様な、圧倒される様な。


ウツキは引き寄せられるかの様に、その木に近づいて行く。まるでそれが自然の摂理の様に。足が無意識に動き、ウツキと大樹を近づけていく。



手を伸ばし、指で触れ



□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇


「やぁ、少年。歓迎するよ、ツクモウツキ君。」


そこには、黒い髪を靡かせ、吸い込まれる様な漆黒の瞳でこちらを見つめる12歳ほどの身長の少女がいた。


周りは森の中とは打って変わって、建物の一室のような場所になっている。机を挟んで、その少女は微笑みかけている。


背筋が凍る様な悪寒。見た目とは裏腹に、達観している様な態度。黒髪、黒い目。噂に聞く、嫌悪感の対象。なによりも


「なんで…俺の名前を、知ってるんだよ。」


「君のことはよく知っている、ツクモウツキ。僕の名前は…君とこの世界の尺度に合わせれば、セレーネ・クロノス。そう名乗っておくよ。」


くどい言い回し。何もかも見透かす様な態度。とても


「気味が悪い…そんな顔をしているね。ただ僕は君の役に立ちたいだけなのに。」


何処までが本心なのだかわからない。この世界の事もわからない。するべき事もわからない。こんな時に問題が増えてしまった。


「…道を与えようじゃないか。目標があった方が君も少し楽になるんじゃないかい?僕は、不本意ではあるが太陽の民。放置しておけば、世界を滅ぼすかもしれない。僕を殺してくれないかい?君の手で。」


理解できない。何故あったばかりの少女に、殺してくれと頼まれなくてはいけないのか。不本意とは何故なのか。世界を滅ぼすのは何故なのか。ウツキには何も理解できない。


「道は与えた。進むかどうかは君次第だよ。」


「…君は」


「セレーネ」


呼び名を訂正される。何故こだわるのか。


「…セレーネは俺をどうしたいんだ。」


セレーネは驚いたような表情を見せる。ここにきて初めて、どんな感情なのかがわかる仕草を見た。


「僕は君の事が好きだ。これは恋愛感情としてなのか、興味を引くという意味なのかは、僕自身もわからない。だから、僕を頼って欲しい。」


わからない。何故セレーネがウツキのことが好きなのか。真剣な眼差しでこちらを見つめる彼女。太陽の民とやらだからといって、彼女の気持ちを蔑ろにしたくはない。しかし、恋愛経験もなければ、良いところも無いウツキにはどうすれば良いのかわからなかった。


「何かに困った時、どうしようもなくなった時に手を差し伸べてあげられる。それが僕さ。さて、君はもう行かなくてはならないんじゃないかい?」


「…ルナティアが待ってるかもしれない。」


「モテる男の子は、大変だね」


セレーネが指を弾くと、視界が歪み始めた。



気づくと、大樹の前に立っていた。


「なんだったんだ…今のは?」



□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇


急いで作業していたところへと戻る。


「あ、ウツキ殿!何処に行っていたんですか?」


「いや、ちょっと散歩してて」


ルナティアは少し怒っているようで、頬を膨らませている。先ほどのことをルナティアに話せば、単身で乗り込んでいくだろう。それだけは避けたい。


「はい、水を弾く素材の布です。屋敷にあった分、全て持ってきました。」


人の胴体ほどある、巻かれた布を渡されるが、勿論のことウツキには重すぎて持てない。


引きこもりのウツキには屋根に登ることすらできないので、ルナティアに骨組みの上から布を被せてもらう。


「よい、しょっ!!!」


ルナティアが被せた布をロープで縛り、二重になったドアの枠に固定すれば


「『ゲル』の完成だーー!!!」


『ゲル』、遊牧民が移動しながら生活をしていたため、持ち運びやすく作られた物。慣れている人なら1時間もかからずに設置ができるらしい。


といっても、持ち運ぶ予定はないので目地材でガチガチに固定したため、強度はあるはずだ。


歴史の授業で聞いた知識が、ウツキにしては珍しく利用できた瞬間であった。

はい。短いです。

現在投稿日の0:48分。やばい!

イベントとか、諸々ありましてね…

しかし、駆け出しなので、ここで定期投稿を止めることはできないのです…

質と量を両立できるようにならなきゃ…

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