3章 10話:ぴんちなさんち
暗く、見えなかった影の輪郭。月明かりで色付いていく。
「ルナティアッ!!!」
腹が千切れそう———千切れたかもしれない。しかし、アドレナリンが出ているのだろう。相応の痛みは感じない。
勢いが余り、キョウカの腕から転がり落ちる。そのまま、感覚があまり無い膝で立とうとするが、自立出来ない。
ルナティアの目の前には、勢いのある蹴りが迫っていた。
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最後を予感し、思うのは長年連れ添った同僚—友達———姉妹の事であった。
私は先に逝くかもしれない。でも、いつまでも待っている。お姉様が幸せになって、伴侶を見つけて、孫に囲まれ、天寿を全うするまで。
「ルナティアッ!!!」
鼓膜がビリビリと震える。今までの考えを吹き飛ばしてしまうような声。喉を潰してまで叫ぶような。
目の前で足の甲が静止する。風圧、そして反射的にその場にへたり込んだ。
「な…んで……?」
目の前から少女は消えていた。
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目の前には、白銀の髪をもつ子供。瞳は深い蒼。
「やっと…見つけた。」
その子の後ろに、そっくりな子供がもう1人。髪を伸ばした目の前の子とは対照的に、肩ほどで短く切っている。
「はな…急にどうし…た…」
ウツキの顔を見て、2人が固まる。
「「と…とーさまっ!!!」」
「…は?」
白銀の子供2人は、転がり落ちているウツキに抱きつく。白い服を物ともせず、地面に転がり、ウツキを抱きしめる。
「ぱぱ上、ぱぱ上っ!探したんやで!」
「とっちゃまの…ぬくもりてぃ…!」
「とーさま、なのか、ゲホッ…ぱぱ上なのか、とっちゃまなのか……統一ッ、しろ、よ…てゆうか、……
俺は、お前らの父親じゃねぇ!!!」
渾身のツッコミで命を削る。先の叫びで喉が御釈迦だと言うのに、今の発言でむせこむ。喉から込み上げる嗚咽感。咳で口を覆った手には、赤黒い血がベッタリと付いていた。
「とーさまッ…!死なないでッ!」
腹、喉が温かくなる。髪の長い子供の触れている肩も、手の平からじんわりと熱が伝わる。
次第に体が軽くなっていく。中学時代からの肩こりも、腰痛も。
「…?
急に体が軽く…」
「はなとワイは、ぱぱ上の為に頑張って治癒魔法覚えた。」
それらしい魔法を、この世界で初めて見たような気がする。現代科学や、医療では説明できない現状、力。
「あっ、インパクトで全部持ってかれてたけどキョウカは⁈」
血塗れで木にもたれるキョウカが視界に映る。
「やばい…。特に精神とSAN値ぴんち…
人間の胴くっ付けるのは、まぢで…」
「キョウカの姉御、ぱぱ上助けてくれたん…?」
「…?その『パパ上』ってのがウツキの事なら…」
子供2人は何かを話し合い、懐から袋を出す。キョウカに手渡された袋の中身は大金だった。
「いやいやいやいやっ!こんな金受け取れないよ⁉︎そもそも、この村は『困った時は助け合い』の精神だから!これぐらいするさ!」
『それでも』と詰め寄る2人に困惑するキョウカ。それを止めたのはソルティアだった。
「…なんのつもり?」
「あ〜…いや、ぱぱ上のご友人と知ってたならこんな事しなかったで?こっちにも事情があってな?」
「とっちゃま以外にその『事情』を話す義理はない。」
完全にソルティアは警戒している。よく見ればメイド2人の服は汚れや、ほつれなどが多く見られる。
「そいつらは、姉様を傷つけた。信用できないどころか、生かしてもおけない。例えどんなにそいつらが強くても、私の腑が煮え繰り返って収まらないわ。」
ソルティアは相当怒っている様だ。子供2人は、ウツキの袖をギュッと握る。
「…ソ、ソルティア。コイツらが何したかも知らないし、分かったような口聞けないのも自覚してる。
してる…けど、コイツらは子供だろ…?子供なんて、何度も間違えて成長するものだし…」
「お前もガキだろうが。このごくt…」
「お姉様っ…」
ソルティアの後ろからルナティアが抱きつく。しかし、疲労からか膝から崩れ落ちる。ソルティアもしゃがみ、目線を合わせる。
「お姉様は、子供にも優しくて…どんなに自分が損しようと、陰ながらに助けようとしていたのを…私は知ってます…。そんなお姉様に甘えてしまうようで心苦しいですが、許してあげてくれませんか?」
眉に寄っていた皺が緩んでいく。小さくため息を吐き、向き直る。
「姉様に近づかないで。近付かないなら、私からは何もしない。する必要も無い。」
それだけを言い残し、ルナティアの腕を引く。自分にルナティアの体重をもたれさせ、よろけながらも鍛冶屋の方へ歩いて行った。
その場に残されたウツキ達は、オウミョウを待つことにした。
「お前達は何者なんだ?」
子供達の方を見る。2人は顔を見合わせ、少し表情を歪ませた。
「ワイはうの。こっちがはな。とある理由で、俗に言う『日の民』ってやつになったんや。」
「でもとっちゃまに会えたから無問題。日の民をする理由も無い。暴れないし、殺さない。」
誰を傷つけるでも無いのなら、好きにすれば良い。
そう考えたウツキは、特にこれ以上追求はしなかった。
ルナティアは内心顔真っ赤なんだろうなと、考えながら書いてました。みちをです。
ヤバいことに気づきました。
3章の枠なのに2章30話ってなんですか⁈
現在2026/1/19はタイトルが2章になってます。意味わからん。
修正しときます。てか、誰か指摘してよ⁉︎
…指摘する読者がいないのか。




