2章29話:止めたら
白銀の髪を伸ばした子供———ハナと呼ばれていた者が拳を振るう。すかさずルナティアも拳を繰り出そうとするが、腕を掴まれそうになり引っ込める。
白銀の髪を肩のあたりで切った子供———ウノと呼ばれていた者が足を回す。反撃をしようとすれば、反応が遅れ多大な怪我を負うだろう。武術を中心にはしていないルナティアはいなし、避ける事しかできない。
どちらも共通して防戦一方である。
受ける、いなすのにも少しずつ疲労が蓄積される。攻撃を受けたところは赤くなり、息は荒く、爪や靴の先の当たった箇所は切れる。
「うの、なかなか倒れない。」
「しぶとい奴らやな。」
その声のトーンからは、本気で相手をされていない事、息が上がっていない事が伺える。打開策も無いまま、ただその場を耐え凌ぎ、誰かが来るのを願い続けながら朽ちるのを待つしかできないのだろうか。
1つ。また1つと青たんが増える。骨が軋み、心も折れ始める。しかし気を抜けばまともに喰らってしまう。少しずつ、1発1発が重く、致命傷になりかねない。
「一発喰らってくれればいいだけ。」
「上手く一発で沈めたるで、避けんなや。」
疲労が限界に近い。反応が鈍る。
「コレで終わり。」
蹴りが飛んでくる。
ルナティアは、死を悟った。このままでは顔に傷がつくどころでは無い。首もろとも折れ、死ぬのだ。
「お姉様だけでも、逃がせればよかったのに。あの時、無理にでも宿で待っててもらえば…」
そうならば、時間稼ぎぐらいは出来ただろうか。お姉様の事だから、様子を見にきてしまうだろうか。危機的状況により、引き延ばされた思考。しかしそれは、特に打開策を見出すことはできなかった。
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轟音が鳴り響く。
地が揺れ、寝ていた鳥たちが一斉に飛び立つ。
キャンサーは『逃げたりすれば殺される』と言った。
そんな野蛮な集団が来ていたならば。
宿で寝ているであろうメイド2人が危ない。
「行か…なきゃ…、少しでも…足止めを…。」
痛い。とても、言い表せない程に。それでもあの2人が、少しでもウツキに優しくしてくれた女の子が。
「痛い思い…しないように…。少しでも…」
「ウツキ…生きてるん、だよな…?」
胴から下の感覚が全くない。感覚どころか何も無い。ただ痛みだけが残る。
「まだ、動ける…からッ」
腕の力で、音のした方へ這いずる。
足音が聞こえる。キョウカの足音。
傷口に、何かされている気がする。特別痛い訳では無いが、痛みがないわけでも無い。
「う”ぐッ……ガァッ…」
熱を失っていくような感覚が少しマシになった。
「動かないで。」
体を意図的に密着させられる。腕が肩まで回る。
キョウカに抱えられた。
「なるべくアタシの方に体重かけて。何も考えずに」
少し抵抗感があったが、そんな思考を痛みが塗り替えていく。言われるがまま、体を預ける。
キョウカは少し駆け足で、走りはせずに音の方向へと向かう。少しだけ揺れる視界の中、自分の足が見えた。胴の先があるらしい。先程キョウカは千切れた先をなんとか付けようとしていたようだ。既に軽くくっついている。しかし、まだ感覚が無い。
音の主の輪郭が、ぼんやりと露わになる。激しく動く4つの影。
1つの影が、もう1つの影に攻撃を仕掛けた。その時、月明かりに照らされ、影の正体が緑髪の侍女である事に気づいた。
おはこんばんちゃ〜みちをです。
新年あけましておめでとうございます!
今年一発目です。
え、一週間遅れてるって?
…もう一本小説の構想練ってるから許してヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3




