3章 11話:あらかた
桃髪の少女が耳と尻尾を揺らしながら、こちらへ走ってくる。
「ウツキさん、キョウカちゃんっ!無事ですか⁈」
ぐったりしているキョウカの方を見る。キョウカもこちらを見ている。
「…無事?」
「SAN値以外は。てか、それを言うならウツキの方だろ…?」
オウミョウが目の前まで歩いてくる。床にへたるウツキの目線に合わせ、しゃがみ込む。
ウツキは目を逸らした。
「何故地面にへばりついて…?」
「あ、足の感覚がなくて…」
紅潮するウツキを見て、キョウカが軽く蹴りを入れる。
転がったウツキを抱え上げる。
「きょ、キョウカちゃん⁈そのベッタリ付いた血は?あとなんで蹴ったの?」
「血はウツキの。なんか知らんけど、胴がぱっかんちょしても生きてて、それをくっ付けつつ、抱えて走ってこの有様ってワケ。…蹴ったのはコイツが悪い」
「わざとじゃねぇよ!」
目をギュッと閉じながら抗議する。
キョウカが歩き始め、力の入らない足がぶらぶらと揺れる。夜目の効かない人間には、強い月明かりの当たらない目の前が見えない。夜風が吹き抜けた。
「うわっ、腹が寒ぃ!」
潰すように腹がちぎれたので、柔らかい服は形を保っていた。しかし、今頃限界を迎えたようで、とんでもないファッションになっている。
「このジャージ、多分この世界じゃ一点ものなのに。…腹出しジャージとか、もう着れねえ」
「じゃーじ…ですか。まったく同じものは無いですが、見た目と動きやすさ重視だけなら仕立てられますよ。それとも心機一転、服も変えちゃいます?」
服の変えとして、仕立てる事を提案される。
「いや…でも文無しですし…。実際、俺が働いた金じゃないし。」
「…? この村の危機を救ってくれたお礼ですよ!メイドさん2人でも苦戦した方達を宥めたんでしょう?私やキョウカちゃんが助っ人に入ってたとしても、勝てた確証なんてありませんし。」
いつか恩返し出来るように、今貰えるものは貰っておく主義だ。申し訳なさが無いわけではないが、ここは素直に甘えておこう。
「ありがとうございます!では、お言葉に甘えさせていただいても…?」
オウミョウは笑顔で頷き返してくれた。
安堵と同時に、先程の質問が頭をよぎる。『ほとんど同じ見た目か、新しい服か』。
ここから気持ちを切り替えリスタート。心も身だしなみも新しくするか。確かに、冒険者っぽく装ってみたり、騎士みたくきっちりしてみたりしても良いかもしれない。
しかし、ここはあえての王道、ジャージにするか。動きやすさはピカイチ。温暖化の進んでいないこの世界では、保温性こそ最強。暑ければ脱げば良いだけ!
…どちらも捨てがたい。
「…新しい服もいいですけど、ジャージがいいです。このジャージに布を継ぎ足すだけでいいので、お願いします。」
「わかりました!えっと…寝るしにろ、お直しにしろ、お洋服を一旦脱がなきゃですよね。私の服でもい…」
「絶対駄目」
キョウカがスパッと言い切る。ウツキも断るつもりではあったが、そんなにはっきりと断られると傷つく。
と、いうかそもそも、女の子に抱えられる———密着しているというのはいかがなものか。
「きょ、キョウカさん…?そろそろ歩けると思います…。下ろしていただいて大丈夫ですので…」
キョウカはゆっくりと、ウツキの足を地面に下ろす。
ウツキは足に力を入れようとした。一瞬視界がぼやけ、聴覚が鈍り、足に力が入らなくなる。その場で膝から崩れ、地面に手を付く。心音が激しくなり、重力が倍になったように地面引かれる。
「大丈夫じゃないじゃん⁈」
「穴があったら入りたい…」
見栄を張ったわけではないが、自分の体すら見計らえない自分が情けない。
「大丈夫です…!本当にマジではい。あとちょっと、ちょ〜とだけ待ってくださいね?あ〜…」
目眩が治るまで地面にうずくまる。目がぼ〜っとして、頭も重くなる。
しかし、だんだん頭の重さは無くなっていく。ゆっくりと立ち上がる。
「完全復活です!立ちくらみがよくあるんですよね〜…。いつもの事なので、お構いなく!」
「ちゃんと寝てトマト食べてくださいね?」
「…肝に銘じます…。」
おはこんばんちゃ、みちをです。
突然の補足タイム!
ウツキ君は「腹出しジャージ」と言っていますが、別に直でジャージを着る人種じゃ無いです。中のシャツもろともぶった斬られただけです。
なんでそんな事補足するかというと、ジャージを直で着る人が居たからです。
ちなみに、みちをは中にTシャツとか着る人です。
学生時代に一回、シャツだけ忘れた事ありますけど。あれ、露出狂っぽく感じてソワソワしました。もうしたくない。長距離走だからジャージ脱げって言われた時は死んだと思いました。
以上、補足&唐突な自語り(←クソ陰キャ)でした。




